DIARY FICTION | 01

今日は雨だった。恋人と雲を観察した。傘などない。空からポタポタ垂れてくる、雪になりそこなった水。油の匂いがする。そういえばポケットに入ってた万券は、雨が染み込んで溶けた。


ただ寄り添ってるだけ。つがいのインコみたい、あの頃から進歩はない。付き合いが長いと大抵の話題はもう話し尽くしているのだ。みんなが騒ぎ立てるような世界の変化は、僕らを中心とした半径1mにおいて感じられたことはない。


大人の真似をしてた子供や、子供の真似をしてた大人はもういない。あの頃を思い出すと寂しい気もするが、彼らがいなくても日々の生活に困ったことなどない。


今日はなんとなくトランシーバーにノイズが混じりやすい。気がする。ヒトは道具がないとやってけないダウン症のサル。文明が滅んでもコンピューターで仕事しなくちゃいけない、これ不思議。変わったのは時間の進む速さだけだ。もも色の雲しか空を流れない、ここはブランキージェットシティ。明日は昼まで寝ていたい。

(illustrated by SHUN , text by TETSUTARO)

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