RYO FUJII

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記事一覧(2)

「好きのレベルが違う」行ってみて初めて分かる海外留学の現実

「映画を作りたい、勉強したいと思ってニューヨークの大学に留学したけれど、アメリカで映画好きな人はめちゃくちゃ作品を見ているし、すでに自分の作品を撮って持っている人が多かった。アメリカ人の本物の映画好きには勝てないな、と思って、諦めたというわけではないんですけれど、ここでは勝負できないと感じたんですよね」新宿で会ったKくんは、大学を休学して日本に戻った理由を飄々とした口調で語った。ハリウッド80年代の『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・パーク』、アクション映画が好きになり、中学生の頃に映画の勉強をしたいと考えるようになった。だが、日本で映画を専門で学べる国公立の大学は少ない。そのため、ミズーリ州の語学学校で英語を習得した後に、ニューヨークで念願の四年制大学に入ることになった。だが、そこで待っていたのは「映画好き」のレベルの差だった。「会話の流れで知らない作品が出てくると、話のステージに登れない。映像や音響、音楽を実際に作っている人がたくさんいて、敵わないなと思いました」という彼に「ほんとうに映画が好きではなかったのでは?」と意地悪な質問をしてみた。「それは思いましたね。僕はそうでもないのかな、って。“好き”の度合いが違いましたね」

「医学部を目指す理由はお金」在日タイ人の大学受験のリアル

「第一はお金ですね。さんざんお金に困ったので、今度はお金を利用したい」東京大学の医学部を目指す理由は、という質問に対して、浪人2年目だという在日タイ人のPくんは迷いのない口調でそう答えた。2014年の法務省の統計によれば、在日タイ人は43,081人。1980年代より建設現場や農場、工場等など単純労働者として働く数が急増した。彼、Pくんの父親と母親もそういった世代にあたるタイ人だ。父親は不法滞在が明らかになったことで帰国。現在は在留カードを取得できた母親との二人暮らしだが、モデルガンを作る工場で非正規雇用として働いているため、月の収入は15~18万円と生活は厳しい。特別なスキルや学があるわけでもない外国人にとっては定期収入が得られる仕事を探すにも一苦労なのだ。「小学生の頃、母と二人で暮らしてから、他の家庭と差がある、ちょっと違うというのがわかりました。今もよくタイで生活すればいいんじゃないか、と親戚に言われます」とPくんは話す。医学部を目指しているということは、母親にしか話していない。「これは自分の問題。誰にもとやかく言われたくないし、自分も言いたくない。今は放っておいてほしいというのが本音です」Pくんが難易度が高い国立大学を目指す理由は学費の問題をクリアするため。そして医学部を出て医者になることは豊かな生活を手に入れるためというのが率直なところだ。