BOYS AGE presents カセットテープを聴け! 第10回:ブルーズ・ブラザーズ『ザ・ブルーズ・ブラザーズ(OST)』

日本より海外の方が遥かに知名度があるのもあって完全に気持ちが腐り始めている気鋭の音楽家ボーイズ・エイジが、カセット・リリースされた作品のみを選び、プロの音楽評論家にレヴューで対決を挑むトンデモ企画!

『ザ・ブルーズ・ブラザーズ(OST)』(購入@中目黒 waltz


今回のレビュー対象作品は、もはやこの連載の定番となったサントラ! 数々のパロディーやオマージュも誕生している名作『ザ・ブルーズ・ブラザーズ』です。


そしてボーイズ・エイジ Kazと対決する、サインマグが擁する音楽評論家は、意外にも初登場の青山晃大!


さて、Kaz得意のサントラ勝負は果たして!?

>>>先攻

レヴュー①:音楽評論家 青山晃大の場合


スーツにハット、サングラス、ネクタイまで、全身真っ黒な服装に身を包んだ凸凹アウトロー集団が、オンボロ車に乗り込んでドンチャン騒ぎのパーティ巡業。このブルーズ・ブラザーズ的なスタイルに筆者が初めて触れたのは、まだレコードもCDもろくに聴いたことがなかった小学生の時だった。当時3歳上の兄と遊んでいたスーパーファミコンのRPG『MOTHER2 ギーグの逆襲』に、ブルーズ・ブラザーズを元ネタにしたトンズラブラザースというキャラクターがいたのだ。物語の要所でふらりと登場し、陽気なギャグと音楽を振りまきながら主人公のパーティを助けてくれる彼らの存在は、今にして思えば、後年自分がアメリカのポップ・カルチャーやロックに惹かれることになる原体験の1つだった。そんな個人的な記憶とも相まって、ブルーズ・ブラザーズの佇まいと音楽は、今でも僕に「古き良きアメリカ」への漠然とした憧れを喚起させる。


ブルーズ・ブラザーズというキャラクターは、75年の放映開始から今なお続くアメリカの老舗コメディ番組、『サタデー・ナイト・ライヴ』において、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドという2人のコメディアンによって創出された。本作は、その人気スケッチの映画化作品のサウンドトラックである。この映画とサウンドトラックがリリースされた1980年、時はディスコ全盛。本作に収められている泥臭さ全開のブルーズやソウルは、ポップ・ミュージックとしては少々時代遅れな代物になっていた。映画にも登場し、このサントラにも曲が収められているレイ・チャールズ、ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリンといったソウル・レジェンドたちは、70年代後半には軒並み落ち目。バンドの屋台骨となったブッカー・T&ザ・MG’sのスティーヴ・クロッパーとドナルド・ダック・ダンも、〈スタックス・レコード〉との決別、バンドの分裂を経て、不遇の時代を送っていた。


映画『ブルーズ・ブラザーズ』は、刑期を終えて出所してきたジェイク(ジョン・ベルーシ)が弟のエルウッド(ダン・エイクロイド)と共に、生まれ育った孤児院の金銭的危機を救うために昔の仲間を誘い出しバンドで一攫千金を狙うという物語だが、それはブルーズやソウルが落ち目だった現実世界とも絶妙にリンクしている。あの頃の輝きをもう一度、というわけだ。とは言え、それを主導したのが回顧的なノスタルジーに駆られた老いぼれたちではなく、若き情熱と野心に満ちた当時20代のジョン・ベルーシとダン・エイクロイドだった点にこそ大きな意味があると思う。ブルーズ・ブラザーズの人気上昇と時を同じくして、英米のロック・シーンではパンクという新しいムーヴメントが大きな波紋を広げていくことになる。パンクが肥大化したロックに対する反動としての50~60年代ロックンロール回帰という側面も持ち合わせていたことを思えば、ブルーズ・ブラザーズだってTVや映画のフィールドも股にかけたパンク的な存在だったと言っていいだろう。


【サイン・マガジンのクリエイティヴ・ディレクター、田中宗一郎の通信簿】

★★★★

とてもよく出来ました。この世紀の名盤について書きたいことは本当に一杯あっただろうに、それをよくここまでコンパクトに収めましたね。


このサウンドトラックには、リズム&ブルーズのレジェンドたちの録音だけでなく、この作品リリースの後、ガレージ・クラッシックになり、ゼロ年代の2メニーDJsのDJセットの目玉のひとつにもなったヘンリー・マンシーニの“ピーター・ガンのテーマ”など、思わず知識をひけらかしてしまいたくなるポイントが山積みです。サントラ収録曲すべてが歴史的な大名曲だし、サントラには収録されていないものの、ブルーズ・ブラザーズ二人によるオーティス・レディングの“キャント・ターン・ユー・ルース”のカヴァーだって、死ぬほど最高ですからね。そこをよく堪えて、論旨の幹をよくぞ整理しました。


