とんちゃん通りから横道1本入ったところにある蚤の市的ショップ「NOMADIC LIFE MARKET」

先日原宿とんちゃん通りにあるワーキングスペース『THE TERMINAL』で仕事をしていたときに、ちょっと気分転換に外に出た。あたりをぶらぶらしているときに目が入ったショップが、今回取材させてもらった「NOMADIC LIFE MARKET」だ。



オープンは今年の5月21日。たまたま壁に展示された本を見て、「また蔦屋書店が原宿にもできたのかな」と感じて足を踏み入れたのだった。広い店内を物色すると、衣料品から、家具、生活雑貨、キッチン用品、植物。さらには心をくすぐるようなガジェットなども自由にレイアウトされていた。


もう少し小さな規模感でのライフスタイルショップならいくらでも見たことがあるが、この規模感のショップはほとんど見たことがない。蔦屋書店でもなさそうだ。

「ここ、なんのお店なんですか?」

思わず口をついたことを発端に、SILLYで取材させてもらおうと思ったのだった。

専任のディレクターさんはお忙しいということで、PRの小池美菜さんにお話を伺った。


蚤の市に来たような気分を味わえる
お店作りをしたい


ーそもそもどういうコンセプトのお店を作ろうと思ったのでしょうか?

「複数の場所を移動しながら生きるスタイルを選んでる人たちが増えているという文脈で、ノマドワーカーという言葉が5年前くらいに取り沙汰されたじゃないですか。でもそういうライフスタイルを持った人たちに向けたショップがないな、と。ノマド(遊牧民)みたいに移動する人たちに合わせたお店を作ろうとディレクターが考えたのがはじまりです」

ー場所にとらわれず、自由に生活しているような人たちに向けたお店作り。現代の遊牧民に向けたお店を考えたわけですね。ライフスタイルショップが増えているなかで、他のショップと自分たちをどうすみわけているのでしょうか?

「格好いいお店、おしゃれなお店って今いくらでもありますよね。ただ、世界中のお店を廻っても『ワクワクするようなお店は少ない』とディレクターと話していて。

『ワクワクするお店ってなんだろう』と考えたときに、ディレクターは世界中を旅しながらロサンゼルスやブルックリンなどで毎週末開催されている蚤の市とかアイテムを仕入れているときが一番ワクワクするというんです。

蚤の市って『宝探し』をしているような感覚ってあるじゃないですか。それが買い物するうえでの最大の楽しさというか。そこから掘り出し物を探す感覚が結局一番楽しいなと気付いたんです」


ーだから商品が床に置かれていたりしているというわけですね。

「はい。古い雑誌も売るし、日本の他のセレクトショップで置かれるようなブランドのアイテムも売るし、海外で仕入れて日本でリメイクしたオリジナルの一点物の洋服もある。それらを集めて自由にレイアウトした雰囲気を新鮮に感じてもらえたらいいなと思ったんです。


だから在庫のストックも、全部あえて見える状態にしてますね。パッキングされた箱の中に商品を陳列したりもしてます。ほかにもお店のアイコン的に、自分たちの店舗名のOPPテープを段ボールに貼ったりしていて。『隠しているものはないよ』、『店内のどこを物色しても大丈夫だよ』ということを表現しています」




一棟借りしてるからこそできた 
現場と運営元の連動したお店のレイアウト


ーこれだけの広さのお店をいきなりオープンさせるのは難しいのですが、もともとはどういうショップが母体にあったんですか?

「もともとはシルバーアクセサリーの卸からはじまった会社で、大阪を拠点にスタートしました。

2014年には『THE COMMON TEMPO』というショップを立ち上げて、東京に小さな事務所を構えていましたが、スタッフも増えて事務所が手狭になったことから、建物を一棟借りしたんです。2階に営業や卸を担当するメンバーが仕事するエリアがあって。1階に『なんかやろう』ということでこのお店を作ったという経緯です」

ーなるほど。自由なお店作りができる理由がわかりました。

「変な話、これだけの規模感のお店でいわゆる普通のセレクトショップだったら、新しいアイテムが追加されてしまうたびに本部からの指示でレイアウトを決められてしまうんです。

