2015年のDMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIPSのシングル部門では、2位を獲得したDJ YUTO。2016年の今年も東北予選を勝ち抜き、JAPAN FINALに登場。繊細なテクニックを披露し、見事に今年の日本チャンピオンの座を勝ち獲った。22歳という若さで、世界の舞台へと立ち向かう彼は、あのDJ KENTAROが主催しているスクール「World DJ Academy」の一期生だという。
まだ大学生の彼は、謙虚で寡黙なタイプ。DJ KENTAROの弟子に当たるということ以外は情報も少なく、少しミステリアスな存在でもあった。しかし、その芯の強い眼差しからは、地道にコツコツと努力してきたことがうかがえる。DMCへの挑戦から、わずか2年でチャンピオンの座に辿り着いたこれまでの経緯について話を聞いてみると、実は初めてターンテーブルを触ったのは、中学生の頃にさかのぼるという。
「中学2年生の頃に、兄貴にターンテーブルをもらいました。お正月に“お年玉”って言って。ターンテーブル2台とDJミキサー、さらにバトルブレイクスも付いた“バトルDJセット”みたいな感じで」
彼の8歳年上の兄は、DJ YUDAIという名前でバトルDJとして活動していたそうだ。10代の頃にTEEN'S DJ CHAMPIONSHIPSで優勝するなど「けっこうガチでやっていた」のだそう。
「兄がバトルDJをやっていなかったら、僕もやっていなかったですね」
DJ YUTO自身、兄がバトルDJをやっていたのを見ていた中学3年生の頃に、一度だけTEEN'S DJ CHAMPIONSHIPSに出場した経験がある。
「中学2年生でターンテーブルを触りはじめて、中学3年生のころにTEEN'S DJ CHAMPIONSHIPSにビデオを送ったら、審査が通ったので出場しました。その時の出場者には、DJ 松永さんもいましたね。あとはDJ FUMIRATCHさんとか、今思えばすごい人たちが集まっていました。今回出場していたDJ RENA君は、11歳ながらも天才的なスキルを持っていますが、僕が同じくらいの年のころは全然ダメで。だから、自分はターンテーブリストには向いていないんだなと思って」
それ以来ずっと、ターンテーブルを触ることはなかったと話す。高校に入るとバスケ部に入り、部活動にのめり込むことに。高校卒業後の昨年、大学への進学で上京。そこで再びターンテーブルへと意識が向くことになった。
「大学で音楽好きな仲間に会ったのがきっかけです。仲間はハウスやテクノのDJが多いから、スクラッチを披露すると“すごいね!”って言ってくれて。すごく褒めてくれるし、珍しがってくれるのがうれしくて、好きが高じて再びやり始めたんですよ。そこで、タイミング良くDJ KENTAROさんがWorld DJ Academyをやりはじめたので、そこに通ってみたという流れですね」
好きなDJはルイ・ヴェガだと言い、大会当時に着ていたTシャツにも“Techno”の文字が。ターンテーブリストとしては、音楽のセンスもテクニックと同等に大事なので、大学で出会った音楽好きの仲間の存在は大きかっただろう。
ー東京在住だけど、エントリーは東北ですね。地元はどこなんですか?
「青森です。兄貴も東北ブロックに出ていたし、やはり地元で出たいと思ったんです」
DJ KENTAROの
スクール第1期生として修行
DJ KENTAROが主宰するスクールWorld DJ Academyに通い始めたのは、およそ1年前のこと。大体2週間に1回の頻度で通っているのだという。そこでの練習はどのように行っているのだろうか?
「映像を見て研究し、自分でルーティンを作ります。それを、スクールに持っていってアドバイスをもらい、作り直してまた持っていって。その繰り返しですね。KENTAROさんは優しいので、僕の作ったルーティンに対して否定はしません。だから、良いモノを作ったら良い反応をしてくれますし、そうじゃなければ特に何も言われない。だから、反応を見て判断していましたね(笑)」
ーひとつのルーティンを組み立てるのに、どれぐらいの時間をかけているんですか?
「半年くらいかな。組み立てる際には、ノートに手順を書いたりしているんです。アイディアも細かくメモしたり。そのノートは、音をカタカナで書いたりしているので、自分で見てもときどきよく分からない(笑)」
ーちなみに、DJ KENTAROさんは先生としてどんな人ですか?
「人によってルーティンの作り方があると思うのですが、KENTAROさんは僕とは違って、閃き型だと思うんです。バトルDJの中でもいろんな音楽を知っている人だし、耳も肥えている。だから、アドバイスをくれる第三者としてはベストだと思うので、スクールに通ったことは自分にとって本当に良かったですね」
ーそれにしても、2年でここまで来るのはすごいですね。前回は2位でしたが、今回は優勝する気で挑みましたか?
「そうなんですけど、関東予選で松永さんを見て、明らかにヤバいなと思ったんですよね。自信はあったんですけど、彼のプレイを見たら焦りは生じました」
DJ松永は、UMBやフリースタイルダンジョンなどのMCバトルで名を馳せるR-指定とともに、Creepy Nutsとしてメジャーシーンで活動。DMCには7年ぶりの出場ながらも、ステージ慣れしたエンターテインメント性の高いパフォーマンスには歓声が上がった。
しかし、DJ YUTOは そんなDJ松永に30ポイントもの差を付け、70ポイントというフルポイントを叩き出したのだ。
DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP 2016は、9月24日に迫っている。6分間のルーティンは「よりブラッシュアップさせてから挑みたい」とのことで、初めての世界の舞台での健闘を心から祈りたい。
編集部追記:DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIP 2016で優勝し、DJ YUTOが世界一の称号を手にしました!(2016/09/25)
photography : 下城英悟 / Eigo Shimojo
0コメント