スパイク・ジョーンズの盟友、ケイシー・ストームのバンダナ

Kazumi

ギズモード・ジャパン、ルーミー統括プロデューサー / クリエティブディレクター。
元SILLY(サイバーエージェント)、ギズモード編集長。MTV JAPANディレクターなどなどを歴任。

さりげなさ、というかだらしなさスレスレ。そこがカッコいい。

SILLY的にイケてるファッショニスタを紹介したい。

アカデミー賞脚本賞を受賞した『her/世界でひとつの彼女』で見事としかいいようのない近未来リアル・クロージングを演出した衣装デザイナー、ケイシー・ストーム。

そのキャリアは、親友であり監督のスパイク・ジョーンズと二人三脚で歩んできたものだ。同監督の出世作(というより「jackass」や初期VICEに通じるアメリカンでおバカな悪ふざけノリの元祖)といえるビースティ・ボーイズのミュージック・ビデオ「Sabotage」(1994年)の頃からの付き合いというからかなり長い。

しかも、特に専門学校でファッションの勉強をしていたり、有名スタイリストのアシスタントをつとめていたというわけでもなく、たまたまスパイクに勧められたというのがキッカケだというから驚きだ。


“ 昔から洋服が好きだったけど、ファッションスクールで学んだわけではないんだ。20年以上前にスパイクと行ったバースデー・パーティで、カメラマンの女の子が撮影のスタイリストを探しているって話していて、「スタイリストって何?」って聞いたらどういう仕事か教えてくれた。

そしたらスパイクが「ケイシーがやるべきだ」って。「あなたスタイリストなの?」って聞かれたから「洋服は大好きだよ」って言ったら、「いいね、やってよ」ってことになった。

2週間後、スパイクから「あのファッションの仕事やった?」って電話がかかってきて、「次はミュージックビデオの仕事しない? 300ドルしか払えないけど」って言うんだ。「イエス! 300ドル!」って思ったよ(笑)

それでフィッティングに行ったら、そこはビースティ・ボーイズのヤウク(アダム・“MCA”・ヤウク)の家で…それは「Sabotage」のミュージックビデオだった。あのビデオでいろんな賞にノミネートされて、そこからキャリアが始まったってわけ 

( from ライフスタイルメディア ROOMIE )


スパイク・ジョーンズの作品にとどまらず、マイケル・ジャクソンのミュージック・ビデオの衣装を手がけるほどワールドワイドな名声を得てきた彼だが、何より普段の、かなりわかりにくいレベルでハズシをきかせたコーディネイトに惚れ込んだ。ファッションアイコンというよりは根っからの「服好き」だというのが伝わってくる。インタビューでも服そのものよりも、その背景にある歴史的、文化的なうんちくが多く、それもいたく共感する。

特にヘタクソ、いや無造作に巻かれた首元の青いバンダナ。ここ数年、バンダナは明らかに流行っていて、有名ブランドがバンダナをリリースしたり、ロンハーマンのオリジナルライダーズの裏地がバンダナだったり、レディース向けにシルクのバンダナも多くみかけるようになっている。この夏はさらにうじゃうじゃ増えそうな予感がする。しかし、このケイシー・ストームのちょっと結び目がずれた、どこか場外馬券売り場あたりをうろうろしてそうな、泥臭いのにカッコいい着こなしには誰も叶わない。

GUNZEみたいなおとうさんっぽいアンダーシャツと、バンダナの狭間からみえる無防備な素肌も最高だ。それで、いつしか心の中で彼のことを“バンダナ師匠”と呼ぶようになっていた。

というわけで、いつしか僕もヴィンテージのバンダナを集めはじめた(家族からは同じものにしかみえないと揶揄される)が、未だケイシーの領域に近づけない。なにかが違う。というより、そもそもバンダナって何?  ゆえにバンダナを研究する旅にでることにした。名付けて「2016年バンダナの旅」。なんのひねりもなし。最後はケイシーに辿り着きたい(つづく)


※ケイシー・ストームの写真はすべて『her/世界でひとつの彼女』の来日取材の際に撮影したもの。

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