週末は、図書館DIGへ出かけてみない?

Kozue Sato

Writer, Editor, Party Hacker. Based in Toronto since 2014.

表参道の交差点を青山方面に少し歩くと、多国籍なフードカートが並ぶ屋台村が現れる。「COMMUNE 246」という名の空間で、奥にはコワーキングスペース「みどり荘2」や、都市をキャンパスとして講義を展開する「自由大学」など、仕事や学びの場もある。

トロントからの帰省中に、東京でしばらく過ごすにあたって、みどり荘2にデスクを借りた。敷地内でいつでもおいしいご飯が食べられて、SHOZO COFFEEのコーヒーでブレイクできて、よなよなエールのドラフトビールがいつでも飲めるだなんて、これ以上にない最高な仕事場じゃないか。 

そんなみどり荘2の運営チームである飯田英人君は、会ったときからいつも音楽の話をしていた。音楽のほかには、旅とか建築のことで頭がいっぱいのようだ。


 「図書館がアツいんですよ」  

ある日、そう言って「文京区立図書館」のウェブサイトを見せてくれた。聞くところによると、図書館に置いてあるようなCDって、ジャズやロック、クラシックばかりかと思いきや、インディミュージックとか日本語ラップとか、けっこうあるらしい。  

レコ屋で指を真っ黒にしてレコード掘ってナンボ、みたいな環境にいた身としては、図書館でCDを掘るなんて超新鮮だと思った。そんなわけで、お互いの時間の融通が利く平日の午前中に、飯田君に「図書館DIG」を指南してもらうべく、文京区の小石川図書館で落ち合った。

図書館のウェブページで検索機能を使いこなす


「ネットで予約しておいたので、それを取りに行くだけです」と、スタートから予想外な展開。CDラックにかじり付いて、せっせと探すのを想像していたんだけど。

 「初めて行く図書館では、どんなモノが置いてあるのか確認するために、予約はせずに現場に行きます。それで、大体把握してから図書館のウェブページで検索をかけるんです」

 この”検索作業”が、図書館DIGのキモとなるそう。 

「例えば、ほかの図書館では見かけないジャズのレーベルがあったとします。それをメモしておいて、検索するんです。あとはライナーノーツの中から、プレイヤーやプロデューサーの名前などを見つけて検索すると、一気に幅が広がって面白いですね。人名で検索する際には、全角カタカナを使って、ナカグロ(・)をきちんと付けるのも鍵だったりもします。例えば、”ジェームスブラウン”って続けて打ってもあまり出てこないけど、ちゃんと”ジェームス・ブラウン”で検索するのが大事」  

そうやって検索をしたCDを受け取りながら、図書館のCDラックもきちんとディグる。小石川図書館にはレコード室もあって、ここのネタの宝庫だ。

 「現場で直接探す場合は、見たことないジャケットを中心に、自分が知らないモノしか掘らないようにしています」 

 東京の図書館はひと通り見たが、文京区がダントツにいいのだという。  

「文京区にある本郷図書館も、もともとは森鴎外図書館という名前だし、なんとなく文化的な土地だというのもあるかもしれません」 

お金や情報との付き合い方を考えた結果が図書館DIG


文京区以外はどんな感じなんだろう?と渋谷図書館へと移動。ここは比較的、新譜が多い感じだった。 

図書館でCDを借りる際の仕組みとして知っておきたいのは、すべて区や市ごとに分かれているということ。例えば、小石川図書館で検索して予約をすると、文京区全体にあるCDのコレクションから該当品が予約され、小石川図書館に届けられたものを受け取るというわけだ。本の場合は区をまたいで借りられることもあるという。借りられる枚数は区や市で異なり、渋谷区はひとつの図書館で3枚ずつ、文京区は10枚いけるそう。枚数を稼ぎたい場合は、友達を連れて行けばいい。

ーそういえば、地方の図書館は行ったことある? 

地元が愛知なので、最近できた岐阜図書館はチェックしました。めちゃくちゃ良いと思ったのは、映画が半端なく強いところ。カンヌ、ベネチアとかで検索するといっぱい出てくる。隣町の一宮市図書館も新しい図書館でかなり良いところです。 

ーそもそも、図書館で掘り始めたのはいつだったの? 

大学1年生の頃なので、もう7~8年経ちます。建築学生だったので音楽にあまりお金を費やせなかったし、かと言って違法ダウンロードは絶対にしたくなかった。図書館に行けばジャンルは隔たりなくあるし、聴く音楽も広がっていくのと、何よりもリスクが無いという点に惚れました。それから、自宅の部屋が狭かったこともあって、モノを持つのもあまり好きではなくて。モノがたくさんあると、それに気を取られちゃう。それで、大学生の頃に図書館を自分の本棚として捉え始めたんですよね。

 ーその考え方すごいね。 

あるとき通っていた図書館に建築書が増えたんですけど、それは僕がリクエストしたからなんですよ。建築書の一角に、めちゃくちゃ濃い本が並んでて、友達や彼女を連れて行くと「なんでこんなにあるの?」って(笑)。

 ーリクエストすると、図書館が買ってくれるってこと?

 そう。でも、絶対に必要なモノだけリクエストしていました。図書館をこうやって利用するようになったのは、お金や情報との付き合い方を考えた結果なんです。 

クラシックからヒップホップまで、本日の戦利品を試聴 


みどり荘2に戻り、今日の戦利品をPCに取り込む。iPhoneに入っている3000曲くらいの音楽も、ほとんどが図書館で手に入れたものだそう。これまでに集めた音楽はプレイリストにして、Commune246内で流して楽しんでいる。つまり、飯田君はこの空間の選曲家でもあるのだ。

 ーそもそも、どうしてここで働くことに? 

COMMUNE 246がオープンする前に、「スプートニクオークション」というイベントがあって。ポートランド、スウェーデン、そして日本の作家の作品を、作家から直接買えるというオークションイベントですね。それに惹かれて、ここに足を運んだのが始まりです。中目黒のみどり荘を運営している大矢知史さんに「明日からみどり荘2のペンキ塗りやらない?」って、翌日から4日間くらいかけて、この場所のペンキ塗りを手伝って。そのときに、Boseのスピーカーを持ちこんで音楽をかけながらやってたら「すごいいいじゃん」って。それで、音楽も担当することになって。

 ー普段はここで何をしているの? 

基本的には、みどり荘2の運営ですね。ギャラリーでのエキシビジョンとか、みどり荘2とCommune246周りのこと全般です。僕も何をやっている人なのか良く分からないですよ、毎日やってることが全然違うですし。アーティストとやりとりしている時もあれば、設営やDIYをやっていたり。

 ー今日もなぜかみんなで図書館DIGに行ったりね(笑)。では、最後に今日借りてきた音楽について説明してもらっていいですか?  

小石川図書館で借りたのは、LAのシンガー、ミア・ドイ・トッドの2002年の作品『The Golden State』(左中)や、トニー・アレンが2014年にリリースした新作『Film of Life』(右中)、スラム・ヴィレッジの2015年の新作『Yes!』(左下)など。左上はオーストラリアのバイオリストが演奏しているソナタ集で、中段の右から2番目はキング・オブ・オーパスというエキゾとダブを融合させたアーティストのCDだったり、本当にジャンルが隔たりなく集まるところが面白いです。

 渋谷図書館では、ピーター・トッシュの1976年の名盤『Legalize It』(右上)、ヨ・ラ・テンゴが2003年にリリースした『Summer Sun』(右下)など。真夏のBGM用に。


 photography : Wataru Nishida(WATAROCK)

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