お昼すぎ、電話で目が覚めた。NEWSSTAND(ニューススタンド)のマシリトさんからだ。
あっ、NEWSSTANDにピンとこなかったら、いったんこっちの記事から読んでほしい。
「葵産業(あおいさんぎょう)ってお店、おもしろいんで行きません?」
あおいさんぎょう? なんのお店だろう。めっちゃ気になる(笑)。送られてきた住所をGoogle マップに入力して、チャリで向かった。ざっくりした場所を言うと、原宿から千駄ヶ谷エリアへ向かったところ。地図通りに向かっても、たぶん着く寸前で迷うと思う。看板がなく、お店っぽい雰囲気がないから。ビル名を調べて、自力で向かってほしい。古めのビルに入り、2階に上がると葵産業がある。マシリトさんに、店番してるタカシさんを紹介してもらった。
あやしい(笑)。来る前から気になってたけど、何やってるお店なんだろう。
「ファッションから遠く離れた秘境の地で、ものづくりしてます。生活していて、溢れる感情や感覚を形にする作業です。新品のものから古着まであります。古着は輝ききれずに眠っていたものを蘇らせる感覚で、アレンジして販売してます」
葵産業は今年8月末にオープンしたばかり。メンバーは、タカシさん、ケントさん、ショータローさんの3人だ。店内を見渡すと、刺繍されている古着、生活雑貨、雑誌、おもちゃ、カセットテープが置いてある。もちろん、メンバーのケントさんが手がけているブランド『Oh Shit!』のアパレルも扱っている。あとは落書きされたエロ本(笑)。
「店に置いてあるのは、メンバーで集めたり、友達からもらったりしたものとか。このエロ本は、近くのミニストップにめちゃくちゃあって。大量に買って、暇つぶしに落書きしました(笑)。服だけじゃなくて、写真とか生活用品も置いたりして。なんでも屋じゃないけど、服屋さんってイメージではやってないですね。そういったものを少しずつ増やしていきたい」
たしかに服屋さんって感じはしない。店内には魅力的なものがたくさんある。
なかでもやはり目を引くのが、オリジナルで作っている刺繍だ。よく見ると、古着以外のものにも刺繍が施されていたりする。見たことないデザインの刺繍がされていてかっこいい。自分の服を持っていって、好きなデザインの刺繍を入れることも可能だそうだ。
コンプラがかかってしまいそうものもあるけど(笑)。これらは、隣の作業部屋の刺繍機で作られている。
「刺繍機の使い方はケントくんから教えてもらって、みんなで作ってます。刺繍って、入れられる場所とか素材は決まってる場合が多いんですよ。けど、うちは普通だったら入れられないようなところにチャレンジして刺繍してます。ビニール袋に刺繍したときは、はじめドキドキしたんですが、良い感じにできたりして(笑)」
すごい産業っぽい(笑)。葵産業は刺繍だけじゃなく、オンラインショップにも独特の世界観がある。こういうお店ってオンラインショップやらなそうだけど、結構がっつりやってることも不思議だった。
「オンラインショップも完全オリジナルで作ってます。まだ完璧にできてないんですけど。東京のファッションシーンよりは、もっと外側に見せたいってのが自分たちのイメージにあって。刺繍って中国や日本の文化でもあるし、デザイン込みで見せていきたいですね。積極的に東京以外で展示会とかもやっていきたい。パーティーやってたり、音作ったりしてる周りの友達とかと一緒に、みんなで何かやるのが理想的だなって思ってます」
店名に『産業』っていう言葉があるだけに、ものづくりに対するこだわりを感じた。今さらだけど、葵産業の『葵』の由来ってなんだろう?
「もし女の子が産まれたら、葵(あおい)っていう名前をつけたいなと思ってて(笑)。響きとか、『AOI(エーオーアイ)』っていう文字列も良いじゃないですか。あと、メンズだけじゃなくてレディースもあるんで、男女問わず使えるのもいい。それと、"ものづくりをしていく"っていう意味で、"産業"を合わせて『葵産業』になりました」
たしかに、メンズだけじゃなくレディースも置いてある。そして、昔っぽいものも置いてあってオールドスクール感があるのに、どこか未来っぽい。言葉じゃ説明しにくい感じ(笑)。
「"普通のオシャレ感度"の人は、90年代っぽいとか言うんですよね。けど、自分らのなかでは90年代は終わってるって思ってて。コンテンポラリーとか現代のものを、時間軸なしで"すべてのものは一緒"だと考えてます。良いものは良い、みたいな。時代とかよく分かんないっすね。自己満じゃないけど、フレッシュで良いものを生み出して、発信できたらなって思ってます」
なるほど。時間軸なしで考え、良いものを発信したら、自然とこういう雰囲気になったのか。時代にとらわれてない感じが、葵産業のかっこ良さでもある。今後はどんな展開をしていくんだろう。
「今はありものに刺繍がほとんどですが、オリジナルの上下ジャージを製作してるとこなんです。たくさんの服をゼロから作っていきたいですね。愛情のこもった、一生着ることができるような服を。服以外のものも作っていきたいです」
話を聞いて、葵産業は刺繍のお店ではないなって思った。
ものづくりに対するこだわりが、ハンパない。
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