東京アンダーグラウンドシーンの有名人「Mr.Tikini」インタビュー

MOUTAKUSANDA!!! magazine

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君が東京でコアなパーティーに出入りしているなら、きっとどこかでMr.Tikini(ティキニ)を見かけたことがあるはずだ。

レーベルオーナー、DJ、モデル、オーガナイザー、プロモーター……。時と場所により、さまざまな立場に姿を変えて、カルチャーやアート、ファッションの”dope”な方面に関わる、東京在住のロンドン人。  

彼が主宰するOsirisっていうレーベルも、とてもつかみ所がない。「よく名前は聞くけど何だろう ?」って感じ。

東京のアンダーグラウンドシーンの一番面白いところにいる、そんな正体不明の男、Tikini。

彼と約束した時間は平日の20時すぎ。待ち合わせ場所に指定された、表参道のCOMMUNE 246に行くと、とてもハッピーなムードのパーティーが開かれていた。


 —今日は何のイベントなの?  

Tikini:友達がやってる、<SPEAKEASY>っていうパーティー。いつもたくさん人が集まって、いいムード。このVibeを感じてほしかったから。 


 見晴らしのいい場所へ移動する。Tikiniは(大げさじゃなく)3m歩くごとに友達に声をかけられる。COMMUNE 246を縦断するだけで15分はかかる。 

パーティーの空気を十分に吸い込み、俺たちはビールを片手に撮影用のロケーションへ移動する。青山通りを歩きながら、Tikiniはゆっくりと口を開く。 


「TRAPのトラックだから格好いいっていう人がいたり、アナログでリリースすることが大事って考える人がいたり。ハイプなものも、マニアックなスタンスも、根本は同じだと思うよ。俺はそのどちらにもこだわりたくない。なるべく、凝り固まらずに……」

ー「Osiris DCLXIV」っていうレーベルで音源をリリースしているよね。Osiris設立の経緯を教えて。

Tikini:Osirisは3人で始めたんだ。ひとりは東京でよく知られているDJで、27th Destinityっていうパーティーでレギュラーもやってた。他のDJたちがほとんどプレイしないような音楽をシェアするようなパーティーだったよ。 Osirisのコンセプトはシンプル。自分たちや、関わっているアーティストたちのプラットフォームを作ろうと思ったんだ。何かを表現したりリリースしたり、もっといろいろなことができるような。だから、Osirisがレーベルなのかどうか、今でもよくわからないんだよね。


ー「Osiris DCLXIV」って不思議な名前だよね。

Tikini:Osirisはパンテオンの神々のひとりで、エネルギーとタフネスを司っている。水面下、地下の世界、アンダーグラウンドの象徴としてOsirisの名前を使うことにしたんだ。DCLXVIは666を表すローマ数字で、666はメラニン/炭素と関わる。炭素原子は、6個の陽子、6個の中性子、6個の電子を持つんだよ。


 ーOsirisの活動方針は?

 Tikini:ジャンルよりVibesを優先する。そして、"do what thou wilt." (「汝の意志することを行え」)だね。   

ー所属アーティストってだれがいるの? 

 Tikini:だれも所属はしてないよ。一緒に作品をリリースするだけ。


 ーステッカーやアパレルブランドの「BLACK EYE PATCH」とよく一緒に作品を作ってるよね。

Tikini: 彼らとは、「なにがドープなのか?」っていう観点が共通してる。彼らはアンダーグラウンドから出てきて、ストリートで活動を続けて世に出たよね。だから、俺はBEP(BLACK EYE PATCH)をリスペクトしているよ。 


 ーOsirisをスタートして何年か経ったけど、継続するなかで何を感じる?

 Tikini:より自給自足的に活動するにはどうするべきか、学んでいるよ。 

ーTikiniの活動の全体像はどんな感じ? Osirisの運営、自身のDJ、モデルもやってるのかな?

