神奈川県出身。ZOMBIE-CHANGはプロジェクト名であり、メンバーはひとり。作詞作曲からライブパフォーマンスまで、すべてMeirin Yung(メイリン ヤン)が行う。
彼女が作る音楽を形容する言葉を一晩中考えてみたが、その答えは見つからない。ローファイな音源と、なんともいえない気の抜けた声。すこぶる可愛い女の子が、「せめて悲しいときはそばにいてくれないか」と人間くさい歌詞を唄うのだ。そのアンバランスさが、きっと彼女の魅力のすべてなのだろう。聴けば聴くほどクセになる不思議な音楽は、一体どのようにして生まれるのだろうか。
ひとまず曲を聴いたことがない人は一度聴いてみてほしい。
紆余曲折の人生と思春期の葛藤
抜群の容姿とセンスでファッションアイコンとしても若者から人気を得ているが、その出自は謎に包まれている。ZOMBIE-CHANGって何者? その疑問を率直に聞いてみた。
―どんな子ども時代を過ごして、歌手を夢見るようになったの?
「小さい頃から歌を作るのは好きでした。英会話教室に小学生の頃から通っていたんですが、先生が話す英語をカセットテープレコーダーで録音するスタイルの授業だったんです。そのテープレコーダーに、自分で作った歌を勝手に録音して遊んだりしていました」
―子ども時代はどんな音楽が好きだったの?
「当時は大塚愛ちゃんやPUFFYが大好きでした。家ではひたすらにスピッツが流れていたんですけどぜんぜん好きになれなくて(笑)。今は好きですけどね。中学生の頃からアンダーグラウンドなシーンにハマりはじめて、パンクミュージックを聴き漁っていました。友達に『この曲いいよ』ってお気に入りの曲を勧めたりすることが好きでしたね。あと学校の放送で流れる音楽が気に入らなくて、自分の好きな曲を流すために放送委員長になったりしました(笑)」
―放送を聴いた周りのリアクションはどんな感じだった?
「『また頭おかしい曲かかってる』みたいな感じでしたね(笑)。運動会の入場ソングにパンクバンドの曲を使いたいって言って先生に怒られたこともありました(笑)」
「そして時は流れ、高校生になって思春期を迎えたんです。いろいろあってなんと家出をし、高校を中退してしまって(笑)。当時のことはあまり覚えていないんですけど、なにを言われても『うるせー!』っていう感じで、反骨精神の塊でした。そこから音楽をやるんだっていう気持ちが湧いてきて、ギターを持って歌いはじめたのがすべてのはじまりです。それで気づいたらここまできていました(笑)」
―思春期が過ぎて、人として丸くなったきっかけはあった?
「人との出会いが大きいかもしれないですね。思春期のころは友達がコロコロ変わっていたんです。一定の場所に落ち着くことができなかったというか。でも音楽活動を通していい大人たちに出会うことで、自然と尖った部分は丸くなっていきました」
イメージは塩と砂糖
作曲は料理と同じ
MVを観るとわかるように、ZOMBIE-CHANGは抜群にキャッチーなキャラを持っている。その見た目と性格からは、波乱万丈の人生を経験したなんて想像もつかないが、その経験はたしかに音楽にも表れているように感じる。
―現在の楽曲はDTMだけど、なぜジャンルを転向したの?
「思春期を経て人間性が変わって、音楽性も自然と変わっていったんです。新しいことをはじめたいと思うようになったというか、新しい自分で再スタートしたいと思って」
―ZOMBIE-CHANGにコンセプトはある?
「塩と砂糖みたいなイメージです。真反対のものを取り込んでいきたいというか。普段からわりと弾き語りの曲やバンドサウンドが好きなんです。そういう音しか聴いてない人が電子音を使って音楽を作ったら、新しいものが生まれるのかなって」
―ローファイな音源にしているのはあえて?
