『ビョークのVRは実際やばい』〜Bjork Digital体験レポ〜

ビョーク知ってる?

いまのティーンは知らないかな? え、知ってる? まあ一般常識だからね。好き嫌いは置いといて、知らない君もこの強烈な姐さんの存在を知っといて損はない。いつまでたっても少女のような目をした50歳。彼女のこれまでに関しては、あまりにも多くのことを成し遂げてきてるから、詳しいプロフィールはこちらからどうぞ。

アイスランドの歌姫として世界的に高名な彼女。アートやファッション、エンターテインメント、それからテクノロジーに関するいろいろに興味がある人たちって、みんなビョークが好きだよね。来日の度にザワつく。かく言う俺も好きだし、事実それなりのワケがあるんだ。

一聴して、衝撃的。一見にして、またもや衝撃的。とにかくいろんな角度からのアプローチが面白いんだよね。楽曲もだけど、映像もよくない? オンリーワンの個性。このテイストが嫌いじゃなければ、もっとYouTubeディグってみることを勧めるっす。

すげーパンクヒロインなんだけど、アンチテクノロジーとは真逆。時代時代のキレてるテクノロジーアイディアを作中に取り入れていて、独創的な表現は、圧倒的すぎる彼女の個性だ。彼女をリスペクトするクリエイターはとても多い。前回のアルバム『Biophilia』をインタラクティブなスマートフォンアプリ形式でリリースしたのも記憶に新しい(と言ってももう4年前か……)。


そんな彼女が先日来日した。お台場の方にある日本科学未来館でVR(ヴァーチャルリアリティ)を使った展示をするという。チケットは瞬殺、即完売だそうだ。俺は、取材を行うために潜入させてもらった。

3年前に彼女が『Biophilia』を伝道するため来日した際もライブを観に行ったんだけど、その時の会場も日本科学未来館。彼女の未来を見つめる姿勢と、未来館のテーマがきっとマッチしたんだろうね。3年前はテスラコイルを使った演出をしたりだとか、ライブ後に子供向けワークショップしたりとか、面白かったんだよ。

だから今回のVR展示にも期待だぜ! 行くぜ未来館だぜ!


プレス発表1日目は、ストリーミング配信のためのパフォーマンス公開収録と、トークセッション。

Rhizomatiksの真鍋大度氏がストリーミング演出AR/VRとライティングを手がけ、P.I.C.S TAKCOM氏が映像演出し、Dentsu Lab Tokyoの菅野薫氏が指揮を執った、世界初のリアルタイム360度VRパフォーマンス!! これはやばいぜ! ドキドキするぜ!

現場ではモーションキャプチャカメラっぽい機材がたくさん生えてて、その前でビョークが「Quicksand」を歌い、360度VRストリーミング配信がされた。パフォーマンスは5分。これはあくまで「実験」だ。リアルタイム配信はたった一瞬だったし、アーカイヴも1時間で消えちゃったから、見れた人は超ラッキー。日本科学未来館のシンボルともいえる展示、ジオ・コスモスに、プロジェクションマッピングが映し出された。現場はこんな感じ。

トークセッションで印象的だったのは、「テクノロジー×エモーションのつながり」の話。ちょっと長いけど、彼女のすべての活動に繋がる大事な話だから、記載しておこう。

ミュージシャンである以上、私に与えられた役割は、人間らしさやソウルをいかに伝えるかということ。それを表現するために使うツールが、生の楽器だろうと最新のテクノロジーだろうと、それはブレないわ。
私がやっていることも、「人間の感情を伝えるために、VRなどのテクノロジーをどう使えばいいか」というアーカイヴとして蓄積されていくと思っているの。そのための可能性を探っている今この状況が、すごくエキサイティング! まるで初めて火星に足を踏み入れた瞬間のような、あるいは初めて月面を歩いた人のような気持ち。
電話が初めて発明されたとき、人はパニックに陥った。「人と会わなくても話せるということは、直接の触れ合いがなくなって、人間らしさが失われていくんじゃないか」と。だけど100年たった今、人間は電話というツールを使って、いろいろと「人間らしい」ことができてるわ。skypeしたり、携帯メールを使ったり、いろいろなカタチで愛する人と話をしてる。
将来的には、VRというテクノロジーも、電話と同じように「この感情をこの人に伝えたい」というときにさまざまな使い方ができるものだと思うの。人間の歴史というのは、何十万年という長いもの。そしてこの先も人間が生き続けていくにあたっても、「人間らしさ」が一番大切なはず。この先もずっと、「どんなツールを使って」「どうやって感情を伝えるか」ということを模索し続け、見つけていくんだと思っているわ。