でも、自分自身と作品の出会いから始めて、次第に俯瞰的な視点からこの作品の歴史的位置付けをしていく、という流れはあまり効果的ではなかったかな。晃大くんの作文の冷静さは俯瞰的な視点から何かを書くには適しています。ただ主観を利用する時には、書き手の何かしらの感情的な動きを効果的に配置するという手法が有効です。感情に流されるままではなく、それを極めて冷静な知的な作業として利用する。もう少しその勇気とテクニックがあってもいいかもしれません。でも、よく頑張ったね!

>>>後攻

レヴュー②: Boys AgeのKazの場合

(今日のは大量に人名が出てくるので辞書サイト必須)。ブルーズ・ブラザーズ。懐かしいなあ。例えば、ウィル・スミスと宇宙人ジョーンズが主演した『MIB(メン・イン・ブラック)』。アマチュアのコスプレ集団が日本でも活躍した『マトリックス』のエージェント。ヴィデオ・ゲームでは、糸井重里氏の『MOTHER』に出てくるトンズラブラザーズ、『ルパン三世 アルカトラズコネクション』に出てきたCIAだかFBIのコンビとか、この映画の主人公らの出で立ちから影響された後続は計り知れないな。サントラのレヴュー? ないよ。ブルーズに傾倒してる人間が読者の何パーセントだ? だいたいタイトルでオチてるよ。THE BLUES BROTHERSなんだからブルーズに決まってる。金管楽器、オルガン、ギター、ベース、ハーモニカ、ダンス、ミュージカル映画のサントラらしい楽しい作りだよ。ブルーズが何かってのはググれば出てくるよ。古ぼけながらも偉大な黒人音楽の魂だ。


さて、覚えてるよ、この映画の2作目を初めて見た日の翌日だかにジェームス・ブラウンが死んでなあ(彼はこの作品の1、2ともに出演していた)。西田敏行が出演してた『ゲロッパ!』だっけ? あれ見たことないんだけどJBのコスプレの話なのかな? まあいいや。この映画のおかげでいくらかBLUESについて詳しくなったな。出演してた名だたるミュージシャンたちも結構逝ったな。BBキングだとかクラプトンだとかアレサ・フランクリンだとか、どうやって映画に呼んだんだよコイツラっていうのは多かったけど、ジュニア・ウェルズだとかジョン・リー・フッカーだとかタジ・マハールだとか、なぜ呼んだしっていうミュージシャンもいて面白い。エディ・フロイドとウィルソン・ピケットだったかな、2作目のラブコール・センターでのミュージカル・シーンで彼らと一緒にやってたジョニー・ラングはこの前どこかで名前見た気がする。雑誌の『Player』だったか。日本じゃ『ターミネーター2』のスカイネットの開発者ダイソン役が一番有名かな、ジョー・モートンも2作目に出てて、いい声なんだ。


ブルーズ・ブラザーズ・バンドの面々の中じゃマット・“GUITAR”・マーフィーが一番好きかな。彼のアルバムを持ってるんだけど、映画内では目立たないけど繊細なプレイでね。ベーシストのドナルド・ダック・ダンの音もいいな。キーボードのマーフが映画『コマンドー』のサリーに見えるんだけど、別人だよね? 『コマンドー』の30周年記念の吹替版ブルーレイも前に買ったよ。単純に、古い方の吹替の方が好みだったし、歳をとりすぎてどうしても劣化しちゃった声優さんもいたけど、新録版も悪くなかった。やっぱり玄田さんのシュワちゃんが一番。コメディもアクションもシリアスもイケるシュワちゃんと、日本においては最高のフィックス(ハマリ役)だ。


シュワちゃんの映画で一番好きなのはトゥルー・ライズ(元はフランス映画のリメイクだったかな?)。ジェームズ・キャメロンが監督だっけ? この映画の敵役のアート・マリックさんが大好きだな。最高の演技、落ち武者みたいな髪型なのにカッコいい。ただある意味ダメだった。目が綺麗すぎて……「守りたい、この笑顔」を体現しちゃってるんだよ、テロリスト役なのに。こいついい奴だなって、思ってしまう。そうじて日本のカッ飛んだ吹替のせいで元の映画とは違ったベクトルに向かってる気もするが、だからこそ日本的な楽しみがあるね。『ビーストウォーズ』とかテレ東版『タートルズ』とか、なんであんなにキレッキレだったんだろう。原作のディティールをある意味超えていったね。明後日の方向に。これらの明日がどっちだったかは、知らんが。明日に向かって撃ってなかったのは確かだな。いや、オモチャ会社の明日は切り開いたけど。米国の輸入物からフロンティア・スピリットは受け継いだのか。


