アニエスベー企画でThe Raptureルークが初のソロを披露

いろいろなイベントが日夜繰り広げられる東京を生活圏にしていると、唐突に思いもよらぬ誘いを受けることがある。

大学時代に好んで聴いていたバンドの1つ「The Raptureのボーカリスト・Luke Jenner(ルーク・ジェナー)のソロライヴがあるからレポしない?」と誘いを受けたのはイベントの1週間前。


しかもルークがソロで人前でパフォーマンスするのは今回が世界初なのだという。そんなエクスクルーシヴなイベントの企画をしているのは、アニエスベー。『キオスク』という名目で3月から毎月第二水曜日にキュレーターを招き、完全フリーでアーティストのパフォーマンスをしているというのだ。

第4回となる今回のキュレーターにはインディーズプロダクション会社のPetit kokoro(プティ・ココロ)。彼らのブッキングで今回の貴重なイベントを開催に漕ぎ着けたようだ。


6月8日。やってきたのは「アニエスベー銀座 Rue du Jour店」。複合ショッピングモールのなかにあるアニエスベーの店舗に行ったことは何度もあるけど、路面店にいくのは今回が初。一流ブランドが立ち並ぶ銀座通りでもブランドロゴが目立っている。

入り口にはしれーっと本日のイベントの看板が(笑)。今回のライヴ会場となるのは3F。


開場時間の6時半を少し過ぎた頃、恐る恐る2Fに足を踏み入れるとそこには既に長蛇の列が。先着で今回のイベント用に特別に作られたMIX CDもあったみたいなんだけど、ゲットできなかった。残念……。


2Fではアニエスベーの象徴でもあるボーダーTを着たスタッフさんがフリードリンクを振舞ってくれる。貴重なパフォーマンスを見られる上に、ドリンクまで。なんて贅沢だ。

お酒を受け取り3Fのフロアに行くと、今回のフライヤーが陳列されている。

イベント会場には既に目算で100人ほどのお客さんの姿が。開演を今か今かと待ち望んでいた。しかも会場はアーティストとの隔てもないフラットな空間。

何万人の前でパフォーマンスをしているルークをこの距離で体感できることにそわそわしているお客さんもいた。


程なくしてルークが登場。会場に歓声が湧く。The Raptureとして最後にリリースしたアルバム『In the Grace of Your Love』から表題曲を手はじめにプレイ。


ギターを爪弾く姿を固唾を飲んで見守る。『How Deep is Your Love』そして、『Sail Away』とThe Rapture時代のダンサブルな楽曲を右足でリズムを静かに取りながら弾き語る。


バンド形態のミュージシャンのソロパフォーマンスを見ると、そのバンドの楽曲が持っている別の一面に気付かされることが多い。

今日のイベントでいうと、ルークのファルセットはなんて美しいんだろうとあらためて思い知らされたり、シンプルなギターと歌声だけの表現だったこともあり、歌詞のナイーヴさが際立って聴こえたりもした。

そしてなによりもメロディーに普遍性がある。ダンサブルなリズム隊がないことでメロディーが際立ち、Raptureの楽曲は優れたものであるとまざまざと認識させられた。


「オッケー。今日はこんな感じだよ。今から少し休憩にはいるから、お酒をもらいに行ってきなよ」

3曲ばかし演奏を終えてはにかみながらルークが語りかけると、緊張で張り詰めていた会場から笑い声が漏れる。

5分少々の休憩時間ののちに設けられたのが、Spincoaster保坂降純氏を迎えてのインタビュー。

The Raptureは解散しちゃったの?」という皆が気になる質問には、

「レーベルが解散という風に先走って言ってしまったんですけど、バンド側があえて何も言わなかったのは、ミステリアスな感じがしていいかなと思って」と回答。

さらに「ドラマーで親友のビトが音楽活動を今したくないというので、彼が活動したいとなったときに再開しようと思う」という言葉も飛び出した。

つまり解散はまだしておらず、時がくれば活動再開するということのようだ。復活のときを楽しみに待ちたい。

後半も最新アルバムから『It Takes Time To Be A Man』『Roller Coaster』などを披露。

最近では彼のヒーロー、Talking Heads のデヴィッド・バーンが行う世界ツアーでのプロジェクトに携わっていることもあるのだろう。声を抑えて、静かに歌っていたが一音奏でるだけで空間を彼の手中に収めるような圧倒的なパワーがあった。

——予定時刻を少し超えて、20分以上演奏しただろうか。

立ち上がり感謝の言葉を述べるルーク。会場からは暖かな拍手が送られていた。気づけば人はさらに増えており、店内を埋め尽くすほどだった。


終了後、ルークと談笑していたアニエスベーのクリストファーさんに開催の経緯について聞いてみたところ、3月のMitsu the Beats ×Green Butter & MARTREが出演するイベントにPetit kokoro代表のエドゥアールが遊びに来てくれたことがきっかけにイベント開催にこぎつけたそうだ。


しかも7月からの3カ月間は、渋谷・スペイン坂のライブスペース「WWW」の今秋にオープンする新店舗「WWW X」がキュレーターを務めるという。


ファッションブランドでのイベントはライブハウスとは違ってかしこまった気持ちになるけれど、こういう空間でしか味わえない感覚があるのは間違いない。

次もふらっと足を運んでみたいと思わせる貴重なイベントだった。

photographer: Yuya Eto / 江藤 勇也




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