The xxのVo.オリヴァーに、モデル・菅野結以がインタビュー | 前編

内省的でナイーブな美しさ、アンニュイでメランコリーな音世界。選び抜かれた音だけが鳴る“引き”の美学で、だれにも似ていないモノクロの光を放つバンド、The xx(ザ・エックス・エックス)

近年ではバンドのブレインであるジェイミー・XX(key/p)のソロ作品リリースが大きな話題を呼んだことも記憶に新しいが、バンドとしては約4年半ぶりとなるサードアルバム『I See You』が、2017年1月13日(金)にリリースされる。独自の世界観で、デビューから瞬く間に世界を虜にしたロンドン出身の若き3人組が、またひとつ、これからのシーンにとってのマスターピースを生み出すのだ。


SILLYでは、2016年12月6日に、豊洲PITで一夜限りの来日公演を行ったメンバーのオリヴァー(Vo.B)に話を聞くことができた。新作に宿る今までにないポップで開かれたムードの理由や、3人の仲の良さが伺えるエピソードなど、終始笑顔で語ってくれたインタビュー。

インタビュアーは、ミュージックラバーとして知られるモデル、菅野結以。モデルやブランドプロデューサーという肩書きの傍ら、ミュージシャンが紡ぎ出す音の世界を彼女らしい方法で伝えてきた。以下のインタビューに見られる、パンチラインだらけのオリヴァーの台詞は、音楽への愛に溢れた彼女だからこそ引き出せたものだろう。

本日は貴重なお時間をありがとうございます。取材が続いていて忙しいと思うのですが、東京でなにか楽しめたことはありますか?


オリヴァー・シム(以下、OS) なんと明日は丸1日オフなんだよ! ツアー中はいろいろな国に行けるから、いいことづくしなんだけど、せっかく素晴らしい場所に行けるのに時間がなくてあんまり観光することができないのが残念で……。でも(強調しながら) 今回は友達にも一緒に来てもらっていて、しかもツアーガイド付き。ジェイミーなんかレコードのために予備のスーツケースを持ってきてるんだよ。今はもちろん空だけれど、明日の夜にはレコードで一杯になるんだろうな。 


オリヴァーは明日なにをする予定? 


OS 僕はクリスマスショッピングをするつもり。特に、東急ハンズはマストだね(笑)。あとは、とにかく街を歩きたいと思っているよ。渋谷しか見たことがないから、他の街に行って東京をもっと味わいたいな。そういや、ここの部屋ってすごいんだよ! 今朝起きたら寝室の窓から富士山が見えてすごく感動しちゃった。だってびっくりするぐらい大きいんだもの。 

2017年また日本に戻ってくるよ


楽しんでいるようでよかったです。私が初めてThe xxのライブを見たのは2014年のフジロックで、個人的にも年間のベストアクトといえるくらい素晴らしいライブでした。それからずっと日本に来てくれるのを楽しみにしていたので、今回の来日ライブはその3年分のエモーションが爆発するようなうれしい瞬間だったんです。それはあの日、会場にいたみんなも同じだったみたいで、ライブではオーディエンスの熱がすごく高かったと思うのですが、それはオリヴァーもステージからも感じとれました? 


OS もちろん! 静かな曲のときはみんなしっかり音に耳を傾けてくれているのが分かったから、正直いうと少し緊張してしまったり怖くなったりもしたんだよね。でも、アップテンポの曲のときは踊ってくれたりして、みんなと一体化しているのを感じてすごく楽しむことができたよ。実は、今年はまだ6回しかライブをやっていなくて、ライブの内容もリリース前の新曲を少しだけ披露してみたりして、まだまだ実験的な段階なんだよね。でも、これからツアーをしていくにつれてどんどん進化していくと思うから、来年また日本に来て、今回よりもよりダイナミックなセットでみんなに披露したいと思っているよ。 


すごく楽しみです! あの日のライブで印象的だったのが、オリヴァーとロミーがチークダンスをする場面だったのですが、あれはだれのアイディア? 


