Soulection(ソウレクション)とは。
普通の書き方をすれば、「LAを中心に、その活動・人気を世界的に拡大しているネットラジオ・アーティスト集団・パーティ」という感じだろうか。
個人的な印象で言うなら、ポップミュージックの生命力、その力強さを目の前で、現在進行形で見せつけてくれる人たちだ。音楽サイトだの雑誌だのに関わってきて、「ネットのせいで、音楽産業は不景気な話だらけ」という話ばかりで、すでに飽き飽きしてきたここ数年。そんな「業界人」の空気と関係なく自分たちで熱を生み出してきたSoulection。しかもそのメンバーには在米日本人、starRoもいるのだ。
starRoに言わせれば、ネットはまったくネガティブな要素ではない。
「もう、すべてですね。それがなかったら、俺はここにいなかった」と、開口一番はっきり言いきる。
「昔だったら、その人の正規リリースの曲しか世の中に出なかったじゃないですか。でもSoundCloud(音楽SNS)では『今日作った曲をもう1時間後にはdropする』みたいなことができるようになった。そこから、本当に好きな音楽の話をおしゃべりしているみたいな感じで世界中に友達ができていく。そこに自然とコミュニティができていったんですよね。SoundCloudで、同じようなものを作っている人が簡単に見つけられて、『ちょっとコラボしようぜ』って繋がれる。その友達の輪が広がってくると、そのなかから2〜3人注目されるヤツが出てきて、そういう人たちが拡散してくれて、さらにみんなに届くようになる。だからやっぱり、まずは仲間を作ること。そこが大きかったと思いますよ」
“ネットで繋がった仲間たち”が、いまやApple Musicのラジオサービス<Beats 1 Radio>で番組を持っているのだからすごい勢いだ。彼ら以前にもLA発の、いわゆるビートシーンの中心のひとつ、Low End Theoryなどがあるが、パーティ文化や土地の気質として、変化に前向きなところがあるのか、と尋ねると、必ずしもそうではないという。
「アメリカって逆に、ずっと同じテレビを見て同じハンバーガーを食べてて、実は保守的なんですよ。ただ、やりたいと思ったときにすぐに行動に移す。それをやる人とやらない人と何が違うかっていうと、結局自信だと思うんですよね。『俺はできる』っていう自信がハンパないんですよ、アメリカ人は(笑)」
“what”が強ければいつか実現される
日本での会社勤めに疲れてLAで仕事を見つけ、そこで得た自分のための時間で音楽作りを再開できたというstarRo自身、「行動に移す」ことを実践したからこそ今の人気を得たことになる。
「音楽に限らず、まずやってみる。簡単なようで意外と難しいんですけどね。日本ではプロセスを重要視する人が多いけど、アメリカは“how”じゃなくて“what”なんですよね、結局『何を』成し遂げたいのか。じゃあそれをどうやって実現するかって、みんなすごく考えるんですけど、絶対に思ったようにはならない。自分の当初考えていた“how”とは違ったものになるんです。でもまず“how”を考えちゃうから、結局は行動に移せない。“what”の意識が強ければ、時間がかかったとしてもいつかは実現されるんです。そこに向けて考え続けていればいつかたどり着くから、とにかく歩き出す。なんか自己啓発みたいになっちゃいましたね(笑)」
変化し続ける音楽、更新し続けるスタイル
このインタビューはSoulectionの来日ツアーのおかげで実現したわけだが、そのツアー、渋谷ではSOUND MUSEUM VISIONで開催。自分も当然踊りに行ってきたのだが、starRoはDJと演奏を組み合わせ、さらに曲をかけたらブース前まで出てきて踊ってしまうという、単なるDJとは違うライヴパフォーマンスで楽しませてくれた。そこでもやはり「ずっと同じことはできない」という。
「パフォーマンスも常に変わってますね。最初はライヴセットみたいな感じで、それこそループをMPCとかで作っていくというのをやってたときもあるんです。単純に曲と曲をつなぐときもあるし、俺自身バンド出身なんで、それだけじゃなくて演奏もしたいんですよね。演奏も入ってないと手持ち無沙汰な感じになっちゃうから、踊ってみたり楽器も弾いてみたり。
『結局お客さんが楽しめないと意味ない』って思ってるので、クラブとか会場での体験の全体を、自分で作っているイメージ。LAではバンドでもやったりしていて、そっちはもっとchillな曲とかもやったりします。やりながらお客さんの反応が良かった部分とかを見て、『俺はもっとこういうことをしたいんだな』っていうヴィジョンが変わっていって、自然とスタイルも変わってきてますね」
「変化し続ける」ことが彼の鍵になっていることがよく分かるし、だからこそ大きな影響を受けた'90sの音楽をなぞるのではなく、今のムーヴメントを作り出す側に回っているのだ。続く後編では、その「変化」のより具体的な部分をお届けしたい。
photographer : Yosuke Torii/鳥居洋介
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