「ローファイになっちゃうのは、あえてというより仕方なくっていう感じです。ホントはもっと『やばい心臓にくる』みたいな四つ打ちにしたいんです。でも資金面やいろんな事情でミックスとかがすごいチープになっちゃって。ローファイな感じも嫌いじゃないから、これはこれで全然いいんですけどね。ただ今後は音質にもこだわっていきたいです」
―抽象的な歌詞が多いように感じるんだけど。
「そうですね。でも私のなかでは想像できてるんですよね。ただあまりにわかりやすい言葉を使ってしまうと、イメージが固定されるというか。歌詞の意味や曲の世界観を、曲を聴いてくれた人それぞれのイメージで理解してもらいたいんです」
―MVも自分で構成を考えたりしてるの?
「『この人と一緒にやりたい』とか『こういうMVを撮りたい』というのはよく考えます。実は昔、MVを制作する人に憧れた時期があって」
―とにかくものづくりがしたかったのかな。
「そうですね。幼少期の夢は大塚愛、中学生はラジオパーソナリティ、それで……えー、今なんて言ってましたっけ(笑)」
―大塚愛からのラジオパーソナリティ(笑)
「あ、そうそう(笑)。それからMVを作る人、広告を作る人、ヴィレバンの店員(笑)」
―ポップ書きたかったの(笑)?
「そう、くだらないポップを書きたいと思ってて(笑)。そんな感じでとにかくやりたいことがいろいろあったんです。だから今MVを作ることがすごい楽しい。自分がやりたいことはすべて伝えます。すると一緒に作ってくれる人の世界観も混ざっていい感じに馴染むんですよね。私のイメージって、原色バキバキみたいな感じなんですけど、他の方と一緒にやるといいバランスになるんです。そういう作品の作り方がすごい楽しいですね」
―ポップな曲のMVはどれもサイケデリックというか、カルト映画を観ているような気分になりました。ZOMBIE-CHANGの脳内で、音楽と映像がどんなバランスで存在してるのかがすごく気になったんだけど、コラージュしてるみたいな感覚なのかな。
「そうそうそうそう、コラージュ! え、すごーい! そうだそうだ。その言葉、これからめっちゃ使うかもしれない(笑)」
―私のなかで音楽はコラージュなんです! って(笑)
「一枚の画用紙があって、そこに組み合わせていくんですって(笑)」
―(笑)。音楽を作ることに理由はあるの?
「特に理由はないかな。曲づくりは料理をする感覚に似てて。自分の好きなものを自分で作るというか。生活の一部みたいな感じです。曲を作らないとすごい不安になるんですよね。集中してる時間は自分が一番リラックスできる瞬間なんです。だからいつでも作っていたい。曲に限らずですが」
たくさんの人に愛されるために
大口を開けて笑う天真爛漫な姿はそれだけで周囲を惹きつける。まだまだはじまったばかりのZOMBIE-CHANGの音楽は、これからどのように変化していくのだろうか。
―今は作詞も作曲も演奏もすべてDIYだけど、今後はバンドがしてみたいとか、目標はある?
「私にとって、人と一緒にものを作ることってすごく時間がかかることなんです。意思疎通をちゃんと取らないと、自分の作りたい作品が作れない。だから今後努力していきたいのは、人との意思疎通を怠らないということですね(笑)」
―コミュニケーションを取ることが苦手なの?
「そうですね。ひとりの方が楽だなって思うんです。だれかと行動を共にすると、その人の心配もしなきゃいけないじゃないですか。『アイツどこいるんだよ、遅刻してんじゃねーかよ』みたいな。そういうことを思ってしまう自分も嫌なんです」
―人に厳しく、自分にも厳しくってこと?(笑)
「人に優しく、ときに厳しく、そして自分の思っていることは伝えられるようにしていくことが目標です(笑)」
―今後どんな人たちに自分の音楽を聴いてほしい?
「若い女の子とか、可愛くていい匂いのする女性から愛されたいというか。可愛い子にエネルギーをもらいたいですね」
―海外リリースは考えてないの?
「めちゃくちゃしたいですね」
―台湾とかでめちゃくちゃウケそうだけどね。抜群に可愛いし。
「えっへへ~(笑)」
―否定しないっていう(笑)。今後の活躍も楽しみにしています。
現在進行形で変化し続ける彼女は、きっとこれから私たちに新しい世界を見せてくれるだろう。現在アルバム制作中とのことなので、そちらも期待したい。
photographer : fujiko
【出演イベント】
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