来日間近! マスターズ・アット・ワークを90年代生まれが語る

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編集者。雑誌屋。SILLYコントリビューティング・エディター。

90年代ダンスミュージックの歴史を語るには欠かせないユニット、マスターズ・アット・ワーク(MAW)が、11月19日(土)新木場ageHaで来日公演をおこなう。

MAWは、ルイ・ヴェガとケニー・ドープというDJ/プロデューサー2名によるユニットで、ルイはラテンとハウスミュージックをルーツに持ち、グラミー賞を受賞した実績も。一方のケニーはヒップホップやレゲエがベースで、今もストリートから強い支持を受けている。異なるバックグラウンドを持つふたりの個性が合わさったことが最大の魅力だ。

彼らがプロデュースやリミックスを手がけたのは、マイケル・ジャクソン、マドンナ、ジャネット・ジャクソン……その名前を並べただけでも、MAWの大物ぶりが伝わってくる。

今回の来日公演は、深夜ではなく"デイタイムイベント"であり、日本の大物DJも多数出演。キッズエリアなども用意されるなど、まるでダンスミュージック版フェスのよう。世界的にもふたりがMAWとしてプレイする機会は少なく、"MAWの来日公演"に至っては10年ぶりとあって、90年代当時を知る"クラブを卒業した大人たち"も大喜びのようだ。

一方で、90年代ブームやハウスリバイバルが囁かれるタイミングということもあり、MAWがヒットを連発した時代を知らない20代の間でも、この来日が話題になっている。

SILLYでは、そんな90年代生まれである6人のDJ/クリエーターに、MAWの魅力について語ってもらった。


SEKITOVA DJ/プロデューサー

MAWの出会いは

ダンスミュージックの歴史の分岐点

「長いようで短い人生のなかで、その後の生き方を大きく変えられてしまうような分岐点はあんまり多くないって、よく聞きます。僕はあと何回そういう出来事に遭遇できるんでしょうか……。ルイ・ヴェガとケニー・ドープの出会いは、世界的なダンスミュージックの定義すら変えてしまった歴史の分岐点です。それぞれとしてもスーパースターのMAW、今となってはふたりがそろうのも珍しくなってるんですが、そんな彼らが満を持してageHaに登場! 彼らとageHa、彼らとあなたの出会いが今後大事な分岐点になりますように」

【Profile】
1995年生まれのDJ/Producer。生まれる前からテクノを胎教に育てられた、文字通りの第2世代。BIG BEACH FESTIVALやWIRED CLASHなどのビッグパーティーのメインステージにも出演。トラックメイクでも、2012年にリリースされた初アルバム「premature moon and the shooting star」が話題を呼んだ。SOUNDCLOUD



松原裕海 ライター 

彼らがいかなる遊び心を持って

音楽と向き合ってきたか

「僕が生まれた1994年は、おそらくMAWにとっては最初の最盛期、あるいはその前夜だったのだろうと思います。当時のNYのシーンを感じることのできるファーストアルバムも、いまだ語り継がれている名曲の数々も1993年のリリース。その多くが、音楽的なバックグラウンドが豊富なプロデューサーふたりの遊び心が発揮されたもの、という印象があります。今回の来日で思うのは、ハウスミュージックのある種の在り方を示した作品とその作者が、長い時を経てもなお存在しているのは尊いということ。彼らがいかなる遊び心を持って音楽と向き合ってきたかの形跡は、作品と、彼ら自身のパフォーマンスからしか聴くことができません。10年ぶりの来日、逃すわけにはいきません」

【Profile】
1994年生まれ。クラブミュージック情報サイト「HigherFrequency」の編集長兼ライターを務める。Licaxxxが主宰するカルチャーメディア「SIGNAFAT」を始め、他媒体でもアーティストのインタビュー記事などを執筆。

MASAYOSHI IIMORI(TREKKIE TRAX) DJ/トラックメーカー

シーンを創りあげたほどの重鎮が
どんなプレイを見せてくれるのか

「自分は96年生まれなので、クラシックがリリースされた当時や活動初期のことは知りません。ただ、クラブミュージックを掘る入り口がハードテクノやレイブだった僕にとって、オールドスクールの作品を調べるということが日常的になっていたので、MAWの名前は以前から知っていました。楽曲を意識しはじめたのは、ストリート出身のプロデューサーがサンプリングして多用していたため。"Vogue"というジャンルにとっての「The Ha Dance」のスネアは、ダブステップにおけるワブルベースなどと並ぶほどの重要性があると思います。シーンを創りあげてしまうほどの重鎮がどのようなプレイを見せてくれるのか楽しみです」

【Profile】
1996年生まれのトラックメイカー。トラップを中心としたトラックメイクで、日本の気鋭ネットレーベルTREKKIE TRAXより2015年にデビュー。Skrillexをはじめ、世界の著名プロデューサーからサポートを受けるほどの注目株。2015年にはデビュー1年目にしてULTRA JAPAN に出演し、TREKKIE TRAXプロデュースの全米ツアーにも参加。2016年にはNEST HQより「Masayoshi Iimori - WhirlWind」をリリース。

DJ YUTO DJ/ターンテーブリスト

ハウスというジャンル感じる壁を
ぶっ飛ばしてくれた

「もともとターンテーブリズムあがりの僕にとっては、ハウス自体がどこか壁を感じるジャンルだったんですが、それをぶっ飛ばしてくれたのがMAWでした(笑)。ケニー・ドープがしっかりとヒップホップのエレメントを見せてくれつつ、ルイ・ヴェガがキレイにハウスへと昇華してくれるこの組み合わせが、多分僕のような人間でも好きになってしまう理由だと思います。前回の来日は僕がまだ小学生の頃だったとのことで、驚きました(笑)。WEBでもあまり日本でのライヴ映像が見られないから、どんな感じになるのか楽しみです。僕らのような後追い世代と、リアルタイムで聴いていた世代が入り混じるのも楽しみですね」

