サイケデリックバンドBO NINGENの五感で感じるデトックス音楽

イギリスを拠点に活動し、逆輸入アーティストとして知られる日本人サイケデリックバンドBO NINGEN。メンバー全員が痩せ型で長髪、70年代のサイケデリックロックバンドを彷彿とさせる出で立ちだ。

ジャンルや音楽の定義の境界が曖昧になり、スタイルを維持することが難しい時代でも、聴けばすぐに彼らだと分かるほど、彼らは凛とした強さを持っている。彼らの熱源はどこにあるのか。2年ぶりにEPを発表したBO NINGENからボーカルのTaigen氏とギターのKohhei氏に話を聞いた。

自分たちの新しい形を模索した1年で作り上げた新譜

2年ぶりに発表されたEP「Kizetsu No Uta」。初めて日本でレコーディングし、これまでとは少し違ったプロセスを経て制作されたという曲は、彼らにとっても新しい挑戦だったようだ。

Kohhei 「『Kizetsu No Uta』はかなり特殊な経緯でできた曲なんです」

Taigen 「実はとある海外コンペがあって、そのために作られた曲で。いつもの楽曲制作だと4人でジャムセッションをするなかで仕上げていくので、コンセプトやテーマが存在しないところから作り上げていくんですよね。でも『Kizetsu No Uta』にははじめから決まったものがあって、自分たちの色をいかにして詰め込むかっていう新しい試みでした」

Kohhei 「映像があってムードも指定されていたので、そこに雰囲気を合わせていきました。だからある意味では、今までで1番分かりやすい曲なのかもしれない。統一された世界観があって、それを演奏しているっていうところで」

Taigen 「これはすごく面白い挑戦でした。これまで使わなかった感覚を使ったので、以前の僕らにはない色が出ていると思います」

―ミニアルバムにパリの公演を収録したのはなぜですか?

Taigen 「これまでのライブ収録だとライブ感をぐしゃっと出すことが多かったので、荒く録って、荒くマスタリングしていたんです。でも今回はちゃんとマルチトラックで録って、会場の雰囲気も伝えつつスタジオ盤としても成り立たせたかった。綺麗さと爆発力とスタジオっていう要素をうまく混ぜたかったんです。なのでアルバムとしても新しい挑戦でした」

「世間の目」なんて言葉、イギリスには存在しない

結成から10年を経て、着実に日本での知名度が上がる今でも、イギリスを拠点に活動するスタイルを選んでいるのは何故なのだろう。

Taigen 「完全にイギリスのほうが合うんですよね。簡潔に言うと音楽で食べることのハードルの高さがヨーロッパと日本では明らかに違うんです」

Kohhei 「あくまで感覚的な話ですが、イギリスのほうがハードル低いんですよね」

Taigen 「日本語の慣用句で『世間の目』ってあるじゃないですか、でもその言葉って英語で訳せないらしくて。そのせいか『30歳までに就職しなきゃやばいよ』みたいな世間体を気にする必要がないんですよね。まぁこれ(見た目)がイギリスの街を歩いていて、特に好奇の目にさらされないこと自体が然りですけど(笑)」

Taigen 「普通にスタジオで音を出してみても日本とは雰囲気が全然違います。音の聴こえ方も違うし、電圧とかそういうレベルじゃなく空気そのものが違う」

Kohhei 「曲を作るときはその場の空気・環境に合わせて作るので、どこの国で作ったかで音楽は絶対に変わると思っているんです。そういう意味でイギリスの空気が肌に合っているのもありますね」

Taigen「環境の差を抜きにしても、僕は感覚で音楽を作るので計画的にコード進行を考えたような曲作りが苦手なんです。でも日本には全部アナライズして曲を作れる人が多い。ポップミュージックのプロデューサーとかね。彼らに憧れはしますけど、僕らはそうなれるわけではないので、感覚で音楽を作る人が多くいるイギリスのほうが合うのかもしれません」

Kohhei 「要するに僕らは日本から弾き出されたってことでしょ(笑)」

―日本とイギリスの音楽シーンを比べてみてどう感じますか?

Taigen 「イギリスにも商業音楽はありますが、アングラとメジャーの階段がちゃんとつながっているなと感じます。James Blakeみたいなアングラやクラブシーンの人たちが、スタイルをあまり変えずにメジャーに出てくるところを見ると健康的だなって。

日本は最近ようやくポップミュージックの土壌で変なことをする人が出てきたように感じますが、地に足付いたアングラなものがメジャーに出るっていう健康的な感じはまだしないかな。あとインディペンデントのシーンのアーティストがわりと似通ってしまっている。あるいはだからこそ意識的に似ないように心がけるみたいになっているのだろうと思いますね。

必ずしも日本の音楽シーンを否定するわけではないし、日本にしか存在しないガラパゴス感も病的で面白いんですけどね(笑)」

―国によってライブも違ったものになりますか?

Taigen「意識していなくても自然と変わっていると思います。それに日本でライブするほうが緊張します(笑)。イギリスではオジさんがパブに飲みに行く感覚で気軽に飲みに行くので、『今日はライブ見に行くぞ』って構えないんです。

でも日本のライブハウスはコンサートするための場所だからお酒もあまり飲まないし、お目当てがいてお客さんもすごく気を張ってる。それはそれで好きなんですが、演者にもその緊張感が伝わります。イギリスが特別不真面目というわけじゃないですけど(笑)」

イメージを想起させる曖昧な言い回しは日本語の強みだ

―英語圏のなかで日本語で歌詞を表現することに対して不安はなかったのでしょうか?

