ノリでライム刻んで話題騒然。一気にラップシーンを駆け上がるchelmicoって一体何者?

とにかくPOPでとにかくキュートなガールズラップユニットchelmico(チェルミコ)


普段はマニキュア塗ったり恋バナしたりと、街にいる女の子となんら変わらない生活をおくるふたり。でもPOPなトラックに乗って聞こえてくるのは、その見た目からは想像もつかないスキルフルなラップ。突如現れた新星にザワつく日本語ラップ界。


プロフィールをググると、“イケてるガイズに出会うために都内近郊でラップ中♡”の文字。不遜というか、なんというか……。このふたり、いったい何者?

ともにRIP SLYMEにゾッコン
ノリではじめたラップ


講談社ミスiD2014のMC Rachel(写真左)とMC Mamiko(写真右)のふたりで結成されたchelmico。ある日SoundCloudにアップした一曲が話題を呼び、今や都内のライブハウスやクラブに引っ張りだこの日々。なにをきっかけにふたりは出会い、ラップをはじめたのだろうか。


―2014年からchelmicoとして活動してるけど、ふたりの出会いのきっかけは?

Rachel(以下:R) 「たまたま知り合いがカメラマンをしていて、撮影で一緒になったのがきっかけですね」

Mamiko(以下:M)「当時私は16歳で、ごく普通の女子高生でした。高校生向けの雑誌にときどき載ることがあったりするなかで、つながって知り合ったというか」

R「出会ったときはミスiDのオーディションを受けてる途中だったんです。私はフリーターだったので、このままだとヤバいなと思っていて。それで撮影の仕事を受けたりしていたんです。そこで出会いました」


―なにをきっかけに仲良くなったの?

R「お互いにRIP SLYMEが大好きなんです。それで撮影のときにRIP SLYMEが流れててすごい話が盛り上がって」

M「夢小説、読んだことありますか?」

R「なんかインターネット上の掲示板とかで、ファンが妄想で小説みたいなのを書いてるんですよ。たとえばILMARIさんとPESさんが私を奪いあうみたいな」


―主人公の名前を自分の名前にできるやつですか?

R「そうそうそうそう(笑)。それをお互い読んでてめちゃくちゃ盛り上がって、『マジ!? 夢小説読んでたの!?』って」

M「『やばい、マイメン~』ってなって」

R「『遊ぼうぜ』って腕クロスしてガッみたいな(笑)」

M「スラムダンクみたいなね(笑)。そこからですよ。仲良くなったのは」

―どうしてラップすることになったの?

R「ある日Mamikoちゃんと別のラッパーの友達と映画『TOKYO TRIBE』を観てたんですよね。そしたらミスiDのディレクターの人からメールが来たんです。『シブカル祭。でミスiDの枠があるから、そこでなんかやってくれ』って。それで、映画観たばっかという影響もあってか『ラップしちゃおうぜ』という感じで。完全にノリではじめました」


―シブカル祭。のあとは趣味でラップをしていたみたいだけど、話題になった「ラビリンス’97」はどんな経緯で生まれたの?

R「『TOKYO TRIBE』を一緒に観ていた友達が、ラビリンスを作曲したヒイラギペイジくんと仲がよくて」

M「曲作れるからって、トラックを作ってもらったんです。それが『ラビリンス’97』。でも当初は『ラビリンス’97』にピンときてなかったんだよね」

R「そうだね」


―でもその曲が話題になっちゃったんだ(笑)

R「びっくりしました。『みんなこういう曲が好きなの!?』って(笑)」

M「でも今思うと、たしかに耳に残るし聴きやすいメロディだなって」

―ラビリンスのあともヒイラギさんに曲作ってもらってるよね。

M「ラップをはじめたのが突然すぎて、作曲の知識もなかったので。でも自分でトラックメイクもできるようになりたいと思って、はじめてGarageBandを使ってみました(笑)」

R「でも結局作曲は難しくてできませんでした。それで新たに知り合ったMikeneko Homelessさんに、冗談半分で『曲ちょうだい』って言ったらホントに作ってくれて」

M「それで『Love is Over』ができたんだよね」


―それでTREKKIE TRAXからリリースすることになったんだ。とんとん拍子でここまできたんだね。

M「タイミングと運がとにかくよかったんです」

R「周りの人に恵まれたり、ホントにそれだけでやってきました」

取材開始から早々にお笑い芸人のようなテンポでトークする2人。少し空気が和んできたところで、プロフィールにある「イケてるガイズと出会うために都内近郊でラップ中♡」について聞いてみた。


M「あれはもう完全にフザけて書いただけなんです(笑)」

RJABBA DA HUTT FOOTBALL CLUBが企画したイベントに呼ばれたときに、『プロフィールください』って言われて」

M「そこで初めて書いたんです。渋谷の道を歩きながら、『どうする~普通に書いてもつまんないよね』って」


―結果イケてるガイズには出会えたの(笑)?

