「NEW JACK BOOGIE」のデザイナー、Natsukaが作るサコッシュバッグ

チャリに乗るとき、いつも決まって使うバッグがある。「NEW JACK BOOGIE」というブランドのサコッシュバッグだ。サコッシュバッグってなに?って聞かれたら、よく分からない(笑)。ググってみると、「ロードレース(自転車)でスムーズな水分補給ができるように作られているショルダータイプの軽いバッグ」だそうだ。たしかにチャリで使うのがしっくりくるし、とても軽い。個人的にはスケートするときやタウンユースにも調子が良い。NEW JACK BOOGIEはすべて本物のミリタリー生地で作られていて、気分によってピンズや缶バッジを付けて自分色にカスタマイズできる。ミリタリー生地は単色から迷彩まで揃っていて、webページには生地の詳細まで書いてある。男心をくすぐる最高のMADE IN TOKYOのバッグだ。そんなバッグを作っているのは意外にも、Natsuka(ナツカ)という女性である。

生地の買い付け、デザイン、縫製をすべてひとりで行っている。女性なのにって言い方は、語弊があるかもしれないが、男心を理解したバッグが作れるのかが不思議だった。


Jackpot(ジャックポット)に納品するんで、行きません?」


今日はNEW JACK BOOGIEをJackpotに納品するとのことなので、一緒に行くことにした。Natsukaがカルチャーに興味を持つキッカケはなんだったんだろう。


「小学校3年生のときだったかな。近所の幼なじみのお兄ちゃんが録音したカセットテープをくれたんですよ。それに、さんぴんキャンプとかブッダブランド、MUROさんが入ってて。そのカセットテープが最初のヒップホップでしたね。そこからオーバーサイズの服とか着るようになりました。それで服が好きになって、高校卒業して文化服装学院のアパレルデザイン科に入ったんですよ。 当時はギャルソンとかヨージを着てました。基本ビーサンでしたけど(笑)。今でもそういうドメスティックブランドみるとワクワクしますね。それで在学中にOriginalFake(オリジナルフェイク)で働いてたシンさんって方と、RECON(リーコン)で働いてたオグさんって方と知り合ったんですよ。そのふたりにストリートの歴史を教えてもらったり、遊びに連れて行ってもらったりしました。卒業してからは、ニートして遊んでましたね。そろそろ働こうかなってときにmad HECTIC(マッドヘクティク)に誘ってもらって働き始めました。地下のお店じゃなくて、明治通りにあった方ですね。そこでシンさんが入ってきて、同じ職場になりました(笑)。シンさんとオグさんには未だに仲良くしてもらってます。今、ふたりは銀座の『THE PARK・ING GINZA 』で働いてますね。私の原点はそのふたりかな」

Natsukaにとって、シンさんとオグさんの存在が大きかったようだ。彼女のファッションはブランドのバックグラウンド、作り手を理解して着ている感じがして、とてもかっこいい。こういう雰囲気が出せるのも、もともとのセンスに加えて、見てきて感じたものがファッションに反映されているんだと思った。どういう経緯でNEW JACK BOOGIEが始まったのか。


「mad HECTICが1年半でなくなっちゃって。そのあとは原宿の『BROUTERS(ブローチャーズ)』に誘ってもらって、働き始めました。BROUTERSで働いてて思ったのが、チャリのパーツって在庫が残ってても売れるんだなって。洋服って売れなかったら、セールにかかって、それでも売れなかったら処分されるじゃないですか。洋服を3年間学んだときに、服作るのって大変だなって思いました。工程から作って、自分の設定した値段で売って、売れなかったら処分される。ファストファッションはすごく安く売られているし、ちょっと嫌になっちゃったんですよね。けど、BROUTERSで働いて、世の中には効率の良いものがあるかもって思いました。その当時、気に入ったサコッシュバックがあって、めっちゃ使ってたんですよ。サコッシュバッグって使ってみると、すごい使いやすいじゃないですか。これ作ったら、広まるかもって思いました。ブランドからたまにサコッシュバックが出ても、次のシーズンだと出るか分からないじゃないですか。私、財布をよく失くすんですよ(笑)。ギャルソンの定番で出てるワニ柄のを気に入って使ってるんですけど、失くしたら、それを買っての繰り返しで。失くしたりすることも考えて定番であるといいなって思って。それでBROUTERSで働きながら、NEW JACK BOOGIEが始まった感じですね。BROUTERSには3年くらいいました。そのあとは中目黒の『have a good time』のお手伝いをしながら、グラフィックの専門学校に通いました。学校に通いながら、原宿の『CHROME TOKYO HUB(クローム トーキョー ハブ)』で働き始めましたね。CHROMEって海外の店だと縫製係がひとりずついるんですよ。お客さんが選んだ生地で作る人ですね。CHROME TOKYO HUBでも、それがはじまるから、縫製係やらないかって誘われて。今はちょっとお休みを頂いてるんですけど、そろそろ復帰しようかなって思ってます」

