銭湯2.0世代の若者による銭湯ムーブメント『YOUNG SENTO MOVEMENT』とはなんぞや

突然だけど、最近いつ銭湯に行った?

「自宅に浴室があるのが当たり前の時代に、銭湯になんか行くわけがない」。もし君がそう思っているのであれば、ちょっとその感覚は時代遅れかもしれない。銭湯は今や「古き良き昔の文化を感じれる場所」ではなくなってきている。その証拠に実は銭湯業界を盛り上げるため、次世代の若い銭湯業界人が活躍しているのだ。

今回、若者による銭湯ムーブメントを守る会「YOUNG SENTO MOVEMENT」の発足記念トークイベントが8月25日新宿区歌舞伎町のLOFT/PLUS ONEで開かれたということで足を運んでみた。


銭湯がコンテンツとしての価値を帯びはじめてる

トークライブがはじまる前に、主催の横須賀馨介くんと新宿LOFT/PLUS ONEの小川雄太くんに話を伺うことができた。そもそも開催の経緯は?

小川「横須賀くんがもともと『Get湯!』という銭湯とカルチャーを掛け合わせたイベントを行っているのを知ってました。それとは別にLOFT/PLUS ONEでは『銭湯ナイト』という銭湯好きのコミュニティイベントを月に一度行っていました。ふたつを掛け合わせたイベントを一緒にできないかなと話したのがきっかけです。

横須賀くんの周辺には銭湯に関わる作家さんがいたので、作家さんたちを集めると面白そうだなと話して」

「YOUNG SENTO MOVEMENT」には、ミスiD2015特別賞を受賞した「銭湯あいどる」祝茉莉。京都にある「サウナの梅湯」店主の湊三次郎。銭湯漫画「のの湯」を連載中の釣巻和、同じく銭湯漫画家の「非定型コヘレンツ」の作者でありアイドルの湯島ちょこ。「東京銭湯」という各地の銭湯をまとめた同人誌を発行している「ENGELERS」。そして本イベントのビジュアルデザインを手がけた小磯竜也を加えるなど、通常の「銭湯ナイト」とはだいぶ毛色の違うメンバーがそろった。

横須賀「今回はお客さんがいろんなきっかけで来れるようなイベントにしたかった。今までは銭湯好きの人が各々銭湯を嗜むようなゆるいイベントだったけど、銭湯にゆかりのないお客さんにも魅力を知ってもらいたい。いろんなコミュニティと銭湯をつなげたいなと思ったんです。例えば、銭湯あいどるの祝茉莉ちゃんが出るから見に行ってみようとか、銭湯漫画『のの湯』の釣巻和さんと話してみたいとか、来るきっかけを広げたかった。とにかくまずはイベントに来てもらって銭湯のことを知ってもらえたらと」

若者による銭湯ムーブメントを守る会「YOUNG SENTO MOVEMENT」と名打っただけあって、横須賀くんは銭湯に対する若者の意識が徐々に変わってきているように感じているようだ。


横須賀「今、実は銭湯がちょっとしたブームになってきていて。特に若い人にとって『銭湯』というもの自体が楽しめるような"物珍しいもの"に変わってきてるんだろうなって感じているんです。

銭湯の楽しみ方が『お風呂に入ること』はもちろん、実はコミュニティが生まれる場所でもあることを知ったり、ラグジュアリーなものとして受け入れられたり、カルチャーとして楽しめるものになっている気がしています。

この会に参加してくれた作家さんみたいに、銭湯を題材にしたコンテンツも増えているし、銭湯も2.0世代じゃないけど、そういう新しいものになりつつあるのかなって。昔ながらの価値も大事にしつつ、プラスアルファの価値が今生まれてるんだなって思いますね」

銭湯に再び地域のハブスポットとしての役割を

横須賀くん主催の『Get湯!』というイベントは、今年の7月にSILLYでも取材を行った京都のギャラリー兼ショップ『VOU』と、銭湯の『サウナの梅湯』の2か所で同時開催をしていた。


「YOUNG SENTO MOVEMENT」にも参加している祝茉莉を含む総勢17名のアーティストによる銭湯関連の作品の販売や、『サウナの梅湯』で銭湯好きDJのMJ-MICHIが湯上がりに合うチルアウトミュージックをMIXして流すなどの銭湯×カルチャーイベントで、実は10/28(金)から11/15(火)の期間での開催で第2回目の開催も予定されている。


『Get湯!』企画で感じた手応えが、今回の企画につながったようだ。

横須賀「『Get湯!』は地方を盛り上げたいなっていうのからはじまったイベントで。町の機能やコミュニティを、もう一度復興させる意味で行ったんです。

企画を通じて昔ながらの町の廃れてしまった商店街の商いとカルチャーを掛け合わせると、すごい面白いことになるんだなって分かったんです。例えば、京都の『VOU』をかけ合わせれば、スケーター、ラッパー、アートカルチャーの若い人が銭湯に行くようになった。反対に『サウナの梅湯』によく行く商店街のおじいちゃんが『VOU』にいたりとか。


