フードポルノなんて言葉がフォーカスされる一方で、海外ではレシピ本やレストランガイドとは一線を画したアーティスティックな「フードマガジン」なるジャンルが花盛り。
洋書屋でもかなりのスペースが割かれ、数多くの雑誌が陳列されている。
特徴的なのは、「食」そのものよりも「食文化」にフォーカスしている点。美食と食文化を語る食べ物マガジンがレシピを有する必要なんてない--という考えから生まれたFoodならぬ「Fool Magazine」はその代表選手か。
一見、食に関する雑誌には見えないし、中を見れば、グラビアページでスターシェフが俳優みたいなポージングをキメている。
ただ面白いと思う一方で気に食わないところもある。なんかKinforkに通ずるスノッブな感じが鼻について。一見、「上質な暮らし」系のスナップ写真なんだけど、じつは限りなくそのテンプレ感をおちょくっているタンブラー「THE KINSPIRACY」のように。
そんな中でも、たかが食事、されど食事...そんな奥深さを感じさせてくれる2冊を紹介します。これは読んでおいて損はない。たとえ英語がわからなくても、気持ちで通じる何かがある(笑)。
ひとつは“MUSIC AND FOOD MAGAZINE”というサブキャッチがついたその名も「MOOD」。二つの「O」が、アナログレコードのドーナツ盤とハンバーガーを模しているのがかわいい。高級料理とかハイエンドのオーディオ機器じゃないチープな感じで。
元はベルギーのブリュッセルで生まれたが、今はニューヨークに拠点を置く季刊誌。ISSUEごとに世界中を旅し、音楽や食べ物が交差するストーリーとエッセイを提供する。メイン・コンテンツはその街のインディペンデントな音楽とレストラン、ちょっとタウンガイド的なニュアンスもある雑誌。
音楽と食のコンビネーションは無理やりな感じもするけれど、ファウンダーのコメントが面白い。「食べものに関心を持ったり、仕事にしたりしているミュージシャンって意外なほど多いんだよ」。たしかにCASSANDORA JENKINSがトースト料理を紹介していたり、ミュージシャンの作る料理はプロ顔まけ。
「それに音楽も食もハイアートじゃダメだろう。もっと庶民の側にあるべきだろ。そこが共通している」。スノッブなアート系のフードマガジンを否定していて爽快。たしかに、そうあるべきだ。
もう一冊は、「The Gourmand」。ロンドン発のフード・ジャーナルマガジン。けっこう格調高いんだけど、好きなミュージシャンがたくさんでてくるところが気にいった(笑)。
オノ・ヨーコのアートと食の関係性についての論考から、無音の楽曲『4分33秒』で前衛音楽の父としての地位を確立した作曲家・ジョン・ケージのもうひとつの顔、キノコ研究家としての側面などなど。
でも、なにより驚いたのは、スティーブ・アルビニが、韓国料理のエッセンスを取り入れたオリジナルレシピを紹介していた記事。ファンの間では有名らしいけど、かなりの料理愛好家らしい。かつて「レイプマン」という日本のコミックからパクッた名前のバンドを結成して物議を醸し、ニルヴァーナのラストアルバムをプロデュースした人物ですよ。なんか意外。
さて、日本でこうしたインディペンデントな「フードマガジン」を、最初にはじめるのは何処になる? 興味津々。
source : http://www.bonappetit.com/trends/article/indie-food-mags
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