サコッシュバッグを作っているうえに、CHROME TOKYO HUBでカバンを作っていることに驚いた。日本でCHROMEの縫製係はNatsukaが初めてらしい。文化服装学院でも服を作っていた経験があり、もの作りが得意なことが分かった。NEW JACK BOOGIEは1個作るのに、どれくらいの時間がかかっているのか。


「作るのが得意ってわけじゃないんですよ(笑)。NEW JACK BOOGIEを1個作るのに、だいたい1時間くらいかかってますね。生地にも種類があって、本物の米軍納入生地メーカー製や復刻の生地で作ってます。古着は使いたくなくて、新品未使用だけを使ってます。生地探すのは大変ですね。市場におりてこない物とかあるんで。国内や海外のミリタリーショップで買い付けしてます。陸上自衛隊と航空自衛隊のはレアですね。マジックテープにはミルスペックまたはミルスペック復刻のものを使用してて、かなりこだわって作ってます。もうすぐ新しい生地のサコッシュを出そうと思ってるんですよ。NEW JACK BOOGIEのタグにも使われてるタイベックっていうミリタリーではなくデュポン社が開発した生地で。よく防護服で使われてて、防水で、ちぎるとかできなくて、とにかく軽いんですよ。生地って知れば知るほど、奥が深くておもしろいです。あと、サコッシュって洋服と違って、ぜんぶ四角いから生地のロスが出ないのも魅力的だなって思いますね」

生地以外にも、マジックテープ、タグといった細部にまで、Natsukaの作り手としてのこだわりを感じた。生地のロスが出ないことを考えてるのも素敵だなと思った。NEW JACK BOOGIEのブランド名の由来も聞いてみた。


「ブランド名はレコードっぽい感じが良いなって思ってました。NEW JACKはスラングでヒヨっことか新米。BOOGIEは体揺らすとか、リズムとるって意味ですね。BOOGIEって言葉はMUROさんの『TROPICOOL BOOGIE』っていうミックスCDを見て良いなって思いました。それでNEW JACKとBOOGIEを合わせた感じです。字体は『ニュー・ジャック・シティ』っていう映画があるんですけど、そこのオープニングに出てくるのロゴをパロってます。男臭いんですけど(笑)。ちょうどNEW JACK BOOGIE始めたときに東京オリンピックが決まったんですよ。これから東京がアツくなるって思って、ロゴにMADE IN TOKYOをいれました。実はバッグ以外にもステッカーと缶バッジを売ってるんです。ステッカーは『フリッツ・ザ・キャット』っていう、60年代かな。アメリカのガンジャ吸ったりするアニメのキャラを使ってます。たしか昔のSUPREMEのネタとかでも使われてますね。缶バッジはオリジナルデザインです。サコッシュのカスタムアイテムに良かったらって感じで」

MUROさんのミックスCDや、ニュー・ジャック・シティのオープニングロゴ、フリッツ・ザ・キャットをネタで使ってくるあたりが、男心をくすぐるんだと思った。こういうネタを放り込んでくるのも、NEW JACK BOOGIEの魅力のひとつだ。ステッカーと缶バッジもNatsukaが実際にデザインして作っている。すべてひとりで作っているから驚きだ。最後にNEW JACK BOOGIEの今後を聞いてみた。


「これからもNEW JACK BOOGIEはメンズメインのサコッシュバッグですね。女の人ってファストファッションみたいにすぐ飽きちゃう印象があって。ブームじゃないけど、早いんですよね。男の人はひとつのものをずっと大事に使ってくれる感じがする。ストリートの人って、ずっとストリートじゃないですか。素晴らしいと思う。そのなかでたまに女の人がNEW JACK BOOGIEを使ってくれてると、かわいいって思います。それがうれしいですね」

Natsukaの作り手としての考えやセンス、バックグラウンドを知り、さらにNEW JACK BOOGIEが好きになった。Natsukaは納品を終えると、Jackpotの服を手に取り、気になるものを試着しはじめた。ついでにJackpotの取り扱いブランドの説明をたくさんしてくれた。あまりに魅力的な説明だったので、買う予定なかったけど、ついつい僕も買ってしまった(笑)。こういうNatsukaの人柄の良さもNEW JACK BOOGIEの良さかもしれない。これは実際にEAZEで聞いた話だが、「T19 SKATEBOARDS」の大瀧ひろしさんもNEW JACK BOOGIEのサコッシュバッグを愛用しているとのこと。リアルなスケーターたちも使っている、Natsukaのこだわりが詰まったNEW JACK BOOGIEをぜひチェックしてほしい。

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