OS あはは。あれはね、ステージではジェイミーが自分のソロ曲をプレイしていて、僕たちは楽器を持っていなかったし演奏するわけでもなかったから、ちょっと恥ずかしくなって僕が隣にいるロミーを捕まえてダンスを踊ろうとしたんだよ。もし楽器を持っていたらそれに隠れることができるからいいんだけれど、そういうわけにもいかなかったからさ。 

喜びとハートブレイクの二面性を

新アルバムは備えている


すごくかわいらしかったです。あの日のライブをみて、改めてThe xxはカタルシスのバンドだと感じました。悲しい気持ちやメランコリックな気分をダンサブルなビートにのせることで、魂が解放されていくような……。だから聴いていて気持ちが高揚するんだなと思ったのですが、オリヴァーもライブで歌を歌っているときに、そのような魂の解放を実感したりしますか?

 

OS そうだね、僕はダンスミュージックが好きなんだけれど、ほら、クラブで踊って楽しんだ曲を、家でじっくり聴いてみると、実は失恋の曲だったりすることってあるじゃない!? 悲しく感じる音楽が、ただ悲しいだけじゃなくて、そこにコネクションをもたらしてくれたりそれによって強くなれたりとかね。そういう効果もあるから、二面性を備えた音楽ってすごく素敵だなって思うよ。今回のアルバム『I See You』も、喜びとハートブレイクな部分の二面性を備えたものに仕上がったと思っていて、すごく手応えを感じているよ!

自分たちのサウンドに
自信を持つことができて
恥じらいがなくなった


1月に発売するニューアルバム『I See You』を聴いて、これまでの内省的な美しさはより深く大きい広がりを見せ、さらに最もポップに開けた作品だと思いました。聴いていてこれまでの作品との変化を強く感じたんですが、なにか心境の変化があったのですか? 


OS そうだね。ファーストアルバム『エックス・エックス』は、専門的な知識はあまりなかったし、僕たちの限界のなかで制作したアルバムだった。そして次の『コエグジスト』は、1枚目をリリースした後でオーディエンスの反応を見ているから、みんなが僕たちになにを求めているかっていうのが分かったんだよね。だからそれを意識しながら作った作品だったといえると思う。

それでいうと今回のアルバムは、期待とかそういうことをすべて取っ払って、自分たちが聴きたいと思うものを楽しみながら作ることができたんだよ。これまでの経験を踏まえたうえで、The xxだからこういうサウンドじゃなければならないっていうことにも捕らわれずに、全部自分たちのサウンドとして取り込んでしまえばいいと思えたし、そのことにすごく自信を感じていたんだよね。それができたから、今回の作品はどの曲もサウンドで冒険ができた。

ポップな要素に関しては、僕らがバンドとして経験を積んで自信がついたことで、ポップミュージックに対して自分たちの愛情を見せることが恥ずかしくなくなったからといえるかな。好きなことを素直に見せることができるっていうか……。そこに気付いてもらえたなんてすごくうれしいな! 

大会場でプレイした経験が活きて

今のサウンドが生まれた


これまでの作品よりスケールが格段に大きくなって、まるでスタジアムのような大きな会場で演奏している画が頭に浮かんできたんです。大きな会場でプレイすることをイメージしたりして作ったりしたのかがすごく気になっていて。 


OS それはナイスだね。ほら、前作の『コエグジスト』のアルバムツアーで、いろんな会場で演奏をしたじゃない? スタジアムやフェスなどの大きな会場でプレイするときはオーディエンスに届くように、音も場所に応じて変換しなければなければならなくて、ツアー中にどんどん奏でるサウンドが変わっていったんだよね。だからプレイしていて親密さを保つのが難しかったんだけれど、そのときの経験が今回活かされて、そういうサウンドを作ることができたんじゃないかと感じているよ。


ライブのラストで新曲“オン・ホールド”を演奏したときのオーディエンスの熱狂もあの日のハイライトのひとつになっていたと思っていて、発売前の新曲でこのようなことが起こるのはとても珍しいと感じました。


OS あの瞬間は、僕たちにとっても印象的だったなぁ。普通ライブで発売前の新曲を聴けるなら、静かにじっくりと鑑賞するのが一般的だと思わない!? だから今までのライブでも、オーディエンスは真面目に聴いてくれていることが多かったんだけれど、演奏した途端すぐにみんなが踊りはじめてリアクションをしてくれたから、うれしくなって興奮しちゃったよ。 


<後編に続く>


The xx - On Hold (Official Video)

Interviewer:菅野結以 / Yui Kanno

Photographer : 古渓一道 / Kazumichi Kokei

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