「かっこよければいい。ただそれだけ」KANDYTOWN | 02

KANDYTOWNが東京で脈々と流れるグッドセンスの系譜を受け継いだクルーだってことは、前回のインタビューでわかったよね? 

後編の話のきっかけになったのは彼らのコアとも言える、2015年に急逝したメンバー、YUSHIの話。個人的な面識はなかったけど、だれもが彼のことを「クレイジーだった」と言う。でも、同時にみんなこうも話してた「あいつこそが中心だった」って。一見クールでスマートなKANDYTOWNだけど、根っこにはとてつもないエネルギーが満ち溢れてる。


YUSHIがいなければKANDYTOWNはない | IO


ーみんなはいつ頃から音楽に興味を持ち出したの?

IO 俺は小学校のときにミニー・リパートンの「Lovin' You」を聴いたときからだと思います。母親が車の中でよく流してました。

YOUNG JUJU 俺も親父がレコードを聴いてたんでその影響もあるし、親戚にバンドマンがいて山下達郎のかっこよさを教えてもらったりしてました。

DONY JOINT 両親がソウルを聴いてたので、その影響ですね。ヒップホップを聴き出したのは小6くらい。そのあとYUSHIに出会いました。ヒップホップをはじめソウルなどは彼が教えてくれました。


ーDONYくんはいつYUSHIくんと知り合ったの?

DONY JOINT サンタくん(Big Santa Classic)が紹介してくれたんです。俺とサンタくんは同じ小学校で、一緒の野球チームにも入ってました。最初はヒップホップについて話してなかったんですけど、ある日彼の家に遊びに行ったら般若さんのCDがあって。そのときちょうど俺も同じCDを持ってて、サンタくんとヒップホップで繋がるようになったんです。そこからサンタくんがYUSHIを紹介してくれて。IOくん達とも仲良くなって、JUJUとかとも知り合いになりました。


ーYUSHIくんってどんな子だったの?

YOUNG JUJU 俺らがKANDYTOWN始めたときもYUSHIは「俺は気が向いたときにやるよ」みたいなスタンスだったんです。別にレギュラーでいなくても出たり入ったりでいいや、って感じで。そういう空気感だったんです。たぶんこういう取材の場に来て、撮影で座り方の指示があったとしても、自分が気に入らなかったら絶対にやらない、そんな人です。自分をかっこよく見せるスタイルをしっかり持ってて。そうだな..たとえば勝新太郎みたいに自分を強く持っているタイプなんです。ちょっと昭和の時代のイケイケだった人みたいというか。でも、相手に対するリスペクトもちゃんとある。まさにB-BOYでしたね。会う日によって全然違うところもあるし。とにかくびっくりするような人。

DONY JOINT 本当にびっくりしますよ。

YOUNG JUJU 今の世の中にあんな人は絶対にいない。

YUSHI - 42st.


IO みんな、彼のことをクレイジーだと言ってたけど、本当にそう。でもそれが似合ってた。それでいて一番ピュアなのかもしれない。真似しようと思っても絶対にできない。


ーみんながヒップホップにハマったのもYUSHIくんの影響?

IO 俺らはみんなYUSHIに影響を受けてるし、YUSHIがいなければKANDYTOWNはない。それだけは事実です。


クルーとして初仕事の前日に、YUSHIが死んだ | YOUNG JUJU


ー『BLAKK MOTEL』を出した後のインタビューで、JUJUくんは「それまでは適当にやってたけど、やる気のスイッチが入った」と話してたけど、あれはどういうことなのかな?

