BOYS AGE presents カセットテープを聴け! 第14回:ウェディング・プレゼント『ビザーロ』

日本より海外の方が遥かに知名度があるのもあって完全に気持ちが腐り始めている気鋭の音楽家ボーイズ・エイジが、カセット・リリースされた作品のみを選び、プロの音楽評論家にレヴューで対決を挑むトンデモ企画!


今回のお題は、ニルヴァーナやストーン・ローゼス登場以前は、ここ日本でもかなりの人気を博した英国のバンド、ウェディング・プレゼント89年の2ndアルバム。この次作、91年の3rdアルバム『シー・モンスター』はロック史に燦然と輝く大傑作なんですが、カセットテープがみつかりませんでした。

ウェディング・プレゼント『ビザーロ』(購入@中目黒 waltz


さあ、果たして今回の勝者は?!


>>>先攻

レヴュー①:音楽評論家 天井潤之介の場合


時代区分で見ればギリギリ。音楽区分で言えばかなりビミョー。イギリスはリーズ出身の「ポスト・パンク」バンド、ウェディング・プレゼントは、しかし、ワイアーやフォールのような極道でもなければ、XTCやスクリッティ・ポリッティのような芸術家肌でもない。語弊しかない言い方になるが、その音楽は今あらためて聴いてみても至ってフツウのギター・ロック。いや、だからこそ彼らは玉石混淆の「ポスト・パンク」勢の中でそこそこの商業的成功を収めることが出来た、のかもしれないが。


なので、彼らの場合、「ポスト」というよりはむしろ「プレ」、と言うべきか。シンセもラッパもない、鋭くファストなエレクトリック・ギターが貫くオーセンティックなバンド・サウンドは、シューゲイズになる前のマイブラみたいというかいわゆるガレージ・ロック寄りで、今で言うポップ・パンクにも曲によってはかなり近い印象。よく言えば小細工なし。けど悪く言えばヒネリなし。そんな彼らが、かたやアブノーマルな「ポスト・パンク」に対してノーマルコアなギター・ポップやトゥイー・ポップを集めた当時のオムニバス『C86』に収められていたという事実は、だからおおいに頷ける。というのも、もしもこのバンドが自分に愛着のようなものを抱かせるところがあるとするなら、それはまさに『C86』の収録バンドたちをその青写真として重ねることが出来た、90年代のオリンピアやアセンズ界隈のUSインディ・シーンとの音楽的な近しさ――ぐらいのものだからして。


そういう意味では、ジャングリーでネオ・アコ的な趣もある前作のデビュー・アルバム『ジョージ・ベスト』か、もしくはスティーヴ・アルビニとがっつり組んだ次の『シー・モンスターズ』の方が、作品のカラーがはっきりと打ち出されているという点ではオススメかもしれない。2枚目のこの『ビザーロ』は、まさに両隣のアルバムの中間に位置するような内容で、ギター・ポップからギター・ロックへ、すなわちUKポスト・パンクの末席からUSオルタナティヴの縁戚への助走と離陸の瞬間をとらえた習作、と呼ぶににふさわしい。


リリース当時の80年代末と言えば、たとえば〈ブラスト・ファースト〉のようなレーベルを通じてソニック・ユースやブッグ・ブラックやバットホール・サーファーズといったアメリカのアンダーグラウンドなバンドの評判がイギリス~ヨーロッパでも轟き始めたタイミング。が、そうしたUS勢が誇ったエキセントリックでやさぐれたところは、当然ながらこの4人組の音楽にはほとんどまったくと言っていいほど見当たらない。性急にかき鳴らされるギターはじゃりじゃりとしていて荒っぽいが、重いベースとタイトなドラムが支えるバンド・サウンドはひねくれたところがなく、一言で言えばとてもポップ。まあ、しいて言うならば、アルバムの中盤に置かれた“ケネディ”や“ホワット・ハヴ・アイ・セイド・ナウ”の甘くもぎこちないウォール・オブ・ノイズは、それこそ『C86』の再評価も囁かれた2010年代の初頭に〈キャプチャード・トラックス〉周辺のバンドがしゃぶりつくした、ガレージ・ロックやギタポとシューゲイザーを練り込んだ金太郎飴の鋳型を垣間見せるよう……とも。


