「ラップ続けてると、いいことあるよ」 YOUNG JUJU ソロアルバム前夜 | 後編

満を持して登場したYOUNG JUJUのソロアルバム『juzzy 92’』。直前にはKANDYTOWNのメジャーデビューアルバムも発売され、注目が集まっているタイミングでのリリースだ。今まで(もちろんこれからも)“KANDYTOWNのYOUNG JUJU”であった彼にとって、ソロアルバムはどんな意味を持つのか。

KANDYとソロでは考え方が違う
でも、両方とも仲間がいないとできない


「KANDYの延長線上っていうのとはまた違うのかも。違うって言われるかもしれないですね。KANDYではもう少しサクッとしたものになってて。っていうのは、コンセプトとかあんまり決めたりしないので意味を入れすぎると周りが合わせづらくなって迷惑がかかるし、リズムとか次の人のことを考えながらやってるから。リリックも15分くらいで書くし、絶対撮り直しとかもしない。その場の勢いとかムードを大事にしてやってる。でもソロアルバムはちょっとでも気に入らなかったら撮り直すし、もっと突き詰めてますね」


自分がハンドルを握らないといけない場面が多くなっていたなかで、バランスを保つにはKANDYTOWNの仲間が必要だった。


「他の人は分かんないけど、俺にとっては仲間がいないとできないと思いました。やっぱりそれが日常だし、帰ったら相談できるやつがいて、怒ってくれるやつがいて。自分がちょっとずれても戻してくれるっていうか、バランスを保ってくれている。基準みたいなものですね。なくちゃいけないなっていうのは一人でいるときのほうが感じる。もちろんKANDYだけじゃなくBCDMGやP-VINEもそうだし、支えてくれる人に感謝しないといけない。音楽をやらせてもらってることにもっと有り難みを感じないといけないって思いました」

環境によって変わらなきゃいけないこと
変わらずにいたいこと


やってきたことが認められれば規模も大きくなっていくし、遊びの延長だった音楽は、自分を生かしていく“仕事”になる。メジャーデビューを果たしたからこそ、“変わらないといけない”と感じることは増えてきているという。


「気負いみたいなものはあると思いますね、すごく。うん、いっぱいあったな。なんていうか、適当に曲が作れなくなったっていうのは、、あるかな。ちょっと人んちに寄って曲を作るとかそういうのがなくなったし、やっぱり全国の人に聞いてもらいたいっていう思いもあるし。もっと価値を持たせるというか、しっかりやんなきゃいけないと思いましたね。才能ないんでその分ガッチリ考えないと俺にはいいものできないんで。

KANDYのアルバムが出るいいタイミングでソロを出させてもらったと思うし、KANDYに対する義理みたいなものもあったから。今回は本当に周りの人が動いてくれてるのが見えたから、この人たちを裏切れないなって思ったのが一番ですね。それが気負いでもあったし、力にもなったし。自分がしっかりしないとっていうのはすごく感じましたね」


名前が大きくなればなるほど、自分自身をプロデュースしないといけない。でも、自分以上の何かを目指すわけじゃない。ラップやヒップホップには、それぞれのスタイルがある。足もとを見失わなければ、迷うこともない。


「最近はそういうことも考えます。例えばこういうインタビューでもタメ口で話すとか、そういう見せ方もあるじゃないですか。かっこつけることも大事だと思うけど俺らはそういうんじゃなくて、本当に街にいるグッドボーイだと思ってる。東京が地元だから友達や友達のお母さんとかも街にいるし(笑)、そんな環境で嘘ついてらんない。ありのままでいようって。俺はやっぱりちゃんとしたお父さんになりたいんですよ。普通のお父さん。昔っから知ってる女の子と結婚して、子供ができて、家族がいて、ラップしてっていうのがかっこいい。大事な人に金が渡せて、頑張ってるよってやるのがヒップホップだと思ってるから。それはB.D.さんを見ててすごく思った。YUSHIとかIOくんもそうだし、そういうまっすぐな人、周りにいる人の影響が自分のなかでは一番強いんだと思います」

ラップを続けてきて良かった
人生の指針になった大事な言葉


これからのことを考えたとき、指針になるような言葉があるかないかでは生き方が変わってくる。自分にとっての“かっこいいラッパー像”を教えてくれたB.D.さんや仲間からもらった言葉は、今でも覚えているそう。