ビョーク本人も、この下りあたりから喋りに熱を帯びはじめちゃって、自分でも照れたのか、締めに「セン↓キュッ↑」って、ちょっとはにかんでた。「いつも話が長くなっちゃってごめんね」ってさ。通訳さん、こんなに長いトークを一気に訳すの大変だったろうな(苦笑)。

「ビョークって、最新のテクノロジーをガンガン使って攻めてるなぁ」って思ってたけど、逆にそれが「人間らしさ」ってとこに繋がってるなんて。そうだ、人の感情や思いを伝えるのに、どんなツールを使ったってイイじゃないか! それがたとえ「仮想(Virtual=VRの”V”)」だったとしても、そこにいる人間は、ホンモノだ。


さて、プレス発表2日目。この日は、件の『Bjork Digital』を体験することに。

会場ではビョークのVRのクリエイターの人が、VRのことについて話してた。「VRは大変だし儲からないけど、ヤバイきてる」ってさ!

YouTubeで以前から公開されてた”stonemilker”と”Mouth Mantra”って曲のパノラマビデオを、ヘッドマウントディスプレーで全天周として見るっていうのと、シドニーで公開されてから2度目の公開になるらしい”Notget”のVR版を体験。


……”Mouth Mantra”、やばい、きてたぜ!


小人になった自分が、ビョークの口の中?からビョークを鑑賞するっていう初体験(文章に起こすと意味不明だがそういうものだった……)。口の中って意外とグロテスクなんだな……。そんな映像をヘッドマウントディスプレーで見るなんて、失神しそーなくらいインパクトでかい。進撃の巨人で喰われる民間人になった気分。ビョークの口の中は四次元らしい。


"Notget”は、”stonemilker”や”Mouth Mantra”と違って、3Dゲームっぽい感じ。“蛾”のようなモチーフに変態したビョークが、光の巨人になって斜め後ろを歩いてついてくるって内容。意味不明なんだけど、俺はコレけっこう感動した。自分の背後から正面にかけて光の粒がワーって飛んでくる感じとか、ヘッドマウントディスプレーならではの表現だよね。あと「蛾になったビョーク」が巨大化する迫力ってのも、VRならではの世界観、表現。

例えばプレステVRだとか、「ヘッドマウントディスプレイを使ったエンタメってこうなるのかしら」的な雰囲気を感じたいVRファンも行くといいよ。VRコンテンツのチュートリアルとしては、いいところを凝縮してる展示だと思う。


ちなみに、1日目のトークセッションでビョークが環境問題についても話してたんだけど、地球大切にしよーぜマジで。SILLY読者も、路上にガム吐くなよ。

私が未来に対して感じていることは、なんとかしないと地球がどうにかなってしまうという危機感。
地球を綺麗にするのにも、ホウキや雑巾だけではできない。最新テクノロジーを使い、頭の良い人々を集めて、みんなで力を合わせて問題に向き合えば、地球も元に姿に戻せると信じているの。私が音楽にテクノロジーを取り入れてるのもそれと同じで、テクノロジーで多くのことが可能になると考えているから。テクノロジーによって、自然(地球)と人間、そして音楽が共存していくことが可能になると思っているわ。


photographer:Santiago Felipe

※イベントは終了しています

【リリース情報】

『ヴァルニキュラ:ライヴ』

ビョーク

Now On Sale

0コメント

  • 1000 / 1000