R「出会えました♡ 毎日出会ってる♡」

M「腹立つなホントに(笑)」

R「曲作るときもふたりでふざけながら作ってるんですよね」

M「だから人前で歌うと恥ずかしいんだよね」

R「そうそう。そのときの内輪ノリで作っちゃうから、人前で歌うときはもじもじしちゃうんですよね」

M「『みんなに聴かれてる』みたいな」

R「『どうしよう、恥ずかしい』みたいな」

―chelmicoの活動をはじめるまで音楽活動は一切していなかったみたいだけど、歌詞はふたりの感覚だけで作ってるの?

M「最初はそうだったんですよ。『書き方わかんない』となってて」

R「『とりあえず集まろう』と言って会って」

M「そこから、『それっぽい単語をまず書いてみればいいんじゃない』となって」

R「『この曲のイメージは夜』みたいな」

M「『アーバン』みたいな」

R「そこからお互いのメモ帳に単語を並べていって」

M「連想ゲームみたいな」

R「それでできたのが『ラビリンス’97』」

M「サビはふたりで考えて」

R・M「『まーつげの先からホーミタイ♪』みたいな(笑)」


―コンビネーション抜群(笑)。

R「『空耳アワー』みたいな。聞こえた通りに書いていきました」


―歌詞の内容と音の聴こえ方やリズム感のどちらかを重視していたりする?

R「Mamikoちゃんは天才なんで、なんでもできるんですよ。思うがままにやっちゃうというか。でも私はあまり音楽を聴かないので、音楽の良し悪しが正直よく分からないんです。だから『わかりやすく伝わるものを作ろう』って思っています。曲にも耳に残る単語を入れるようにしたりとか。そういうことは意識しますね」

M「Rachelはリリック先行なんだってやっていくうちに気付いた」

R「Mamikoちゃんはフロウ先行なんだよね」

M「ホントにまったく正反対なんですよ」


―だからバランスが取れてるんだね。

R「そうそう。Mamikoちゃんが書く歌詞は音が好きな人とかリズムを聴きたい人にめちゃくちゃ響いてる。私が書いた歌詞が響くって言ってくれる人もいるので、それぞれの得意分野を活かして作ってる感じですね」

ただのアイドルラッパーとは
思われたくない


SILLYでもたびたび取り上げているKANDYTOWNやTOKYO HEALTH CLUBのように、近年のラップ界隈はユースカルチャーのなかでも大きな盛り上がりを見せている。日々ライブ会場で同世代ラッパーたちと共演するなか、人気を得る彼らに対して「負けたくない」とふたりは語る。


―大勢のラッパーが活躍するなかで、chelmicoにしかない強みってどこだと思う?

R「ラップがうまい」

M「ちゃんとラップはする(笑)」


―(笑)。たとえば自分たちと比較するラッパーはいる?

M「だれとは言わないですけど……」

R「女の子だけでラップしてると、どうしてもリスナーの人が比べちゃうんですよね。私たちはやってることが違うから、あまり意識してないんですけど」

M「ゆるふわラップ的な……」

R「そこには負けたくないと思ってます」

M「『もっと腹から声出せよ』みたいな」

R「そう、『しっかり出せよ』って(笑)」

―(笑)。活動当初の3曲は若干のオタク感があって、ゆるふわ系とかアイドル的存在で見られていたと思うんだけど。

R「当初はアイドルって言われるのがすごく嫌だったんです。RIP SLYMEはアイドルって言われないのに、なんでchelmicoはアイドルなんて言われるんだろうって思ってました。もちろん私たちもRIP SLYMEのことをアイドル視してるんですけど、アイドルラッパーとは言わないじゃないですか。そういうことに当時はいちいちムカついたり、無駄にめちゃくちゃ尖ってましたね(笑)」

M「なにも大したことしてないのにめちゃくちゃ尖ってて、『音楽はこういうもんだから』みたいな感じだったから(笑)」

R「ちょっと曲書いただけでね(笑)」

M「今はそんなふうには思ってないですけどね。ちゃんと聴いてくれてる人はわかってくれてるんだなって実感できたので。知ってもらえるのであれば、入口がアイドルでもいいかなって思ってます」


―今同じラインに立ってるなと思うアーティストはいる?