Tikini:以前は「Spexsavers with Brassfoot」っていうDJデュオをやってた。2010〜2011年頃からTikiniとして東京のストリートで活動してる。ただのアーティストっていうだけじゃなくて、DJ、モデル、レーベルオーナー……活動はいろいろだね。俺の活動のルーツは、Brassfootとやってるプロジェクト「Hands Hidden」で見られるよ。

ー以前「ロンドンのカルチャーとライフスタイルを東京に持ち込みたい」って話してくれたことがあったよね。最近のロンドンと東京のカルチャーは、Tikiniにはどう映る?

Tikini:ロンドンで生まれたさまざまなジャンルが東京でもすごい人気になっている。だけど、その音楽が本来持っているVibeが、東京では失われていることが多いと感じるよ。いいVibeを持つシーンやパーティーもいくつかある。ただ東京でそこへ辿り着くには、いい嗅覚を持ってないとダメってことだね。今年は最高のパーティーでプレイできてるし、まわりのDJやアーティストも大好きだよ。みんなワールドワイドなヤツら。

ー今注目しているアーティストやムーブメントを教えて。

Tikini:Tikiniや Osiris、その周辺で起きていること……っていう答えになるかな。 さっき「Osirisを自給自足的にしていきたい」って答えたよね。つまり、もっと多くのことに気がつくために、起きる出来事すべて、自分の周りの人すべてをもっと気にかけるっていうこと。

 抽象的な答えでごめんね。でも、俺たちはもっと考える努力をすべきだと思うんだ。今は何でもgoogleで調べれば分かっちゃう世の中。感情や歴史や文化、それを取り巻く文脈を理解も感じることもせず、“情報”だけを知る……そんなものは、“No Vibe!!”って感じだよ。    


ーいろいろなところでTikiniの名前を聞く。ロンドンから日本という海外へ移り住んで、東京のアンダーグラウンドなシーンの深くに根付いていけたのはどうして?

Tikini: 両親の育て方が良かったのかもね。父親がいつも言ってた言葉があるんだ。「目は見るため、耳は聞くため、鼻は臭うため、足は踊るため、口は閉じるためにある」って。俺は素晴らしい家族と友達に恵まれていると思う。毎日の暮らしに感謝してるし、あらゆる出会いに意味があると信じてるよ。 

ーなぜ東京を選んで、この場所で暮らし続けているの?  

Tikini:「あなたは人々に自由な愛を示すために、この場所にいる」って精霊に言われたから。でも、本当の意味はまだ分からない。この場所を去るときに分かるのかも。 


ー東京をより楽しむためにアドバイスを欲しいと聞かれたら、どう答える?  

Tikini:もし日本人の友達がいなくて日本語も話せないとしたら、それって日本に住んでいることになる? ロンドンでもパリでもニューヨークでも同じだよね。自分が住む場所のことを知らなくて現地の友達もできなかったとしたら……。それって、かなり限定された世界だよ。みんな、それぞれの理由でここにいるんだ。俺がそう感じるだけだけどね。

ー最後に、OSIRISやTikiniに関して、次の計画やニュースがあれば。

 Tikini:OMAARの新曲「Check Engine」をリリースしたばかり。ほかにもDIYで作品を作り続けていくから、引き続き注目していてほしい。 


 撮影が終わるとTikiniは再びパーティーへと戻って行く。道すがら、彼は音楽について、何度もこう言っていた。 


 「音が素晴らしいこと。重要なのはこれだけ。It’s just music、純粋に、音楽なんだよ……」

そんな感性のもとに集まったヤツらが作るパーティーは、シンプルに楽しい。ちょっと大げさに聴こえるかもしれないけど、純粋な音楽の喜びを求めるムードがある。 

 狭く深いアンダーグラウンドの音楽シーンへの入り口を探しているなら、TikiniやOSIRISのパーティーは、その扉のひとつになると思うよ。


photography:Yuri Nanasaki/七咲友梨

Interview&text:Masaya Yamawaka /山若マサヤ 

 

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