kotohayokozawa × yo asa 気鋭若手ブランドオーナーによる時代への問いかけの姿勢

前編の『yo asa』と『kotohayokozawa』のスタイリング記事に引き続き、後編の記事では、若くしてブランドを立ち上げて活動を続けるふたりのデザイナーに、服作りをする上でのバックボーンやモチベーションについて対談してもらった。


■直線的なパターンのシャツやワンピースを作る『yo asa』と曲線的なパターンの多い『kotohayokozawa』。“正反対”に思えるふたつのブランドに共通した、時代への“問いかけ”とは?


yo asa:東京で活動するファッションレーベル。2014年にはじめての展示会を開催。シャツやコートを中心に、毎日の繰り返しやさまざまな風景に調和する服作りを目標にしている。音楽イベントや他業種を招いた合同展なども開催。直近では、六本木SuperDeluxeで開催したイベントの模様をトヤマタクロウが撮り下ろした写真集「LMNSM(ルミニズム)」を出版。


kotoha yokozawa:2015年2月ロンドン日本大使館にてInternational Fashion Showcaseに参加。同年3月に東京を拠点としたウィメンズブランドkotohayokozawaをスタートさせる。2015年10月、2016年3月にはMercedes-Benz Fashion Week TOKYO期間中に渋谷ヒカリエホールにて若手5ブランドによる合同ファッションショーを開催。

ぶれること/ぶれないこと
変わること/変わらないこと


ーふたりは専門学生時代の同級生ということで、まずは学生時代のお互いの印象から聞けたらと思います。

kotoha yokozawa(以下kotoha):軸がぶれない人という印象ですね。どんな課題に対しても、いつもぶれない軸を持っていて、いつも近い表現の服ができあがっていくんですよね。学生の頃はいろいろと模索することが多いと思うんですけど、それがないのが本当に私には不思議で仕方がなかったですね。何を考えているのかまったく分からない人だなと感じていました。

yo asa:あんまりいろいろ作りたいとは思えないんですよね。態度の変わらない人が好きで、そういう人たちに影響を受けてきたことも理由として言えると思います。

kotoha:心の浮き沈み、テンションのアップダウンみたいなものはあるの?

yo asa:それは、当然あるよ(笑)。


ーそれではyo asaからみて、kotohayokozawaの印象は?

yo asa:方向性みたいなことでいうと、kotohaは行ったり来たりしているような印象はありましたね。けっして悪い意味ではなく。”らしさ”の中に、現実感と非現実感の振れ幅みたいなものが大きくあった気がします。どこか健康的な感じもある。

kotoha:気になったら一度やってみないと分からない性格なんですよ。これって決めつけても途中で飽きちゃったり、不安になったり。他のものも良いなとか、すぐ思ったり疑ってしまいます。自分のなかで、人間は毎日毎秒気持ちが変わるものだと思っているので、逆にyo asaはブレなさすぎて、大丈夫なのかなって思ったりもします(笑)。

yo asa:洋服のテイストやアプローチの仕方が自分と反対なのかなと思っていて。『kotohayokozawa』は非日常的っぽい服だけど、大衆的な展開を目指しているように見えます。逆に『yo asa』は日常的な服だけど非大衆的な展開を意図しているところがある。あと、kotohaは既存のファッションブランドの在り方みたいなものが好きなのか嫌いなのかいまいちつかめないというか。否定しているような態度に見えなくもない。

kotoha:自分でもつかめないんですよ。ファッションならではのカルチャーやムーブメントに対する憧れはあるのですが、そこにどっぷりのめり込んじゃいけないという気持ちもあって。


ーブランド創立1年目に伊勢丹などでポップアップショップに参加するというのは、多くの人に伝えるためのアプローチを意識しているのかなと感じているのですがいかがですか?

kotoha:私が作っている服は、一見“これどうやって着るんだろう”という非対称なねじれや曲線のある服なんです。そういう服が既存の店舗に置いてあると、より比較がしやすいと思うんです。たくさんの服が置かれている場所に置いてもらうことで『この服はどこか様子が違うな』と違和感を持ってもらうことが最初のきっかけになればいいな、とは思っていますね。

yo asa:服を展示会とかで注文してもらったときってどんな気持ちになる?

kotoha:こんなことを私が言ったらいけないのですが、『え、いいんですか!』って気持ちに少しなる。『ありがとうございます』と言いつつも。『今日はおごるよ』と言われたときに出る『え、いいんですか!』になんとなく近い気もします(笑)。

yo asa: 自分もつい『大丈夫ですかね?』って聞いてしまうんです。自信がないとかではないんですけど、服を買ってもらうときに、作り手と受け手みたいに関係が分かれてしまうような感覚が嫌でモヤモヤするんです。kotohaもそういう印象を抱くかどうかが気になっていて。

kotoha:私はそこまで考えないかな。はじめてのお客さんとかで自分のことを知らずに買ってくれたりしたら、『本当にありがとうございます!』という気持ち。

活動を通じた2人の“問いかけ”


