「コーヒースタンドはメディア」って考え方

2〜3年前くらいからコーヒーはなんとなくイケてた。

いわゆるStarbucks的なアレじゃなくて結構専門的なやつのほう。でも僕はこのコーヒームーブメントとの適切な距離感を見出せなかった。だって流行ってるからってコーヒー好きをインスタでアピるのもダサいじゃない? でも美味しいコーヒーは好きだし? みたいな。だから編集部に「池尻大橋コーヒータウンフェスティバル(以下、IOCTフェス)」を取材してきてほしいと言われた時は、正直「困ったなあ」って感じだった。

「IOCTフェス」は東急線・池尻大橋駅周辺にあるコーヒー専門店7店舗(「Bubbles Chill Coffee」「GOOD PEOPLE & GOOD COFFEE」「JAM STAND COFFEE」「PARADISE TOKYO / WACKO MARIA」「P.N.B. COFFEE」「STARBUCKS 池尻2丁目店」「The Workers Coffee & Bar」)が、2016年3月12、13日に東京・The Worksで開催したコーヒーイベント。この7店舗が共通で使用するハッシュタグ「#池尻大橋コーヒータウン」をリアルに落とし込んだものというわけ。

会場に着くとすでにコーヒーのいい香り。まだ午前中だけど、人はいっぱい。イラストレーターのワークショップをやってたり、ソウルやヒップホップがレコードでかかってたり。ふむふむ。あれ!?、、、そんなに嫌じゃない。居心地いいな……。なんだこれ? 僕は早速、このイベントの発起人である「GOOD PEOPLE & GOOD COFFEE」の池田誠さんを捕まえて話を聞かせてもらった。


ー池田さん、こんにちは。このイベント、日本で一般的に知られているコーヒー文化とは違って、すごくストリートカルチャーの香りがしますね。


今回参加してくれたコーヒー屋さんは豆や味に独自のこだわりを持っていることに加えて、「コーヒー+α」の要素を持っているんですよ。例えば僕がやってる「GOOD PEOPLE & GOOD COFFEE」だったら「コーヒー+アート」、「PARADISE TOKYO / WACKO MARIA」だったら「コーヒー+音楽、ファッション」とかね。僕はその「+α」の要素にこそ面白さがあると思う。コーヒーを楽しんでる人たちは、自分のライフスタイルの中にコーヒーを取り入れてる人たちだと思うから、だからこそより「+α」の要素を重要視しています。

ーあ〜、なるほど。この居心地の良さは、フェスが提案してる「+α」が僕のバックグラウンドとマッチしたからなんだ。


あははは(笑)。バックグラウンドって大事だと思うんですよ。うちのオリジナルブレンドに「JOHNNY B.GOODE」っていうのがあるんですけど、これはもちろんチャック・ベリーからとっています。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でもおなじみの曲ですが、あの曲は本当に時代もジャンルも超えたクラシックなんです。このブレンドもそうなってほしいという思いでこの名前を付けました。


ーさっぱりしてるのにコクがあって、すごく美味しかったです!


僕にとってコーヒースタンドはただコーヒーを提供する場所ではなくてメディアなんです。僕はもともと雑誌などで編集の仕事をしていました。当時は不特定多数の人に向けて一方的に情報を発信していましたが、今はコーヒースタンドで情報発信をしながら同時に僕自身も情報をキャッチすることができています。だからすごく面白いですよ。自分たちがハブになって次の新しいものが生まれてほしいですよね。コーヒーを切り口にしたメディアという。


ー「IOCTフェス」はすごく盛り上がってますね。スタンプラリーも好評みたい。WEBから派生したリアルイベントって大体は過疎ってるけど「IOCTフェス」は全然違います。


それは池尻大橋という街がコンテンツとして魅力的だからだと思います。でも、ここ(池尻大橋)って基本的に通過されちゃう街なんですよ。渋谷から1駅なのに街として注目されるのはいつも三軒茶屋っていう(笑)。でも実は美味しいコーヒー屋さんやパン屋さん、レストランとかいろんなものがあって。住んでる人たちもすごく品が良いし、都会ならではの窮屈感もあまりなくて親しみやすい。おまけに中目黒にも近いっていう。まずコーヒータウンという切り口でこの街をもっと広めたい。拡めるには実績が必要だから、このイベントをやることにしたんです。


ー日本のコーヒータウンとしては清澄白河が有名ですよね。


うん。清澄白河の状況はよく知らないんですが、池尻大橋に関しては7店舗がそれぞれ横で繋がってて、実際に仲もいいからなんです。だったら「みんなで協力して街ごと盛り上げていこう」ということでハッシュタグ「#池尻大橋コーヒータウン」を作りました。


ー今後「#池尻大橋コーヒータウン」をどうしていきたいですか?


池尻大橋にもっといろんなコーヒー屋さんができてほしいです。一緒に盛り上げたい。


ーでも大企業とかが参入してきたら、お客さんの取り合いになるんじゃ?


う〜ん……。僕はそのデメリットより、相乗効果によるメリットの方が大きいと考えていて。池尻大橋で初めてコーヒー専門店を始めたのは僕らなんです。その後に「Inspired by STARBUCKS(現:Neighborhood and Coffee)」がオープンしましたが、僕はウェルカムでした。実は「Inspiered by〜」の石津さんは、「Inspiered by~」がオープンする前からうちのお店のファンになってくれて、何度も来店してくれました。そしてオープンの頃には仲良くなったのを覚えてます。それから2年くらいで池尻大橋駅周辺に7つもコーヒー屋さんができたんです。すごくうれしい。もっと増えてほしい。お客さんが、今朝はこのお店、夜はあのお店、明日の朝はそのお店……って感じで、いろいろ選べるようになれば理想的ですね。でも一番大事なのはどのお店に行っても居心地がいいってことだと思いますよ。

コーヒー、奥が深すぎる。てか、池田さんのビジョン、明確でヤバすぎる。ちなみに「#池尻大橋コーヒータウン」は今後も“いろんなところでいろんなことを企画中”だそうなんで、池尻大橋近郊以外の人も楽しみにしてるといいんじゃないかな? もちろん池尻大橋まで来てコーヒー屋さんを巡るのもいいと思うよ。


“コーヒー+α”って最高なスタイルだよね。


photo by TETSUTAROsaijo

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