【Profile】
1994年生まれのDJ/TURNTABLIST。実兄がターンテーブリストという環境で育ち、World Dj AcademyにてDJ KENTAROの指導を受ける。2016年、DMC JAPAN FINALを歴史上初の満点優勝で飾ると、勢いそのままにロンドンで開催されたDMC WORLD CHAMPIONSHIPSで初優勝。12月からはDMC WORLD CHAMPION TOURをスタート。EP “Coconuts”をリリースし、来春には初アルバムもリリース予定。

UMMMI. 映像作家/アーティスト

抱き合ったり歌ったりしながら

踊る人々が目に焼き付いている

「ひとりでNYに1ヶ月間滞在していたとき、絶対に会った方がいいと紹介してもらった数少ない知人がいた。ペインターであり、フランソワ・K(ニューヨークハウスを代表するDJ)の奥さんであるTomoko Kevorkianというチャーミングでカッコイイ女性。彼女との出会いによって、アタシは運良くいろんなNYアンダーグラウンドのクラブシーンを見せてもらうことになった。パーティーで流れるクラシックスを聴きながら、"ハウスのいいところは、言語が違っても人見知りでも、問題なんてまったくないところだな"と思い知る。そして何度か足を運ぶうちに、パーティーの終わりにNuyorican Soulの「Runaway」がよく流れることに気づく。この曲が流れ始めたときに少しだけ変わるグルーヴ、うれしそうに抱き合ったり歌ったりしながら永遠に踊り続ける人々の熱気が、いまでも目に焼き付いている」

【Profile】
アーティスト / 映像作家。愛、ジェンダー、個人史と社会を主なテーマに、フィクションとノンフィクションを混ぜて作品制作。2014年にはポンピドゥーセンター公式映像フェスティバルオールピスト東京入選、2016年には現代芸術振興財団CAF賞・美術手帖編集長 岩渕貞哉賞受賞。12月には、国内外の数十人が関わるネットワーク集団「Pink Queendom」として個展を開催。UMMMI.による映像作品も展開される。

unaginza 東京大学「KOMAMO」代表

基礎の基礎を教えてくれた

"Masters"まさに師匠です

「最後のCD世代である90年代生まれが、MAWに近づくルートはいろいろ。"グラミー賞を取ったから"と何となく親が買っていたJamiroquaiのアルバム、近所のディスコ通のおっさんが聴かせてくれたディスコの名盤、友達のおしゃれな兄貴が部屋で流していたMONDO GROSSOのアルバム……どこにでもMAWが潜んでいます。Houseを作る人はKenny Dopeみたいに屈強じゃないと寂しいし、Louie Vegaみたいな帽子をかぶっていないと何か物足りない。ラテン、ダンクラ、ジャズに学べ、そして最高のボーカルがそろってこそHouseなのだ、と基礎の基礎を教えてくれた"Masters"、まさに師匠です」

【Profile】
東京大学KOMAMO代表。KOMAMOは東大の有志の学生の手による無料野外フェス。2005年の初開催時から国内外で活躍する著名なアーティスト達によるパフォーマンスと、開放感溢れる会場の雰囲気が話題となり、東大の学園祭の名物のひとつになっている。春の五月祭(本郷キャンパス)、秋の駒場祭(駒場キャンパス)に合わせて開催を重ねている。

HOWAKOSPECTRA) DJ 

高校生の頃、レコ屋で試聴機の

針を落とした瞬間に武者震いした

「MAWの楽曲に最初に触れたのは「beautiful people」。高校生の頃、レコ屋で中古棚を漁っていて巡り逢いました。試聴機の針を落とした瞬間、ソウルフルな女性ヴォーカルに魅かれ、武者震いしたほど曲に引き込まれた。陽気でちょっとおっちょこちょいな女の子が、思いっきり大きな声で歌いながら、ストリートのなかを駆け抜けていくイメージ。実際にこの曲を、晴天の気持ちいいダンスフロアで、大声で歌いながら踊れたら、どれほど最高だろうか。MAWの楽曲たちには、自然とそんな情景が浮かぶほどの魅力があるのではないかと思う。私たちの世代は、初めて彼らの音を生で聴く貴重な機会。フロアで体感できるのが、心から待ち遠しい」

【Profile】
路上パフォーパンス出身の女性DJ。アナログレコードを駆使し、パワフルなプレイで人気を博す。2015年よりhiroyuki arakawa主宰のSPECTRAに所属。SPECTRAではパーティーオーガナイズにも携わり、主にWOMBにて開催を重ねている。初出演したDOMMUNEでレコードとデジタルのハイブリッドなプレイを披露、好評を博したのも記憶に新しい。MIXCLOUD


MASTERS AT WORK in JAPAN

 − It’s Alright, I Feel It! −

日時:2016.11.19(土)START 14:00/CLOSE 21:00

場所:新木場ageHa 

出演:MASTERS AT WORK(Louie Vega & Kenny Dope)、Lights by Ariel、DJ NORI、FORCE OF NATURE、HIROSHI WATANABE a.k.a KAITO、やけのはら、MONKEY TIMERS、Kaoru Inoue、高橋透、Dazzle Drums、DJ Yogurt、Inner Science、Midori Aoyama、青野賢一、LO:BLOC a.k.a DJ SODEYAMA、DJ KENSEI、沖野修也、YOSA、DJ SHIBATA、XTAL、DJ YOKU、橋本徹、peechboy、宇川直宏

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