10年前の「ポスト・パンク」リヴァイヴァルの時と同様、たとえばガール・バンドやプレオキュペーションズのようなバンドがまたぞろ「あの時代」を記憶に甦らせようとも、そこにこのウェディング・プレゼントがアクチュアルな対象として顧みられることはおそらくないだろう。それで結構。しかし、「ポスト・パンク」としては微妙だったかもしれない彼らだが、この2016年にあらためて聴く『ビザーロ』は、至って普通ながら普遍的なギター・ロックのアルバムとして十分な風格を宿している。そう言わせてもらいたい。ちなみに、6年前に彼らは来日を果たし、そこでこの『ビザーロ』の再現ライヴを行っている。その模様はCD化されて日本盤もリリースされているので、ぜひ聴き比べてみて、彼らのことを顧みたり再発見したりするきっかけにしてもらえればいいのではないだろうか。


【サイン・マガジンのクリエイティヴ・ディレクター、田中宗一郎の通信簿】

★★★★

とてもよく出来きました。潤之介くんは、前回のカラー・フィールド85年の1stアルバム『ヴァージンズ・アンド・フィリスタインズ』に続いて、「歴史の記憶から抹消されつつある傑作」を取り上げようという先生の意図を見事に汲み取ってくれましたね。どうもありがとう。


ここ二回のチョイスは、この連載記事のタイトルがSNS上に上がってきても、どうせどいつもこいつも有名な作家の作品や自分の好きな作家の記事しか見ようとはしないんだろう、そうやって知らず知らずのうちに小さな自分の殻をさらに狭めていくことに気付きもしないんだろう――そんなクラスのみんな全員に対する先生の密かな抵抗であり、意地悪なのです。


そして、ウェディング・プレセントというバンドはいつの時代もいくつかの主流の狭間にすっぽりと落ち込んでしまった不遇なバンド。先生の個人的なテイストからすると、ウェディング・プレセント解散後のシネラマの方が好みではありますが、いずれにせよ、どちらのバンドも時代の脚光を浴びたバンドではありません。しかし、最高の作品を作ってきた。


潤之介くんはそうした彼らの不遇さの理由が彼ら自身の能力にもあったことを冷淡に示しながらも、彼らの存在意義の重要性をきちんと説いています。少しばかり潤之介くんらしくないエモーショナルな筆圧によって。


そうした身振りは今では決して流行りではないし、もはや先生も意識的に封印してしまったスタイルですが、とても新鮮でした。なので、先生もそれに乗っかって、暴言を吐いておきます。〈キャプチャード・トラックス〉最高! とか言う口があるなら、取り敢えずウェディング・プレセント聴いてからにしろ! この糞インディどもが!


よく頑張ったね! これからもたまーにエモーショナルな作文を書いてね!


>>>後攻

レヴュー②:Boys AgeのKazの場合


「結婚祝い」ねぇ……。オーケー、俺には関係ないから絶対に式に呼ぶなよ。金も無いしスーツも無いんだ。行きたかないね。これは振りでもなんでも無いし、俺は冠婚葬祭で心が動くような健康な人間じゃないからな。


さてこれの公開日がいつかはよくわかっていないが、今日は下北沢〈モナ・レコーズ〉でDEON(デーオン)というシンガポールからの来訪者のツアーに参加する。京浜東北線が毎週訪れるポイント10倍デーか何かのように止まっていたが。 本題のウェディング・プレゼントってバンドは、一時は栄華を極めたバンドだったそうだ。20世紀末のオルタナティヴ・ロックの最優の一つで、普通にいいバンドだよ。日本でも、今も大人気だ。でも、栄光は永遠ではなかったわけで、考えさせられるよ。規模に違いはあれど、同業者だからね。ホント、この稼業ってそら恐ろしいな。