YOUNG JUJU 俺たちは音楽を作ることが大好きなんです。普通に毎日やってることだし、それで満足というか。別に世間に自分たちのやってることを広めようとも思ってなかったし、その必要もないと思ってました。でもそしたら、クルーにちょっとなぁなぁな空気が出てきちゃって。動きを管理してくれる人間なんて、当然いないから。

IO 『KOLD TAPE』は、溜まってた曲を出しただけの作品なんです。でも思った以上に反応があって。

YOUNG JUJU 『KOLD TAPE』を出して反応があったから、「じゃあやってみよう」みたいな感じで『BLAKK MOTEL』を作ったんです。そしたら初めてインタビュー取材のオファーをもらって。『KOLD TAPE』を出した俺らがどういうグループか紹介するための撮影をスペシャ(SPACE SHWER TV)がしてくれるっていうんで、みんな喜んでたんですよ。「休みとっとこう」って。

IO そう。

YOUNG JUJU でも、その収録の前日にYUSHIが死んだんです。そのくらいからみんなの中で「しっかりやろう」って気持ちが出てきました。


ーYUSHIくんが亡くなったことで、解散みたいな話にはならなかったの?

IO そういうのはなかった。

DONY JOINT 逆にまとまった。

YOUNG JUJU でも「YUSHIの分も〜」とかそういうんじゃないんです。俺らがどんなに頑張ったってYUSHIには追いつけないし。

IO ただ、ひとつの方向を向いたことは確かですね。

IO - Dig2Me 


ー3人はBCDMGのレーベルに所属しているけど、これはどういうきっかけだったの?

IO 18、19位の頃に「BOOT STREET」というお店で、働かせてもらってて。もともとはDONYやYUSHIの方がよく行ってたお店で。「BOOT STREET」は宇田川のヒップホップのど真ん中に存在していた店なんです。そこでお世話になってて、JASHWONさんに定期的に自分の曲を送ってました。そしたら、「いい感じだから音源だそうか」って。BCDMGが大きくなるタイミングでもあったんです。BCDMGはプロデューサー集団だから、そこにラッパーとして加われるのは特別な事だし。もともと俺はJASHWONさんのスタイルに憧れてて、東京でヒップホップをやるならBCDMGでやりたいと思ってたから、入れたときはすごくうれしかったですね。


ーKANDYTOWNのスタンスからすると、3人が宇田川のヒップホップシーンにいたというのがちょっと意外。

IO JASHWONさんや、同じくBCDMGのG.O.Kさんは、ニューヨークのヒップホップからインスピレーションを受けてて、音はもちろんファッションやスタイルがかっこよくなくてはいけないと考えてる人たちなんです。その考え方にフィールできたし、そういう人たちと一緒にやれるのは本当にうれしかったんで。


ーDONYくんとJUJUくんは?

DONY JOINT IOくんがJASHWONさんに送ってる音源に俺も参加したりしてたんですよ。何曲か送ってて1年くらいは反応があまりなかったんですが、BCDMGと大きくなるタイミングで俺も参加できることになりました。

YOUNG JUJU 俺の場合はUNITED ARROWS & SONSのPV撮影があって、それには最初から3人で出ることが決まってたんです。撮影前まではIOとDONYだけがBCDMGに入ることになってたんですけど、本番が終わってから。「お前も明日からBCDMGだ」って。

NiCE UA 37.5: “Break Beats is Traditional” [UNITED ARROWS]


自分の幸せは自分で決める | IO

ーみんなラップがすごくうまいけど、普段練習してるの?

IO 俺はいつも神社行って、お地蔵さんに向かって2時間くらいずっとフリースタイルしてます(笑)。


ー最近『フリースタイルダンジョン』に出てる人とか、若い人はとにかくラップがうまいと思うんだよね。でもその水準でみても、KANDYTOWNはうまいと思うし。もちろんフリースタイルと作品ではラップの評価軸も変わってくるとは思うけど。

IO 確かに最近は若い人もみんなうまいですよね。でも、俺らはそんなに他の人を意識してないかな。

YOUNG JUJU そもそもみんなでいるとき、日本語の曲を聴かないよね。『フリースタイルダンジョン』もぜんぜん知らないし。ヒップホップも基本的には洋楽しか聴かないです。意味がありすぎてもダメだし、なさすぎてもダメだし。恥ずかしくなるようなのもダメだし。俺は特にそうですね。