M「よく一緒にやってる、パブリック娘。とかTOKYO HEALTH CLUBあたりはわりと意識してる。ライブがとにかくうまいんだもん」



―仲良くもあるんだよね?

R「仲良いと思います。向こうはどう思ってるかわかんないけど(笑)。ただ、やっぱりライバル視するし、この人たちよりうまくなりたいなっていう対象でもあります」

M「もっと頑張らなきゃって思わせてくれる存在」



―どんな人にchelmicoの音楽を聴いてもらいたい?

M「音楽を聴かない人に聴いてほしい」

R「Twitterとかでよくエゴサーチするんですよ。そこで『ラップ好きじゃなかったけど、chelmico聴いて好きになったよ』とか書いてあると一番うれしいですね」

大事なのは、とにかく
私たちが楽しめるということ


その場のノリでラップをはじめ、なんとなくSoundCloudにアップした曲が話題になり、気付けば街で声をかけられる存在になり、なんと10月19日にはファーストアルバムを発売することになったchelmico。本格的に活動を開始してから約一年。目にもとまらぬ速さで流れていく時間を経験したふたりは、これからどのように変化を遂げていくのだろうか。


―この一年で、環境がものすごく変わったと思うんだけど。

M「うん。『こんなに変わることある?』っていうくらい変わった」

R「なんか感動したよね。まさか自分たちのCDが出る人生だと思ってなかったから」

M「まさかだよね」

R「マジウケるよね(笑)」


―ファーストアルバムにテーマはあるの?

M「アルバムを意識して作ったものではなくて、『今のわたしたち』みたいな感じです。でも最初はテーマがあったんですよ。私たち映画がすごい好きなので、ラブコメっていうテーマでやってみたり」

R「SFとかホラーとかね」

M「でも結局『最初のアルバムだから好きなことやっちゃおうぜ』ってなりました。それでアルバム用に新しい曲を2曲くらい作って」

R「とりあえず今できることをしようと」

―ふたりにとってラップってどんなもの?

R「自分に唯一できるアウトプットがラップだったというだけかな。歌詞は綺麗なことを書かなくちゃいけないイメージだったけど、ラップなら思ったことを全部歌詞にして、最後に韻だけ踏めば大丈夫みたいなところがあるなって。それでラップが一番ハマりました」

M「私も似たような感覚です。でもはじめて努力したいと思えたんだよね。部活みたいな。ずっと帰宅部だったので、『これが部活か~』みたいな(笑)」

R「ぜんぜん違うけどね(笑)」



―今後の目標やチャレンジしてみたいことはある?

R「とりあえずふたつあって、ひとつはお笑いの番組を持つこと。もうひとつは夏フェスに出ることです」

M「コント番組とか、『水曜どうでしょう』みたいなことやりたいんですよ。ネット番組でもいいから」

R「ゆくゆくは地上波狙っていきたいけどね」

M「あとは『みんなのうた』で自分たちの曲が流れるとか。『天テレ』に出るとか」

R「『天テレ』出たいよね。変な服着たいよ~」

―テレビに出ることでラッパーじゃなくて芸人タレント枠での認識が広がっていってもいいの(笑)?

M「それは構わないし、むしろ大歓迎。『ラップやってたんだ~』くらいでいい」

R「藤井隆さんみたいなね。歌えるんかいっていう。PUFFYみたいにアニメになったりもしたいよね」

M「もちろんラップが一番大事だけど、知ってもらえるならきっかけはなんでもいいかな」


―もうすぐインタビュー終わりますが、最後に言っておきたいことありますか?

M「ないんだよな~。ラップって言いたいことを言うためにあるみたいなところあるじゃないですか」

R「それを全部ラップにしてるから、インタビューで『言いたいことある?』とか聞かれると弱っちゃうんですよね(笑)」

M「といってもリリックも、恋と夏の話ばっかりだけどね(笑)」


―でもアルバムリリースの頃には夏終わっちゃってるじゃん(笑)。

M「そうなんですよ。でも夏の曲ばっかりですよ」

R「夏に作った曲だから」

M「でも我々が楽しかったらなんでもいいよね」

R「そうだね(笑)」

どんな状況も全力で楽しみながら、飛ぶ鳥を落とす勢いでラップシーンを駆け上っていくchelmico。「いつか自分たちの実力だけでRIP SLYMEと共演したい」と語るふたりが、その夢を叶える日を見届けたい。


photographer : Kazuma Yamano / 山野 一真

0コメント

  • 1000 / 1000