スマホ専用のアーティーな椅子

Kozue Sato

Writer, Editor, Party Hacker. Based in Toronto since 2014.

朝の起き抜けに、夜寝る前にベッドの上で、待ち合わせの時間潰しに、そのほか手持ち無沙汰な瞬間に、人々はスマートフォンのホームボタンを押す。ソーシャルメディアのアプリを開き、画面をスクロールして『いいね!』ボタンを押し、気になる記事や面白い動画があればシェアをして、友人からのテキストメッセージに返信していると、あっという間に時間は過ぎていく。 

その間、スマートフォンを手で固定し、無意識にいろんな体勢を取っていることだろう。長時間同じ姿勢でスマホをいじっていれば、どうしても肩は凝るし、腕はダルくなり、目も疲れてくるからだ。そうやって、スマホの操作によって不自然な姿勢を取り、それを日々繰り返すことによって首や背骨に異変を起こす”Text-neck”という症状は、世界中で問題視されている。いわゆる「スマホ首」と呼ばれているヤツだ。

フロリダのアーティスト、ジリアン・メイヤーは、その問題を解決すべく、完全にリラックスした体勢でスマホを見ていられる椅子を製作した。美を追求するアーティストの作品だけあって、見た目はアートモニュメントのようだ。一見するとそれは椅子なのか、何のために使用するモノなのかも分からない。 

映像作家でもあるジリアンは、『Slumpies』と名付けられたこの椅子のための映像も公開している。映像を見ると、寝転がりながらスマホを持った手を固定し、思う存分スマートフォンの操作に没頭できてしまうようだ。Slumpiesに座ったり寝転んだりした人は、その心地よさに思わず至福の表情を浮かべている。

「近年の調査によると、私たちは1日に平均で4.7時間、スマートフォンに時間を費やしています。しかしながら、人々の姿勢をサポートするような製品の数は増えていないのです。人類の偉大な発明であるスマートフォンが、ますます人々と関係していくことを認めた上で、問題を解決していく義務があるのです」とジリアンは語っている。

Slumpiesは、椅子にもたれかかってくつろげるタイプなど形もさまざまで、どれもアーティーで機能的。人々がさりげなくとっているあらゆる姿勢を考えて、作品に落とし込んでいるのだ。

アートとは、日常を美しく昇華させ、人々の生活を豊かで楽しいものにさせてくれるもの。すなわち、彼女の作ったスマホ専用の椅子は、醜い”スマートフォン・ゾンビ”に成り果てた我々を、自然と調和した美しい姿に蘇らせてくれるのだ。

source : Slumpies by Jilian Mayer 

http://www.slumpi.es/


0コメント

  • 1000 / 1000