Taigen 「最初はもちろん不安でした。でも僕が英語をまだ話せない頃、海外の音楽をメロディやライブの良さで判断して聴いていたように、僕らもいずれそうなれればいいなって思ったんです。たとえ歌詞を違った意味で捉えられたとしても、100人いたら100人違うイメージを持たれるほうが僕は面白いと思うタイプですし。よくよく調べてみたら全然自分のイメージと違ったみたいに裏切られるのもアリかなと思うし。

英語の場合、良くも悪くも直接的でダイレクトなので耳にすごく入ってくるし、歌ってみてもリズムの取りかたが全然違う。まったく別の楽器を演奏しているような感覚になるんです。チャレンジはしてみているんですけど、まだピンとはきていないですね」

Kohhei 「ぼかした表現は日本語のほうが得意だしね」

Taigen 「政治的なメッセージとかがあれば英語でもいいのかもしれないけど(笑)。だから日本の人が聴くとなると、伝わりすぎちゃう気がして少し緊張します。外国だったら皮肉でなにか言っても『イェ~』ってなりますけど日本は違うじゃないですか(笑)」

Kohhei 「ダメだよ、怒られちゃうよ(笑)」

Taigen「昔は全然仕事しないPAにライブ中にキレたりしてました(笑)。でもお客さんはなに言ってるかわからないから、パフォーマンスの一部みたいになるっていう(笑)」

Kohhei 「この野郎みたいなね(笑)」

Taigen「さすがに最近はないですけどね。日本のライブではMCも少し抑えるようにしてます。故郷だし毎回凱旋でライブするので、なんかエモくなっちゃうんですよね(笑)。あまりにいろいろなことが歌詞から伝わりすぎてしまうのは、ちょっと違うなって思うんですよね」

―それぞれ自由に解釈してもらっていいという余白があるんですね。

Taigen 「分かりやすく伝えたいメッセージってそんなになくって。それでも音楽を通して伝えたいことをあえて言うなら、パンクバンドやロックバンドにありがちな『だからお前らはダメなんだ』という否定をするのではなく、僕自身を歌詞の対象にすることで自分も責めて、お客さんにも同じメッセージを感じとってもらいたいですね。それで一緒に良い人生になればいいんじゃないかって(笑)。

僕はよくピリフィケーションと呼んでいますが、パフォーマンスを通して毒をデトックスするみたいな感覚です。人生において葛藤はあるけれど、ライブ後には毒が抜けてポジティブな答えに辿りついてくれたら嬉しいですね」

Kohhei 「食療法みたい(笑)」


フジロックのライヴでは爪痕を残したい

―今回のアルバムは新しいチャレンジをしたとのことですが、今後さらに新たな表現について考えていることはありますか?

Taigen 「個人的にはやっぱり英語の歌詞に挑戦したいですね。言語や演奏スタイル、曲の形というところでお客さんが求めてるBO NINGENのイメージって少なからずあると思うんです。でも挑戦し続けないとバンドは止まっちゃうし、僕らは10年も20年も同じような曲を作り続けるバンドでもないので、新しい表現の形は常に模索しています」

Kohhei 「実際にしたことで言えば、この前すごく小さな音でリハーサルしたんです。意図的ではなかったんですが面白い発見がいろいろあって。楽器を取り換えてみたりもしたね(笑)」

Taigen 「去年は自分のアイデンティティを壊して再構築するというか、新しい表現について非常に考えた1年でした。ただ奇をてらうっていうところまでいくとダメじゃないですか。そのバランスは結構考えます。どうしても各自に毒性のようなものがありますし」

Kohhei 「毒性(笑)」

Taigen「新しい形に対して、各自の毒性を出すことや再構築についてどこまで意識することが正解かわかりませんが、今まで以上にいろいろと試してはいますね」

今年のFUJI ROCKでは、ホワイトステージでのライブが決定している。現在「BO NINGEN “VS” LIVE」と題し、日本を代表するバンドとの対バンが、代官山UNITをはじめとした都内4か所のライブハウスで開催されているなかで、ライブに対する想いを伺った。

Taigen 「フジロックに関しては楽しみでしかないですね。ホワイトステージという大きな場も与えてもらえたし、爪痕を残すというか特別なものにしてやるぞっていう思いはあります。もちろんほかのライブと比べてフジロックが特別よくなるっていうわけではないですよ(笑)。

どっちが悪いとか良いっていう話ではなくて、海外のフェスでやるのとは少し気持ちの入れ方は違いますね。さっき話したように日本だと緊張するっていうことも含めて、意識せずともパフォーマンスは普段と違ったものになるんじゃないかと(笑)」

Kohhei 「フジロックもそうだし都内でのライブも面白いものになると思うので、ぜひ見に来てほしいですね」

一般的にはサイケデリックやノイズ音楽とカテゴライズされる彼らの音楽。それだけを聞けば食わず嫌いをする人もいるだろう。しかし私自身初めてその音楽に触れたとき、驚くほどすんなりと聴けたうえに、気付けば何度もリピートして聴いていた。デトックス作用があり中毒性の高い音楽をぜひ体感してみてほしい。


またフォトグラファー・鳥居洋介による、キャリア初限定500部の写真集「BO」には、BO NINGENのUKでの日常やツアーの様子が収められている。代官山蔦屋書店nostos booksでも取り扱われているそうなので、そちらも合わせてチェックしてもらいたい。

photographer:Kazuma Yamano / 山野 一真

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