サイモン・ペッグさん、『スター・トレック BEYOND』って面白いの?(シン・ゴジラも語る)

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』も手掛けたJ.J.エイブラムス発信の『スター・トレック』最新シリーズ第3弾『スター・トレック BEYOND』が、ついに日本上陸した。1966年にテレビドラマとしてスタートしてから50周年という記念すべき年に贈られる本作は、主人公たちが乗るエンタープライズ号が大破され、クルーがバラバラになるという前代未聞のシチュエーションから展開する。


脚本を手掛けたのは、人気キャラクターの“スコッティ”ことモンゴメリー・スコット役を演じるUK出身のサイモン・ペッグ。プロモーション来日中にSILLYのインタビューに応じてくれた。本作も含め、コミカルな演技が魅力のサイモンさんだけど、実はすごくクールなアニキだった。映画はスタトレ未経験者でも十分に楽しめるよ!

—日本公開おめでとうございます。本作ではスコッティ役だけでなく、脚本も担当されていますね。冒頭からエンタープライズ号が大破するシーンがあって、かなりびっくりしました。


サイモン・ペッグ(以下、SP) 「エンタープライズ号を大破しようぜ」と言い出したのは、ジャスティン(・リン監督)だったんだ。最初はまったく賛成できなかったよ。ショッキングなシーンにするために破壊するのであれば、それはもう使い古されたアイデアだと思った。『スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!』(1984)でも破壊されているし、新しいエンタープライズ号とはいえ『スタートレック ジェネレーションズ』(1994)でもね。


—そこからどうして監督のアイデアを採用することになったのですか?


SP 実はジャスティンのアイデアは、僕が想像していたものとは違ったんだ。彼は「みんなを一つにつなぎとめているものをバラバラにしてみよう」「彼らをファミリーとしてつなぎ止めているものを取り除いて、何が起こるか見てみよう」と考えていた。エンタープライズ号がなくなった時、クルーの関係がどうなるのかが大切だったんだ。その意図を理解してからは、僕も乗り気だったよ。


—本作ではそれぞれの登場人物に、より人間味を感じました。特にスポックは過去の作品よりも人間性が描かれていましたよね。


SP それはまさに、ダグ(・ユング/共同脚本家)と僕が本作で探求したかったことだよ。僕らはストーリーにそれぞれのキャラクターの私的な体験を取り入れたかったんだ。それにスポックに関しては、1作目(『スター・トレック』)ではカークが強引に彼の人間性を引き出していたし、2作目(『スター・トレック イントゥ・ダークネス』)では簡単に感情を出し過ぎていた気がしたんだよね。


—バルカン人なのに。


SP そう! バルカン人はたとえハーフでも、自分の感情を抑えるのが得意なはずなんだ。だから僕らは、スポックの人間性が自然と表に出てくる理由を用意することにした。感情を抑えることが難しくなるような理由をね。彼が笑ったり泣いたりする姿は、ほとんど見たことがないだろう?そういった部分を描きたかったんだけど、そこにはちゃんと理由があってほしかった。スポックが感情的にもがいていると、なぜか見ていて楽しいんだよね(笑)。


—今年はシリーズ50周年とのことで、なおさらプレッシャーは大きかったのではないかと思います。最大の難関は何でしたか?


SP 『スター・トレック』らしい脚本を書くこと。ただ単にいつものキャラクターが登場する包括的なSF作品ではなく、50年におよぶ壮大な歴史に見合う作品にしたかったんだ。ただのファン映画ではなく、シリーズの歴史において意味のある作品にしたかった。それは難関だったよ。映画を観たファンからポジティブな反応が得られた時はすごくうれしかった。ダグと僕とジャスティンもシリーズの大ファンだからね。


—自分が大好きなシリーズを手掛けるって、きっと勇気が要りますよね。そこに迷いはありましたか?


SP 最初はとても迷ったよ。自分たちがやろうとしていることの影響力の大きさを分かっていたし、正しく成し遂げることが、どれだけ重要かも理解していた。それは時に怖かった…実は制作中に3回は辞めかけたんだ(笑)


—そうなんですか! 最終的に戻ってきてくださってよかったです(笑)。


SP ありがとう(笑)。辞めようとするたびに、J.J.(・エイブラムス/プロデューサー)から長文メールが届くんだ。「サイモン、ちょっとリラックスしてみよう。きっとうまくいくからさ」ってね(笑)。

—ミレニアル世代の読者に、本作を劇場に観に行くべき理由を教えてください。


SP まず何よりも、とてもエキサイティングなところ。それは言うまでもないよね(笑)。それに現代社会にも通じるストーリー。『スター・トレック』シリーズは、いつだって社会を反映してきたんだ。その時代を生きる人々が考えているようなテーマを扱ってきた。


2016年の今は不和と分裂の時代のように思える。そんな時代に、エンタープライズ号とクルーは人類のあるべき姿の手本になると思うんだ。僕らは異なる種族ではなく、誰もがこの地球の住民なんだから、分裂するのではなく団結するべきなんじゃないかな。


とはいえ、とにかく楽しい作品だからね。すごく笑えるし、そこまで深刻にならずに観られる。楽しい夜を求めている時にぴったりだよ。もちろんデートにも最適さ!


—今日はありがとうございました!また日本に来てくださいね。


SP そういえば行きの飛行機で『シン・ゴジラ』を観たんだけど、アメイジングだね! ハリウッド版(※1998年の『GODZILLA』と2014年の『GODZILLA ゴジラ』)は、ゴジラをちゃんと理解できていなかったんだと気づいた。ただの怪獣ではなくて、国の感情を体現する存在なんだろうな。『シン・ゴジラ』は本当に素晴らしくて、まるで日本がゴジラを取り返すために作られたように感じた。「分かってないな、これがゴジラだよ」とね。


ちょうど飛行機が着陸する直前に映画が終わるタイミングで、窓の外にもスクリーンにも東京の街が見えて、何だか不思議な感覚になったよ。さっきまでゴジラが歩いていた風景が目に入ってきて、最高だったな。ぜひまた日本に戻ってきたいよ!


Photo (Simon Pegg): 佐藤哲郎 / Tetsuro Sato

『スター・トレック BEYOND』

製作: J・J・エイブラムス

監督: ジャスティン・リン

脚本: サイモン・ペッグ、ダグ・ユング

出演: クリス・パイン、ザッカリー・クイント、カール・アーバン、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグ、ジョン・チョウ、アントン・イェルチン、イドリス・エルバ、ソフィア・ブテラ

原題: STARTREK BEYOND

配給: 東和ピクチャーズ

©2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.STAR TREK and related marks are trademarks of CBS Studios Inc. 


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