世代が入り混じった感じはやっぱり面白いなって思ったんです。これを続けていったらいろんなものを救えるんじゃないかなと実感した。普段全然違うところにいる人たちに、きっかけを作ることでつながっていくような、そういうハブとしての役割を果たしたいというのが『Get湯!』だったんです」


もともと地域に密着している場所である銭湯と、まったく別のところで発展しているカルチャーを掛け合わせることによって、その場所に住んでいるおじいちゃんやおばあちゃんから若者までが繋がり、新しいコミュニティが形成されて、町全体が盛り上がっていく。かつての銭湯の役割を再認識した若者たちがムーブメントを起こそうとしているのだ。


記憶に残る町やお店を大切にしたい

とはいっても、地方にある銭湯や商店街のお店は減少傾向にある。普段広告デザイン業を行っている横須賀くんは、さらに都会や地方の街のデザインについて問題意識を持っているようだ。


横須賀「果たして『今流行している“おしゃれなデザイン”って本当におしゃれなのか?』って考えることが多いんですよね。世の中にあるおしゃれと言われてるものは、それが選択肢の中のひとつであっていいけれど、みんなそれに向かっちゃってる傾向がある。フォントのデザインもグラフィカルなものが多いし、空間もウッド調のDIY感あるようなものが増えてますよね。格好いいデザインはそれだけじゃないよ、って僕は思うんです。


ローカルな町には店主が自分で書いた看板が外に出ていたり、オリジナルのフォントが統一感なく入り混じってたり。流行っているから使うんじゃなくて、流行りは自然と生まれるものだから、いいと思うものを作っていかないといけないんじゃないの?って。もっとディープで、それでいて楽しいものはたくさんあると気がするんです。

僕は昔流行ったものだったり、忘れられてしまっているカルチャーだったりというものが好きで。商店街でいう豆腐屋とか床屋とかも減ってきているけど、実はいい場所ってたくさんあるんです。大型スーパーは便利だけど、個人経営のお店みたいな暖かみや個性はないですよね。個人経営の小さいお店だと、グンゼ専門店に店主の趣味のものと商品が一緒に陳列されていたりして、『なんでここにこけし置いてあるんだよ(笑)』って心の中でつっこんだり。

頑固なオヤジさんがつくってる豆腐屋があったり、そういう印象って嫌でも記憶に残るじゃないですか。僕は『やっぱりオヤジさんの作る豆腐はうまいな』とか思いたいですよ。


町の風景も杉並区ならこう、世田谷区ならこうとか、もっと色が出ていい。今はパッと見、町の印象がどこも一緒だなと感じることが多いんですよね。均一化されてしまっている。

そうじゃなくて、『このあたりにいいママがいるスナックがある』とか、『この地方にこんな面白い人たちがいて』という情報を聞くと、そこに行きたくなる。この活動もそうですけど、そういうローカルな場所でなにかやりたい。広告の仕事をしているから、行政と一緒に街のプロモーションをやってもいいなとか。そういった個性のある町作りをするのが僕の永遠のテーマなんです」


銭湯業界で頑張る人たちをバックアップしたい

この若い世代で広まりつつある銭湯ムーブメントを一過性で終わらせず、さらに大きな文化にしていくためには、これからどうしたらいいのだろう。


横須賀「今回トークショーに参加してくれた『サウナの梅湯』の湊くんが若くして銭湯を経営しているように、今後、湊くんみたいな若い経営者が増えていく流れになると思うんです。ムーブメントを広げるにはそういう風に経営する人と、その周りで楽しむ人たちの両方が必要で。それは今回参加してくれた作家さんだったりお客さんだったり、楽しむ人がいないと、いくら経営者が若くなってもつぶれてしまう。僕らは銭湯業界で頑張っている人たちを支えたり、一緒に盛り上げていきたいという想いがある。だからこの活動をしっかり続けていきたですね」

横須賀「今回はイベントという形でしたが、これからは銭湯を経営している人たちと事業面から絡んでいくのもいいなと思うし。銭湯のグッズをデザインするのもいいなと思う。イベントでも出版でもいいし、その都度形を変えて、こういう活動を続けていきたいですね」


小川「『これから銭湯業界で頑張ろう』という若い経営者たちも、バックアップがあることを知るだけで、やりやすくなる気がするんです。僕らの活動を通じて、銭湯にあまり縁がなかった人たちにも興味を持ってもらえる機会を作っていきたい。

次回イベントを開催するころには、今回のつながりからまた新しい銭湯ムーブメントが生まれていたり、若い『銭湯マスター』みたいな人が出てきてもいいなと思いますね」

横須賀「もっと言ってしまえば、最終的にこの活動自体をしなくていい状況になればいいなって思ってるんです。もっとイベントとして大きくしても楽しいけど、こういうことしなくてもみんな当たり前に銭湯に行く文化になるのが一番いいことじゃないかな、と」


銭湯は決して敷居の高い場所ではなくて、もっとカジュアルに『広いお風呂に入りたいな』と思ったら行くくらいの気持ちで通っていいもの。百聞は一見にしかず。記事を読んだら、ソッコーで近くの銭湯を調べて、疲れを癒しにいってみるといいんじゃない?

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