そういうお店の場合、現場でお客さんを見てるフロアの人間と会議室でMDたちが考えてるコンセプトやアイデアがかけ離れてしまうことってわりとよくあるんです。

その点うちは、『ここの棚はこう展開しましょう』みたいな上からの指示やレギュレーションがありません。だから新しいアイテムとヴィンテージのものを並列させてもOK。しかも店舗スタッフがレイアウトを自由に作ることができる。そういうフットワークの軽さが強みだなと感じます」

ー遊びに来るたびにレイアウトが変わっている印象があります。毎回違うポップアップがあるのも新鮮に感じました。最初に訪れたときは蔦屋書店が新しく原宿にできたのかと思ったんですよ。

「お店のファンになってくれたお客さんに面白がってもらいたくて、週に一度は必ずどこかレイアウトを変えるようにしていますね。リピーターの方でもお店のレイアウトが変わると、『あれ。こんな商品ありましたっけ?』と反応してくれる。そういう違いを楽しんでもらえたらいいなと思いますね」



「冨手さんがはじめてお越しになったときは、蔦屋書店さんがポップアップに参加してくださった時期ですね。

実は蔦屋書店がポップアップとして他のお店に入ることははじめての試みだったみたいなんです。基本的なレギュレーションとしては、本を床に置いてはいけないということらしいんですけど、このお店でやりたかったことと、蔦屋書店さんも自身のお店ではできないことにチャレンジしてみたいという思いが重なって実現しました」


「ちょうど今は『TAIKAN』というカナダのバンクーバーのブランドのポップアップをやっていますね。まだブランド創立から1年も経っていない若手ブランドで今回のポップアップが日本発上陸なんです。こういう風にまだ日本で知られていないものも展開していこうと思うので、『今日は何をやってるかな?』と見つけてもらえたら楽しいなと思いますね」



来てみたくなる 
付加価値のあるお店作りを


オンラインショップでいくらでもものが買える時代に、お店に来て買い物をしてもらうことの価値ってなんだと思いますか?

「本来の買い物の楽しさを考えたときに、ただ画面に表示されているものを買うのは、それこそ今の流行りにマインドコントロールされているだけな気がするんですよね。トレンドのものって今簡単に手に入れることができる。

そういうなかで何のためにお店をやるのかって問われたら、今すでに欲しいと思ってるものをピンポイントで探すのではなくって、お客様に『宝探し』みたいに欲しいと思ってもらえる商品を見つけていただく必要があるなって思ったんですよ。

例えば、商品が床にあったら、しゃがんで取って何か良いものあるかなと手にしてもらえるじゃないですか。階段を上がってひな壇を回遊して、違った見え方ができることもある。あと普通は、お皿が階段に置かれていることなんてないのに、気をつけながら階段を降りたりして、そういうワクワク感を味わってもらうことってお店にしかできないですよね」


ー体験としてお店を楽しんでもらいたいということなんですね。

「はい。やっぱり来ていただかないと知りえない商品との出会いとか、店内を物色してみないと味わえない感覚がこのお店の価値ではないかなと思いますね。

あとここだけの話、コレクターにとって貴重な号の『LIFE』がさらっと置かれていたりして、文字通りお宝が眠っていることもある。見てもらう人の審美眼で見つめてもらう楽しみようがあるのがお店の価値だと思いますね」

ーどんな風にお店を利用してもらいたいと思いますか?

「ディレクターがそれぞれの商品に対してポップを書いていますけど、商品に対しての知識や魅力についてはスタッフがよく理解していますので、たくさん話してほしいなって思いますね。あと今月21日からコーヒーショップができるんですね。なのでお店の買い物だけではなくて、コーヒーだけで立ち寄っていただくのでもいいですし、ひとつの来るきっかけになると嬉しいですね。

買い物は二の次でいいので、自由に遊びに来て、商品を物色していただけたらいいなと思いますね。それがお店に来る楽しみだと思うので」

とんちゃん通りを歩くことがあれば、一度ぜひ足を運んでみてはどうだろう。


photoraphy:Haruki Matsui / 松井 春樹



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