「ELIMINATOR」で開催中のカセットテープ展示に行ってきた

定時後、後輩から連絡があった。

ELIMINATOR(エリミネイター)でカセットのジャケ買い展示やってるんで行きません?」



ジャケ買い……。響きが懐かしい。


初めてCD のジャケ買いをしたのは、2002年の中学3年。当時は流行りの邦楽よりも、洋楽に夢中だった。聴いてる音楽はファッションの一部みたいな感覚で、周りとかぶりたくなかったから。洋楽の情報源がMTV しかないのも良かった。そうそう。記念すべき初ジャケ買いはBEASTIE BOYS の「Hello Nasty」。98年に発売だったから、輸入盤が安くなってたって理由で(笑)。洋楽のCDが部屋に並ぶだけで幸せだったから、中身の音楽が失敗しても気にしなかった。けど、そのジャケ買いをキッカケに、BEASTIE BOYS が好きになって、中古の「Sabotage」 のビデオを買って。MV もカッコ良くて、撮ってる人はスパイク・ジョーンズ。聴いたことあるなって思ったら、MTV で見てた『JACKASS』の総監督だった。それを知ったとき、ひとりでテンション上がったのを覚えてる。少ない情報源だから、ディグらないと分からないことだらけで。自分にとって、すごい楽しかった時代。


“ジャケ買い”っていう一言で、エモい記憶がフラッシュバックしてしまった(笑)。 ELIMINATOR でのジャケ買い展示は、SILLYでも取材した中目黒のカセットテープ屋「waltz」で扱っているカセットテープから、数多くのアーティスト写真を手掛ける写真家の太田好治(おおたよしはる)が20タイトルを厳選して、それを展示&販売してるらしい。“ジャケ買い展示”なんて聞いたことないし、面白そうだから行くことにした。


お店に着いてから、ショップマネージャーの原田りえ子さんを紹介してもらった。なんで、waltz とカセットテープのジャケ買い展示を始めようと思ったんだろう。


「ELIMINATOR は服を通して、メッセージを残していきたいと思ってるんですよ。いまはシーズンが終わって、次のシーズンを待ってるタイミング。このタイミングで、服じゃない角度からメッセージを残したいって考えました。そう考えたときに、スタッフから『waltz とカセットやりたい』って案が出てきたんですよ。いま、カセットはリバイバルで注目されていて、すごく良いなって思いました。私にとっては懐かしいもの、若い子たちにとっては新しいもの。私がリアルを知ってる分、伝えられることもあるのかなって」


原田さんが懐かしいと感じるのは、どんな時代だったのか。


「カセットが文化になってました。80年代が良かった時代なんじゃないかな。ウォークマンが出てきて、音楽をモバイルできるようになった時代。いろんなレコードを買って、ミックスして。自分のフェイバリットをコーディネートして、キュレーションするみたいな感じですよね。シチュエーションに合わせて、カセットを持ち運んでました。ミックスしたカセットを交換、ダビング、自慢しあったりしましたね。自分で録音するから、雑音が入ったりもして(笑)。便利じゃない分、いろんなものを駆使して、クリエイティブだった。カセットが名刺代わりになってました。情報がないから、追い求めないと、なにも得られなかったです。個性がすごい出てたし、それに慣れてた時代ですよね」

“追い求めないと、なにも得られない”って部分に共感した。それは、情報が少なければ少ないほど、より感じるんだろうな。自分はMDだったけど、どんな曲を持ち運ぶのか、どんなポータブルプレーヤーを使うのか、も重要だったな。 


「私はソニーのカセットウォークマンを使ってました。ウォークマンが出たことで、カセット文化が急速に発展しましたね。ソニーっていうブランドも、ものすごく良かった時代。世界に日本の技術が広がっていく感じが、すごいしたんです。良き日本を感じられる名機。ベルトにさせるようになってたりして、音楽が常に生活と密着してました。いま、ほとんどの人はiPhoneで音楽をモバイルしていますが、ウォークマンはそれの先駆けですよね」  

話を聞いて、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』で、主人公のマーティが「ドク、日本の製品は最高だ」って話すシーンを思い出した。このジャケ買い展示には、カスタムされたウォークマンも飾られている。 


 「このウォークマンは、グラフィックデザイナーの守矢努さん(※編註:日本を代表するステンシルアート達人)にカスタムしてもらったんですよ。この展示は、ひとつのカルチャー、レガシーとしてのご紹介。ジャケ買いというか、フォト買いですよね。太田さんはフォトグラファーだから。この写真のバックグラウンド。例えば、どのフォトグラファーか? どういったシチュエーションでの写真なのか? どんなメッセージがある写真なのか? そういう彼の知識で写真を選んで頂きました。レコメンド理由も全部出してもらって。このカセットの写真に共感するところから入ってもらって、フォトグラファーやその時の社会情勢とかカルチャーなどに興味が沸いて、そこから広げていってもらえればうれしいですよね」

なるほど。ジャケ買いではなく、フォト買いか(笑)。このカセットテープの展示は、写真1枚に、たくさんのメッセージが詰まってる。原田さんなら、どのカセットテープを選ぶか聞いてみた。 


「私は、Rage Against The Machineを選びますね。これは、仏教徒弾圧に反対するため焼身自殺した僧侶の写真をジャケットにしてるんです。写真って二通りあって、グラフィックデザインが融合してひとつのアート作品として成立している場合と、レイジの写真のように、報道、つまりリアルを映し出している場合。衝撃的ですよね。写真ってすごいエネルギーが詰まっているんですよ。このエキシビションを通して、何かピンとくる写真と出会い、何かの発見のきっかけになれたらうれしいですね」 


展示されているカセットテープのなかに、もし知っている音楽があれば、それに対する理解が深まって、今後の聴き方が変わってくると思う。音楽は知らないけど、写真で印象に残ったものがあったら聴いてみるのがいい。一生の音楽になるかもしれないから。  



Learn from the past @ ELIMINATOR

住所:東京都渋谷区猿楽町26-13グレイス代官山 1F

Tel:03-3464-8144

期間 : 開催中〜2016年12月25日(日)(全日 12:00〜20:00)


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