クレイジーなタイの水掛け祭り「ソンクラン」に潜入してみた

友達のライターからの依頼で、はじめてSILLYに記事を寄稿するということに緊張しつつ、バンコクでキーボードをカタカタ叩いています。

はじめまして、自分は東京で日本人・外国人を対象としたシティガイドを制作する会社(TIME OUT編集部)で編集アシスタント、広告営業などをしていた益田といいます。

きたる2020年東京オリンピックまでに英語を会得せねば、と会社を辞めて流行りのフィリピン英語留学でセブ島に4カ月滞在した後、タイ・ラオスを3週間程度旅をしている矢先に、『現地のイベントをルポしてほしい』という依頼を受けたのだった。

そこで前々から興味を持っていたタイの旧正月を祝う「ソンクラン」という水掛け祭りに潜入して、記事を書きたいと伝えた。

このお祭りはもともと仏像や仏塔、あるいは家族の年長者などの手に水を掛けてお清めをするという伝統的な風習だったものが、近年では街で通行人どうしが水を掛けあって楽しむ「水掛け祭り」に発展したのだそう。毎年4月13・14・15日の3日間に渡って行われるこの祭りに参加するべく、世界中から観光客が押し寄せる。

今でこそ世界中からお祭り騒ぎがしたい観光客がこぞって訪れるこのクレイジーな祭りは、敬虔な仏教徒の国として知られるタイの文化とあまりにギャップがある印象。一体どういう位置づけの祭りとして親しまれているのだろうかーー。

以前この祭りを知った際には、「ただ単純に水を掛け合って楽しむだけのものなのかな?」と疑問を抱いていたのだが、果たしてその実態はどうなのだろうか知りたかったのだ。

一応この水掛け祭りのルールを説明しておく。「各々が水鉄砲やホースなどを持って見ず知らずの他人に水を掛け合う。以上(笑)

水は露店などで5バーツから補給できるんだけど、その露店のおじさんやおばさん達も客にバケツに入った水をぶっかけてくる。トゥクトゥクやバス、バイクなどに乗っている人にも容赦なく水がかけられる。そしてかけ返す。

イベント中はトラックの荷台に乗って町中の人に水を掛けながら移動するグループやら、ディンソーポーンって呼ばれる白い粉を水で溶かしたものをすれ違う通行人の顔に塗りあう人やら、想像以上の賑わいだった。

もしかしたら写真を見ただけだと、ただのお祭り騒ぎにしか見えないかもしれない。

でも水を掛け合うタイの人々の仕草には、このお祭りに対する敬意や隣人に対する愛や感謝とも呼べるものが伴っていたようにも感じられた瞬間が多々あった。

僕が水をかけあった中の数人は、僕に対してコップンカー(タイ語でありがとうの意)と言ってくれたし、中には水をかけてきた外国人にアイラブユーと言っている人もいた。

他人の顔に粉を塗り合う彼らの仕草も、まるで頬を撫でるように親しみを持って行われていた。交通誘導や持ち物検査をする警備員や飲食店のスタッフでさえも、仕事中に水をかけられ、粉を塗られる。

彼らはそれを笑顔で受け入れ、ずぶ濡れになった制服と、真っ白に汚れた顔で仕事を続ける。

「ソンクラン」に参加するにつれ、国籍、年齢を問わず水を掛け合い粉を塗りたくる様子を見て、この祭りに世界中から人々が訪れ、熱狂する意味がわかった。

それは忘れていた童心をすべての人がさらけだし、まるで昔から友達であったかのように水をかけあうということがとても単純で無邪気な遊びだからこそ、すべての人が楽しむことができる。そこに国籍や年齢などは全く関係ないのだった。

そしてタイの人々は外国人が自国の文化に触れるきっかけとして、「ソンクラン」に参加することを心から許容し、一緒に楽しもうとする気持ちが伝播していくからこそ、参加者が絶えないのだろう。

「ソンクラン」の最終日である4月15日には Rod-Nam-Dum-Huaと呼ばれる謝罪や祈りのための日とされていて、タイの人々は家族とともに過ごし、また年長者に一年に起こったすべての事について許しを乞い、また寺院を訪れお布施をするそうだ。

賑やかなお祭りの部分にばかりフォーカスを当てて取り上げられることも多いが、もともとの経験な伝統もしっかりと残っているではないか。

その証拠に「ソンクラン」を一緒に過ごしたタイの友人と別れる際、感謝の意を伝えると「タイの王と仏陀にも感謝してくれたら嬉しい」という言葉をかけられた。

「ソンクラン」を3日間体験し、僕のなかにあった疑問が晴れたような気がした。「ソンクラン」はただのクレイジーで無礼講な水かけ祭りではないのだ。

今回の潜入を通じて“微笑みの国”と呼ばれるタイの人々の広く人受け入れる暖かさや、根強く残る敬虔な仏教文化の一端に触れることができた気がした。タイ、コップンカー。

こうして噂が噂を呼び、タイのお祭りを通じて参加した人に彼らの文化に対する理解が深まるのだろう。百聞は一見にしかず。もし興味を持ったら、来年の4月はタイの水掛け祭り「ソンクラン」に参加してみてほしい。きっとこの“微笑みの国”の歓迎に童心を取り戻せるはずだから。

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