「19歳のときに、B.D.さんに『ラップ続けてると、いいことあるよ』って言われたんですよ。それがずっと自分のなかにあって、やっぱり続けるってなんでも力だなと思うようになった。当時は本当にガキで社会を知らなかったから、言葉づかいや仕事に対する姿勢を学ばせてもらってました。今こうやってラップやってても、その言葉がすごく残ってるし、毎日やんなきゃいけないことをやると、大変でもいいことあるなって。ラップを続けてて良かったと思うのはそういうことですね。あとは、IOくんに『一回作ったクルーとか仲間は裏切んなよ』って言われたのが16歳くらいのとき。それもよく覚えてますね。例えばKANDYをやめて新しい人たちとやるとか、それはフェイクでしかないっていうのが俺のなかでのルール。きっとKANDYはみんなそうだと思うけどね。ヒップホップって、"音楽をやるためだけに集まった仲間"とやるもんじゃないと俺は思ってるから。そういう言葉は大事にしてます」

YOUNG JUJUとファッション
そのスタイルはどこから?


今回はソロアルバムにフォーカスしてインタビューしてきたが、KANDYTOWNを語るうえでファッションは欠かせないカルチャーのひとつ。今までSILLYではあまり聞いてこなかったファッションやスタイルについて気になる質問をぶつけてみたので、デザート的にどうぞ。


―もともと洋服は好きだった?

「洋服が好きっていうか、かっこつけることが好きだったから洋服が好きになったんだと思う。でも中学ぐらいからこういう服を着てたし、基本は変わってないと思いますね。中3くらいで一回落ち着いたときがあって、今はその前に戻ってきた感じ。俺、中1とか中2の頃すごいいじめっ子だったんだけど(笑)、中3のときにはもう考え方が変わって、全員に謝ってまわったんですよ。そのときにファッションも落ち着いて、優しくなったっていうか、前髪とかも垂らすようになっちゃって(笑)。それまではノースフェイスとか着て、34インチとかのデニム穿いてみたいな感じだったんで、今はその頃に近いかもしれないですね。でも当時から色はあんまりごちゃごちゃ入れないとか、そういうのはありました。サイズ感とかは年代でちょっと変わってると思うけど、シンプルな色が好きっていうのは変わってないかな」


―洋服を選ぶときの基準はある?

「まぁ基本的にはシンプルなものが好きっていうのがあって、あとは人が知らないのがいい。アメリカじゃない場所で作ってるとか。例えばロシアとかオランダのブランドとかね。そういうコアなものは好きだったりします。最近はちゃんと質のいいものを買って、おじさんになっても一生着られるようなものを選びたいとは思ってますね。でも、やっぱ自分の身なりに合わないものは付けたくない。ゴールドのアクセサリーとかグリルとか。そんな金もないし、自分に似合うものがいいですよね。例えばボロいアパートでゴールドをジャラジャラつけてるってのは嘘っぽいでしょ。ヒップホップはそういうかっこよさもあると思うんだけど、俺は全部隠さず見せたいから」


―KANDYTOWNはカーハートのイメージが強いけど、自分としてはどう?

「もちろんカーハートっていうブランド自体もともと大好き。でも、やっぱり名前がないときからサポートしてくれている人に対しての感謝の気持ちがすごく強いですね。俺は仲間が好きだから、仲間みんなに着させてくれるって言ってくれるのは単純にうれしい。だから自分たちもできる限り貢献したいと思ってます。やっぱりそこは繋がってるし、ファッションだけ切り離して考えてはない。そういう重みがあるっていうか、意味があって着る洋服も好きですね。ウィズリミテッドとかも、本当にだれも知らないようなときから掘ってくれてて、ショーでかけてくれたりとか。やっぱそういう人に一生かけて恩返ししないといけないなって思ってる。そこが俺にとってのヒップホップっていうか、IOくんとか先輩たちから教わったいいことだから。もちろん、まず単純にかっこいいから着てるんですけどね」


―自分で作りたいとかは思わない?

「やりたいと思うんだけど、絶対できない(笑)。KANDYのメンバーってみんなそうだけど、本当に不器用なんですよ。俺は、曲作ることしかできないってやっぱ思っちゃうし。今はそれしかやりたくないから。洋服作りたいなって思ったりするけど、金が欲しいから作りたいわけじゃなくて、音楽も同じなんですよね。金が欲しいと思って音楽やってたわけじゃなかったから。だから、そういうタイミングが来るまでは洋服とかはやらなくていいかなと思ってます」


―ファッションとは関係ないけど、最後にひとつだけ。だれとでもフィーチャリングできるとしたら、だれとやりたい?

「Jadakiss」


Photographer:柏田テツヲ / Tetsuo Kashiwada

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