ー日本語でラップする方法論がすでにあるという時代背景から、YouTubeで洋楽を聴いて育って、ラップを始めた世代という感じだね。センスのいいリスナーが、自然とプレイヤーになったというか。

YOUNG JUJU USだとヒップホップで認められるとポップミュージックとして音楽的にすごく評価されますよね。でも日本だとヒップホップで認められてもそこで終わりというか。やっぱり俺らは、USのヒップホップから影響を受けてるし、USみたいに評価されたい。ギタリストやドラマーに「こいつらはリアルだね」って思ってもらえるようなラッパーでいたいんです。音楽家でありたいというか、ナメられたくないというか。その意味で、音に対するこだわりは日本の他のラッパーよりあると思います。俺らはヒップホップシーンだけじゃなく、ロックの人のところに行ってラップもするし、そういう活動をしていきたいです。


ーIOくんは映像も作ってたりするけど、自分たちをクリエイター集団だと思う?

IO 俺はヒップホップが一番かっこいいと思ってます。でもかっこよければいいというか。クールでいたい。ただそれだけです。でもサラリーマンだってタフだと思うし、俺には絶対に勤まらない。家族のために生きるのも素晴らしいと思う。つまり自分の幸せは自分で決めるっていうスタイルです。

YOUNG JUJU そうだね。あとかっこよさって、ファッションとかそういうことじゃなくて、マインドの問題で。たとえ服がダサくても、電車で女の子に席を譲ってたら、それはかっこいい。もう人として最低限のことだけど。


アルバム作りは本当に大変 | DONY JOINT


ーみんなは音楽以外の仕事はしてるの?

DONY JOINT 俺はソウルバーで働いてます。

YOUNG JUJU 俺も服屋でちょっと。でも最近音楽の仕事のほうが増えてきたよね。

IO 俺はベッドかスタジオそれかステージの上にいます。


ーKANDYTOWNはコアなクルーだと思うんだけど、ファッション業界から注目されるのが早かったよね。

IO 自分たちからアプローチした訳では無いんですけど、UNITED ARROWS & SONSでPOGGYさんと一緒にやらせてもらえて、それで一気にファッション業界の人にも知ってもらえたというのがありますね。


ー今KANDYTOWNの1stアルバムを制作中なんだよね?

YOUNG JUJU まったく未知すぎて、逆に楽しいって感じですね。


ーどれくらい完成してるの?

YOUNG JUJU 20パーセント。あと、俺とDONYがソロを作ってるんですよ。本当は夏に出す予定のKANDYTOWNの1stアルバムの前に同じタイミングで発表する予定なんだけど、俺が間に合わなそう……。


ー2人はKANDYTOWNのアルバムを作りつつ、ソロも作ってるんじゃ大変だね。

DONY JOINT 本当に大変です。


ーJUJUくんは『KOLD TAPE』『BLAKK MOTEL』はあくまでミックステープで、ちゃんと1stアルバムはまた別のクオリティのものになるって言ってたよね?

YOUNG JUJU 言ってましたね。言ってましたけど、たぶんそんなに変わらないないです(笑)。あんまりかっちり決めすぎても俺ららしくないし。


ーIOくんは1stアルバム『Soul Long』作ったとき、最終的に時間がなくなってきて一ヶ月くらいで集中して作業したって言ってたよね。アルバムもそんな感じなりそう?

IO いや、あれはやめた方がいいです。

DONY JOINT 追い込みがすごかったよね。

IO ぼーっとしてたら2人も今にそうなるよ。



どうだった? ちょっとKANDYTOWNのイメージ変わったでしょ? スマートでクールなんだけど、ユーモアがあって、実は真面目。これからもKANDYTOWNの動きはチェックしといたほうがいい。ちなみにKANDYTOWNの1stアルバムはOKAMOTO'Sのオカモトレイジが制作ディレクターを務めるんだって。ここも和光高校コネクション。どんなことになるのか、超楽しみだね。


photographer : 高木 康行 / YASUYUKI TAKAKI

撮影協力 : BUILDING fundamental furniture

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