ー“ねじれ”の多いパターンはいつもどんな風につくっているんですか?

kotoha:もちろん一着一着心を込めて作りますが、頑張れば一着30分で作ることができるものもあります。私の服作りのスタンスとして、『明日着たいと思う服が家にないというときに、その場で自分で作ることもできる』というのが最高の状態だと思っています。だから、私の服を見て『自分ももしかしたら服を作れるかも』と思ってもらえる機会になればいいなって思うんですよね。ファッションを高尚なもの、難しいものと捉えている人も多いと思うので。毎日気分が違ってその日によって着たい服も全然違うはずなので、『今日着たい服はこれ!』というように、より感情にフィットした装いができるのが理想です。


ーyo asaはどのようなスタンスでものづくりしているのでしょうか?

yo asa:ちょっと漠然とした言い方ですが、毎日の繰り返しをとても意識しています。繰り返しではあるけれど、あらゆる未知に対してオープンでいたい。安心感や万能感で自分を覆うのではなく、偏りや決めつけのない余白を残したいんです。そうすると、なにかを加えたり、強調したりという意識が遠ざかっていく。人々も風景の一部なので、調和を意識した、シンプルでさっぱりしたものがいいなと思うんです。

最近はいわゆる高級素材や特殊な製法よりも、消耗品としての質に価値を置いて作っています。


ー服作り以外の表現で音楽イベントの企画などもしていますね。

yo asa:さっきkotohaが毎日着たい服が違うと言っていたのと逆で、自分はいつも同じ服でもいいと思うタイプなんです。衣食住というくらい重要なことではあるけれど、なるべく他の楽しみを考えて暮らしたい。

ファッションレーベルの立場で音楽イベントをしたり、他業種と積極的に関わることで、そういった態度を示したいなと思っています。


ーkotohayokozawaがファッションデザイナーを自称している一方、yo asaは"ファッションレーベル"と謳い、だれがどのように作っているかを曖昧にしている。

Kotoha:私はレーベルという言いまわしは音楽的で格好いいと思うんですけど、自分のことは個人としてデザイナーと自称していますね。ファッションデザイナー=服を作る人ですっていうわけでもなくて、いろんな要素があるかなと思っているので、今はファッションデザイナーと言っています。

yo asa:曖昧になることで受け取られ方がフラットになればいいなという希望はあります。さらに言うと、何事も人がやっている以上、曖昧さに神秘を感じてしまうのは弱さだと思うんです。それを示唆したい気持ちもあります。


純度を落とさず続けるために


ーこれからどのようなことを実現していきたいですか?

kotoha:今までは目の前の服を作ることに精一杯で、今後のビジョンをあまり持てていなかったです。最近はブランドを大きくしていきたいという強い気持ちがあるので、それを実現させるためにどのようなことをするべきか、少しずつですが順序立てて考えるようになりました。継続して作り続けるためには一緒にやりたいといってくれる仲間を増やして、チームでの仕事を大切ににできたらいいなって思いますね。

yo asa:人が自分の活動に加わることで純度が落ちてしまう不安はない?

kotoha:ひとりでやっているとすぐに休んでしまったりとか、いっぱい誘惑もあるし。ひとりだと作っているものが良いのかどうか客観視できなくなってすぐ自信をなくしがちなんですよね(笑)。ひとりでできる規模感の限界も感じました。些細なことでも人に相談したり、意見をもらったり、新しいものをどんどん取り入れることができる環境を作りたいという思いが今は強いです。


ーyo asaはどうですか?

yo asa:逆に、自分は好きなようにやるために、服を売らなくても続けていける環境を作ったんですよ。本当にやりたいこととか、本当に好きなものってあんまりないと思っていて。それらが明確になる状態がいいなって思うんです。スケジュールや展望が決まっていると、モチベーションを保つのには有効だと思うんですけど、ある面では悪い反復に陥ってしまう気がして。

マイペースに、なるべく続けていけたらいいなと思っています。


ーたしかにyo asaは灰野敬二さんの服をオーダーメイドで作ったり、意表をつく活動がありますもんね。

yo asa:身体を使ってなにか表現してる人って、服に求めることがはっきりしていて、それぞれ独特なんです。その理想に近づいていく作業も楽しいんです。日常の繰り返しのための服とは、まったく違った考え方になりますね。


ーさて、いろいろ話しましたが、なにか共通点って見つかりましたか?

yo asa:改めて話すと逆なことばかりですね(笑)。でもお互い、ねじれ感とかパンクさみたいなものがないとこうしてやってないと思うので、それがこれからどうなっていくか楽しみです。


同世代ながらスタンスのまったく異なるふたりの活動。そこには、正解もないし、間違いもない。意表をつくような活動を展開するyo asaとkotohayokozawaの今後に注目だ。

Model:Keiko Washio / 鷲尾 佳子

Photographer:Daiki Miyama / 三山 大貴

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