はてさて、小難しい映画も嫌いじゃないんだけど、映画に関しては、ストーリーなんか二の次ぐらいでノリで楽しめる娯楽作が好きだな。ホラーとかそうだよね。強く当たって後は流れで、ていう。難しいのは自分のペースでじっくり読める小説や漫画、ヴィデオ・ゲームがいい。音楽や映画はあくまで自動進行だから、自分には、考え事という点で向かない。ブルーズ・ブラザーズも、キャストの会話も関係性もそんなに気にしなくて大丈夫だよ。一切理解できなくても大丈夫。作中でシリアスな葛藤もないからね。初代の『スーパーマリオブラザーズ』をプレイするのに、登場人物の背景を知らないでいいのと同じ。知ればより楽しめるし、知らなくても楽しい。『ブルーズ・ブラザーズ』もあらすじ知ってればそれでオッケーだよ。クズっぽいことをしつつ演奏して金を稼いで道中であった人に追い回されて、逮捕されて監獄ロックで締め。愉快痛快さね。ん、ブラザーズつながりが発生してるな。ルックスも似てるな、兄の方がチビで太り気味で弟はのっぽで細身で、帽子にお揃いの服……あんがい影響受けてるのかね。BBは80年、マリオは85年作だから。


そういや、ディアハンターの元ギタリストが始めたOnimっていうポストパンク・バンド、アメリカの友人が教えてくれたんだけど中々良いね。最近聴いたのだと、他には女性デュオのタセオマンシーもよかったな。そういえば、サマー・ツインズ、私の“Tipsy Dance”という曲に参加してくれた女の子の片割れ、ジャスティンがソロでも始めたらしい。ロサンゼルスの〈ロリポップ・レコーズ〉から出るのかな。Boys Ageは既に以前リリースしてるんだけど、また出したいよ。


参加といえば、以前やはりうちの曲に参加してくれたサンフランシスコのミュージシャン、ソニー・スミスのバンド、ソニー&ザ・サンセッツの新譜が〈ポリヴァイナル〉ってレーベルから出るんだけど、それに2曲参加しました。“デス・クリーム”と“モダン・エイジ”ってヤツ。一曲はギターだけ、もう一曲はギターとラップまで披露してます。ハハッワロス。ギター・フレーズはいくつかカットされてたのにラップはボツじゃなかったのが、なんというか……あれ大丈夫だったのか……? フルシチョフ、あいや、フル試聴できるので聴いてね。あれ、大丈夫だったのか……。

【サイン・マガジンのクリエイティヴ・ディレクター、田中宗一郎の通信簿】

★★★★

とてもよく出来ました。サントラ自体からいきなり始めるのではなく、映画自体のアウトラインを引いて、文化的な位置付けから始め、読み手に文脈を引いた後に、次第に音楽を語ることに歩を進めていく。その流れももはやカズくんの中ではお得意の手法になりましたね。話が脱線していくかに見えて、いくつもの記号を積み重ねていくことで、むしろ対象を立体的に見せていくという手法にも磨きがかかってきました。


そして、改めて再認識。やっぱりカズくんは音楽も大好きだけど、映画も小説もゲームも大好きなんだね。そこも先生、やっぱり嬉しかった。


ただ、『ブルーズ・ブラザーズ』という映画をノリで楽しめる娯楽作と位置付けるのはいかがなものか。この映画には、ネオナチや白人至上主義に駆られたカントリー&ウェスタン・バンドが登場するなど、レイシズムに対する皮肉がこっそり忍ばせてもあります。そうしたテーマがアフロ・アメリカンたちが生み出したリズム&ブルーズに対する偏見としっかり結びついてもいるわけです。まあ、それと気付かせないエンターテイメント・コメディに仕上がっていること自体がこの映画の素晴らしいところなので、先生が言ってることは野暮かもしれません。


にしても、今回は宣伝が多めでしたね。でも、世界中でカズくんが活躍してることをクラスのみんなにも知ってもらうことは大事だからね。次もたくさん宣伝して下さい。頑張ってね!


勝敗:引き分け


両者4つ星の健闘にて引き分け! 前回はともかく、平均して高評価のレビューが増えてきた印象です。このまま行くと、今後はさらなるハイレベルな勝負が続きそう。


次回もみんなで読んでね!

〈バーガー・レコーズ〉はじめ、世界中のレーベルから年間に何枚もアルバムをリリースしてしまう多作な作家。この連載のトップ画像もKAZが手掛けている。ボーイズ・エイジの最新作『The Red』はLAのレーベル〈デンジャー・コレクティヴ〉から。詳しいディスコグラフィは上記のサイトをチェック。

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