「音楽に政治を持ち込むな」という主張をよく耳にしたこの数ヶ月。どの意見を支持するにしろ、音楽の役割がどういったものであるかを改めて考える、いいキッカケになったのではないだろうか。
はるか遠いアフリカ大陸の東に位置するウガンダではジャーナリズムで政府に挑むラッパーたちがいた。人気チャンネルNTVで2014年からスタートした「ニューズビート(Newzbeat)」という番組があり、日々のニュースをラップで伝えるという斬新なスタイルで、とても人気があるという。
ウガンダでは報道機関への検閲が厳しく、若者が時事問題へ興味を持たなくなってきているというが、ビートに乗せてわかりやすいライミングで伝えることによって彼らの心をガッチリと掴んだようだ。
番組リポーターことラポーター(rap-orter)は、”クィーン・オブ・ヒップホップ“と呼ばれているシャロン・ブウォギ a.k.a. レディ・スライク、ベテランラッパーのダニエル・キセカ、と10代のラッパー、ゾエ・カブイェ。
この番組の狙いは「社会的弱者のために多様性や認知を促し」、「報道規制による限界を押し広げる」ことだとレディ・スライクは語る。
当初は理解されなかったり苦情もあったりしたそうだが、今ではお茶の間に浸透。サラリーマンや政府関係者までこの番組を観ているらしい。
どんなトピックでも取り上げるニューズビート。世界中から非難された反同性愛法や国内の政治汚職(腐敗ランキング、167カ国中139位)、そして国際問題も取り上げる。
政府の汚職を批判したジャーナリストがトラブルに巻き込まれる事が多いウガンダ。暴行を受けたり、逮捕を命じられるような事態になりウガンダ人権ネットワークはジャーナリストの表現の自由がないことや報道に対する政府の脅迫を非難している。(報道の自由度、190カ国中102位)
こういった状況のなか、人気のあるチャンネルのNTVの力を借りて「自分たちの声をたくさんの人に聞いてもらいたいと」語るキセカ。
「ただのエンターテイメントにすぎない」と真剣に取り合われなかったが、今ではその”芸術の形”を評価され、更にその努力が功を奏して昨年と今年International Telly Awardで賞をとった。
今後の目標はアフリカ全土で放送されることだという。
初見では私も面白い!とだけ思ってしまったが、彼らの確固たる信念のもとに戦う姿を知り、これが音楽のあるべき姿のひとつなんだなと気がついた。
「フリースタイルダンジョン」の人気でラップの認知度も高くなったところで、日本にもラポーターさんの登場を期待したい。
Source: The Guardian
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