ところで、ずっと前から疑問だったんだけど、インディってなんだ? なんで日本ではインディー「ズ」なんだ? 俺たちは、便宜上インディに属しているらしいが、凡百と比べるまでもなく、耳がついてれば分かるだろうが異質な存在だ。だが同じ枠で語られる。俺たちは、検索とかの利便性においてindie_rockやindie_popのタグを使うことあれど、インディ・ポップを演奏したつもりなんてただの一度すら無いというのに。 インディってなんなのさ。俺は一番初めはオルタナティヴ・ロック、あるいはもっと遡ってパンクの枝分かれ、あるいは新時代に適合した宗派だと思っていたんだが、少なくとも現代の定義は違うらしい。なんなのさったらなんなのさ。俺は、自慢出来るほど多くも無いがそれなりには音楽を聴いてきたから聴くと、ああ「コレ」か。ってなるっちゃなるんだが。でも言語化はどうも出来そうもない。


なんにせよインディ・シーンなんて糞食らえってことだ。どんなことにも言えることだろうけど、インディは語源から既に遥か遠いところにあるし、それは到底進化と言えない後退を果たしている。先進性も独立性も失っている姿は見るに堪えない。 なぜなら類する多くのミュージシャンは、例えばこのウェディング・プレゼントのフォロワーらのほとんどは、ここから一歩も進んでいない、どころか、到達すらしてない。 負け犬根性かどうだか知らないけど、リスペクトがくだらない畏怖になって、大言壮語を恐れ多いとすら思ってる輩が多すぎる。そんなザマだから劣化的存在にしかなれんのだ。オリジナルを二度も三度もコンビニでコピーしたかのような薄さには吐き気すらする。フォロワーってのは、オリジナルと同格になって初めてスタート・ラインだというのに。


君の顔の見えない音楽、わざわざたくさんの中から君を選ぶ価値が無い程度の音楽なら、人前に出すな。目障りだ。……いや耳障りか? なんでもいい、とにかく邪魔だ。


【サイン・マガジンのクリエイティヴ・ディレクター、田中宗一郎の通信簿】

★★

もう少し頑張りましょう。ウェディング・プレセントというバンド名を「結婚祝い」という日本語に訳して、取り敢えずボケるという冒頭のつかみから、いきなり壮絶に滑っているのに先生は思わず落涙してしまいました。しかし、どれだけみっともないほどに滑ろうとも、まず最初の一文でクラスのみんなの気持ちを掴むんだ! という気概、とても大事だと思います。


しかし、その直後がいけません。最初の段落で作文のお題のバンドに触れたからもういいだろう、とばかり、いきなり自分のバンドの宣伝ですか。ただ、そこでさらりとウェディング・プレセントについて触れつつ、一気に昨今の「インディ」を取り巻くどうしようもない磁場に対する批判になだれ込む身振りの鮮やかさはとても見事です。


「インディ」というコミュニティの内側にいるカズくんによる「インディ」への批判。勿論これは、今もっとも必要とされていながら、誰もが口にすることをはばかっている言葉なのは言うまでもありません。だって、その言葉は同時に自分自身にも突き刺さることになる諸刃の剣でもありますからね。


それを大胆に口にする勇気、その勇気を裏から支える自信なくしては、この言葉を発することは出来ません。こうしたカズくんの言葉がただの強がりではないことを真っ向から証明するだろう、夏の終わりの新作アルバム、とても心待ちにしています。


作文に関しては、もう少しだけ作品についてレヴューして欲しいなー、もう一言二言でいいから、という思いもなくはないものの、まずは本業の音楽、頑張って下さい。てか、これ読んでるクラスのみんなも、Boys Ageの曲、聴いてます? と珍しくフォローしてみました。これからも頑張ってね!


勝者:天井潤之介


〈キャプチャード・トラックス〉最高! …と煽りをかましたいところですが、性根が腐っているのでそうともいかないのが最近の悩みです(くわしくは〈キャプチャード・トラックス〉から2枚のアルバムをリリースしているモーンの1stアルバム国内盤ライナーをご覧あれ)。


なんて個人的な話はともかく、今回の勝者は天井潤之介! 作品セレクトにもきちんと意味があることがついに判明した『カセットテープを聴け!』次回もお楽しみに!

〈バーガー・レコーズ〉はじめ、世界中のレーベルから年間に何枚もアルバムをリリースしてしまう多作な作家。この連載のトップ画像もKAZが手掛けている。ボーイズ・エイジの最新作『The Red』はLAのレーベル〈デンジャー・コレクティヴ〉から。詳しいディスコグラフィは上記のサイトをチェック。


過去の『カセットテープを聴け!』はこちらから!

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